オートバイのあれこれ『スズキの独創技術2選』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『スズキの独創技術2選』をテーマにお送りします。
日本にはホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキという4大オートバイメーカーがあります。
各社はそれぞれ切磋琢磨しながらも、ライバルとの差別化を図るため独自技術の開発に長年勤しんできました。
今回は、この各メーカーの独自技術に着目。
ここではスズキが編み出した独創的なシステムを2つご紹介しましょう。
◆油冷エンジン
スズキのオリジナル技術として、油冷エンジンは外せないでしょう。
スズキは1980年代、コンパクト&ハイパワーを実現できるパワーユニットを模索していました。
というのも、既存の空冷/水冷エンジンでは、コンパクト&ハイパワーを求める次元で達成するのが難しかったのです。
空冷では熱処理の限界が低いので高出力化しづらく、かといって水冷では冷却機構が加わってエンジンが巨大化してしまう。
そこで考案されたのが、油冷システムでした。
油冷の「油」とは、エンジンオイルのこと。
もともとエンジンの中に入っているオイルを、積極的に冷却へ活用しようという発想です。
もっとも、エンジンオイルに冷却の役割を持たせているのはどのエンジンでも同じなのですが、スズキはエンジン内にオイルを噴射するノズルを設け、オイルを能動的に熱源へ噴きかけて熱溜まりを散らそうと考えたのです。
試行錯誤の後、この仕組みが内蔵されて完成した油冷エンジンは、単体重量で約70kgと当時の400ccエンジン並の重さに抑えられつつ、100psのパワーを実現。
見事、スズキが思い描いた“次世代のパワーユニット”が現実のものとなったのでした。
◆ロータリーダンパー
スズキというメーカーは、バイクファンの間で親しみを込めて「変態スズキ」などと言われることもたまにありますが、私個人としてその「変態さ」が炸裂していると思うのが、ロータリーダンパーというシステムです。
簡単に言うとサスペンション(ショックアブソーバー)ユニットの一部分で、バイクやクルマのサスペンションダンパーというのは筒状になっていることがほとんどなのですが、スズキはこのダンパーを丸い箱形で製作。
丸い箱の中に(筒状ダンパーでいうところのピストンにあたる)羽状の回転パーツが入っていて、これがグルグル回ることで減衰力(バネの動きを制御する力)を発生させていたのです。
設計としてはひじょうに画期的だったロータリーダンパーでしたが、開発当時(1990年代)の技術力ではさすがに質を究めきれなかったのか、ロータリーダンパーは世間からあまり良い評価を得られず、結局メジャー化することなく消えていくこととなりました。
画像引用元:スズキ