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ルーツはイタリア 生まれはドイツのスパゲッティアイス!

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト

アイスクリームといえば、女子や子ども達の大好物というイメージがあるのでは?しかし、ドイツでは一年を通して、アイスクリームは欠かせないスイーツとして愛され続けています。なかでもドイツ生まれのスパゲッティアイスは注目の一品です。

本家本元のスパゲッティアイス  (c)norikospitznagel
本家本元のスパゲッティアイス (c)norikospitznagel

ドイツ南西部に位置する街マンハイムにある[Fontanellahttp://eisfontanella.de/ アイスカフェ・フォンタネラ]は、3代にわたってオリジナルアイスを販売中。

ショッピングの途中にちょっとアイスクリームやコーヒーで一服というゲストでいつもあふれかえっているこのお店、目立つのは老若男女関わらず客層が広いことだろう。アイスの種類はなんと200以上。バニラ、チョコなどベーシックなアイスをはじめ、ユニークな味を提供している。なかでも注目されるのがこの店で生まれたスパゲッティアイスだ。

ルーツはイタリア、生まれはドイツのスパゲッティアイス

アイスカフェ・フォンタネラのルーツはイタリア・ベネチア。1906年にベネチアでアイスカフェを開業したのは初代ダリオ・フォンタネラさん。その後、ダリオさんの息子マリオさん(2代目)が職を求めてドイツにやって来たのは1931年のこと。

当初ハノーバーでアイスカフェを開業したものの、その2年後に国内でも比較的温暖で、近郊には美味しいワイン名産地も数多くある南西部バーデン・ヴュルテンベルク州へ移転し、マンハイムでアイスカフェをオープンした。

マリオさんはドイツ人女性レナテさんと結婚し4人の子供に恵まれた。その中の一人、ダリオジュニア(以下ダリオさん)は、両親からドイツ人の完璧さとイタリア人のパッションと陽気さを受け継ぎ、現在3代目経営者として手作りアイスに勤しんでいる。

ある日、ダリオさんは栗のピュレーをプレッサーで搾り出していた時にアイスにも使えるのではとひらめいたそうだ。試行錯誤を重ねて、商品として提供できる自慢の味スパゲッティアイスが誕生したのは1969年のことだった。

パスタとスパゲッティアイスの美味しい関係

話は逸れますが、スパゲッティアイス開発にはこれまたドイツ生まれのパスタを紹介せねばなりません。

ドイツ南西部にはシュペッツレという名物パスタがあります。このパスタは、小麦粉や卵などを混ぜ、生地を少しずつシュペッツレ専用の木のまな板にのせてナイフで削って熱湯でゆでたものです。手作りが苦手な人、あるいは時間のない人にはこのシュペッツレを作る専用プレッサーが人気です。このプレッサーを使うとスパゲッティのように長いシュペッツレが簡単に作れるのです。

アイスのスパゲッティ部分は、生クリームたっぷりのバニラアイスをよく冷やしたシュペッツレプレッサーで搾り出すそうです。その上にトマトソースならぬイチゴのピュレーをかけ、パルメザンチーズのかわりに削った白チョコ(またはココナツ)を飾るとスパゲッティアイスの出来上がりです。

彼のこだわりは、妥協のない良質食材と時代の流れを早くキャッチして客が何を求めているのかを知ることだという。例えば、ナッツ類はピエモンテから、オレンジ、レモン、ライムやピスタチアはシシリアから取り寄せ、ゲストに美味しいアイスを味わってもらいたいと常に配慮を心がけているそうだ。日々、新しいアイスクリーム作りにも専念している。

フォンテネラアイスカフェでは、アイスクリームのほか、結婚式用ケーキやイタリアならではのクッキーなども販売されている。同店は、マンハイム市内に3軒、アイスクリームを製造販売するための特別コースを提供するアイス工房(Eismanufaktur Aperto )を経営中。

商標登録はしませんでした

ダリオさんは、スパゲッティアイス誕生当時を今も時々思い出すという。

家族連れがフォンタネラアイスカフェにやってくると、パパがエスプレッソ、ママがフルーツ、子供がアイスクリームを注文するのが定番という。子ども達を喜ばせたいと注文したスパゲッティアイスが子どもの前に運ばれてくると、「パスタなんか欲しくない!アイスが食べたい」と、泣き出す子どももいたというほほえましい場面によく出くわしたそうだ。

「実はこのアイスを発明した時、商標登録をしようかどうか迷いました。登録費用は当時900マルクでしたが、結局登録はしませんでした。まさか爆発的な人気になるとは思ってもいなかった」とダリオさん。

その後、口コミやメディアの報道により、スパゲッティアイスは国内外に知れ渡るようになり、大手アイスクリーム社も商売になると目をつけて、各地でスパゲッティアイスが販売され始めた。

登録しておけばよかったのに、と浅はかな考えをもつのは筆者だけだろうか?

しかし、「本家本元のスパゲッティアイスを味わうことが出来るのは、ここマンハイムのフォンテネラだけですから・・・・」と、いたって楽天的なダリオさんは屈託ない。

つい最近、米・マンハッタンのアイスサロンDolce Gelateria にもスパゲッティアイスが登場し、このアイスの発明者ダリオさんが再び脚光を浴びている。米アイスサロンの経営者は、ドイツ在住経験のあるアメリカ人でマンハイムで食べたスパゲッティアイスが忘れられなかったようだ。

ここでフォンタネラのあるマンハイムを少しご紹介。

経営学に関心のある方なら、マンハイム大学は国内最難関の経営学部を有する大学としてご存知でしょう。1907年に商科大学として設立され、67年に総合大学となりました。経済、経営、社会科学部は、国内第一位にランクされ、将来ドイツの経済界を担うであろう学生の憧れの学部。日本学部と経営学部を並行して学ぶことが出来る大学としてもその名が知れ渡っています。

マンハイムの中心部は、ドイツの都市としては珍しい碁盤の目状になっています。市内の住所表記はブロックごとにアルファベットと戸番号が付けられており、碁盤の目を貫く大通りがマンハイム城内の大学に通じています。

マンハイムのバロック式選定候宮殿は、パリのベルサイユ宮殿に次いで欧州第2規模(マンハイムはパリに比べ、窓が1つだけ少ない)の宮殿です。18世紀にプファルツ伯の居城がハイデルベルクからマンハイムへ移された際に建てられ、現在は大学校舎として使用されています。

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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