那須川天心がデビュー戦で魅せた才能と今後の課題
8日、キックボクシングの神童・那須川天心(24=帝拳)が、スーパーバンタム級6回戦で日本バンタム級2位の与那覇勇気(32=真正)と戦い、判定勝利を収めた。
試合の展開
ボクシングに転向後、初戦で初勝利という華々しいデビューを飾った天心。試合会場には多くのファンが押し寄せ、入場曲でお馴染みの矢沢永吉「止まらないHa〜Ha」が流れると歓声が起こった。
試合の立ち上がりは、プレッシャーをかける与那覇に対し、天心は様子見といったところで、サイドに動きカウンターを合わせていく。
2ラウンドには与那覇の打ち終わりに、天心がカウンターを浴びせダウンを奪う。そのままペースを握り、4ラウンドに猛ラッシュを繰り出し、与那覇をKO寸前まで追い詰めた。
与那覇も意地を見せ最後まで立ち続けたが、採点は3-0(2者が60-53、1者が59-55)。フルマークで天心の完勝となった。
試合後に天心は「ボクシングをはじめて半年、ここからさらに進化して、最高のチームとともに、ボクシングでも必ず世界を取ります」と語った。
敗れた与那覇は試合後の会見で「クリンチがうまく中に入れませんでした。パンチ力もキレで倒す感じで、今後KOしていくのではないでしょうか」と天心の実力を高く評価した。
天心の才能
天心は「倒しきれなかった」と悔しさを滲ませていたが、実力を見せつけるには十分な試合内容だった。
特に目を引いたのは反射神経とスピードだ。2ラウンドでダウンを奪ったパンチはカウンターの右フック。与那覇の左フックを完全に見切り、即座に打ち返していた。
相手のパンチを予測する能力にも長けているのだろう。トップクラスの選手であってもカウンターを狙うのは難しいと言われているが、それをデビュー戦で難なくこなしているのだから驚きだ。
試合中に見せた左ストレートも、今後さらに磨いて欲しい武器だ。ジャブのような速さで、モーションが少なく出所が分かりにくい。まさにKOにつながるパンチになるだろう。
帝拳ジムには、ゴッドレフトの山中慎介氏をはじめ、モンスターレフト西岡利晃氏、ボンバーレフト三浦隆司氏など、左の名手が数多く在籍していた。その王者達に匹敵するような「左」を手に入れて欲しい。
今後の課題
今後は、長いラウンドでの戦いが課題になるだろう。世界戦ともなれば、キックボクシング時代にはあまり経験のなかった接近戦での駆け引きも重要になる。
ラフに攻めてくる相手やインファイトを得意とする相手に対して、どう捌くか、その辺り対策を講じておく必要がある。
長いラウンドを戦い抜くには、体力はもちろん、勝負時の見極め、相手との距離感など臨機応変に対応していかなければならない。ラウンドが長くなるほど、多くの戦術が必要になる。
しかし、この辺りは経験を積めばクリアできるだろう。
天心も一夜明けの会見で「もっとここで攻められた、こういうパンチが打てたと課題が見つかった。拳にしっかりパワーを乗せる打ち方を練習していましたが、半歩踏み込めなかった。もっと経験を積めば安心して試合ができると思います」と反省していた。
試合会場の有明アリーナには、若いファンの姿も多く、グッズ売り場には長蛇の列ができるほどの人気ぶりだった。
これほど今後が楽しみな選手はいない。キックの神童はボクシングでどこまで駆け上がっていくのだろうか。