4年目の二刀流は過去最高の貢献度。得失点換算で大谷がもたらす45点のアドバンテージ
週の前半カードは野手として、後半カードは投手として。史上初の二刀流選手として注目を集め続ける日本ハム・大谷は今季、このような出場を続けている。プロ入り当初は打者・大谷を評価する声が多数を占めたが150km/h台は当たり前、時には160km/h超えのストレートを投げるようになってからは投手・大谷を推す声の方が多くなってきた。
過去3年間の投打のいいとこ取り
今季の投手成績は援護に恵まれず勝ち星こそついてないが、防御率2.27はリーグ4位。野手の守備力に影響されない与四球、奪三振、被本塁打の3つから投手の実力を示すFIPはリーグ3位の3.01。これは擬似防御率として見ることも出来る指標で例えば、防御率は2点台前半なのにFIPは4点台なのであれば、投球内容以上の結果が出ている、つまり、その成績を維持することは難しいと考えられる。大谷の場合は防御率のみならずFIPも優秀。しっかりと実力で抑え込んでいることがわかる。昨日の試合ではマメの影響もあってか大谷にしては四球も多く7回途中で降板したが、状態が万全なら間違いなく難攻不落のエースだ。
打者としてもクリーンアップを任され.294と3割近い打率を残しOPSは.872。規定打席には到達していないがリーグ7位に入る数字だ。長打率も2桁本塁打を放った2年目の.505を上回る.529の数字を残しておりこちらは西武・メヒアに次ぐリーグ2位。他の選手に比べてバットを振る時間やボールを見る機会が限られるためか三振は多めで四球は少なめという弱点を抱えてはいるが、三振するまでの打席数、四球を1つ選ぶのに要する打席数は昨季よりも改善されており2年目に近い数字を残している。
つまり今季の大谷は投手として15勝を挙げた昨季に近い活躍をしながら、打者としても好成績を残した2年目を超える可能性が十分にある。
得失点換算で貢献度は過去最高ペース
大谷が平均的な投手と比べて何点の失点を防いだか、平均的な打者と比べて何点の得点を生み出したか。過去3年間のチームにもたらした得失点のアドバンテージは
2013 投 -2.98 打 -2.75 計 -5.73
2014 投 18.50 打 9.37 計 27.87
2015 投 30.67 打 -2.57 計 28.10
となる。今季はここまで投手として7.02点、打者として1.77点のアドバンテージを生み出しておりシーズン換算で投 35.10 打 10.55 計 45.65点。過去最高ペースだ。昨季この数字を上回ったのはトリプルスリーを達成したヤクルト・山田とソフトバンク・柳田、そしてシーズン安打記録を更新した西武・秋山の3人だけ。常時試合に出場する野手の方が数字が伸びやすいという性質があり投手では誰もいない。
チームにもたらす得失点でのアドバンテージが投手に専念した場合、又は野手に専念した場合の数字を超えるかどうか。これを二刀流の成功基準にするならば、大谷の貢献度はそのどちらをも上回っておりこの歴史的な挑戦は正解だったと言えるだろう。
そもそも高卒4年目の選手が1軍の試合でクリーンアップを打つ、開幕投手を任されるということがどれほど難しいか。所属する日本ハムの不動の4番・中田がレギュラーの座をつかんだのもヤクルト・山田やソフトバンク・柳田が本格的にブレイクしたのも4年目だった。もう誰も大谷のことを”期待の若手”という基準で見ていない。「驚かれているなら、まだまだ。驚かれないようになりたい」とはイチローが残した名言の一つ。歴史に名を刻む本物の大スターが球界の常識を変える。