【平昌オリンピック】男子アイスホッケー明日開幕! 日本は長野で勝ったけれど、韓国は平昌で勝てるのか?
「ピョンチャン(平昌)オリンピック」のアイスホッケーは、10日にスマイルジャパン(女子日本代表)vsスウェーデンの試合で幕を明けましたが、明日から男子の試合も始まります。
▼ピョンチャンはスーパースター不在の戦い
これまでに筆者の当サイトでも紹介してきたとおり、冬季オリンピックの全競技の中で、最後の金メダルを懸けて決勝戦が行われ、欧米では最も注目されてきたのが「男子アイスホッケー」
ところが「ワールドカップ」の再開を機に、NHLが独自路線へ大きく舵を切ったことにより、現役NHL選手の出場が認められず、ピョンチャンオリンピックは、”スーパースター不在の戦い”となってしまいました。
▼韓国代表には大きな追い風に
しかし”スーパースター不在の戦い”は、韓国男子代表にとっては大きな追い風に!
というのも、アイスホッケーでは北米とヨーロッパの各国にNHLで活躍するスーパースターが居並びます。
そのため、アメリカの戦力が図抜けているバスケットボールとは異なり、「ドリームチーム vs ドリームチーム」と呼べるレベルの高い試合が数多く見られ、世界中のホッケーファンの注目が集まりました。
ところが、ピョンチャンオリンピックには現役NHL選手が参加できないため、これまでのように、「ドリームチーム」と称される絶対的な国は見当たらず、世界ランキング「21位」(ピョンチャンオリンピック男子の出場国は12)の韓国が、白星を手にするチャンスも少なくありません。
▼開催国なのに出場できない!?
このように期待が集まる韓国ですが、ピョンチャンオリンピックまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。
2010年はバンクーバーに、さらに2014年はソチに敗れ、ようやく3度目の立候補の末に開催権を手にした2011年7月時点での世界ランキングは「31位」
「試合になるのか?」との声もささやかれ、国際アイスホッケー連盟(IIHF)は「開催国出場権を与えるか否かは追って決定する」と韓国へ通達したのです。
▼二重国籍法と兵役期間中のチームが誕生
そのため韓国アイスホッケー協会は、2012年に制定された「優秀な人材に対する特別帰化制度(いわゆる二重国籍法)」を用いて、アジアリーグのMVPを受賞したマイク・テストウィード(FW・31歳)や、ブロック・ラドゥンスキ(FW・現在34歳)に、NHLでのプレー経験もある ブライアン・ヤング(DF・31歳)と、アレックス・プランテ(DF・28歳)らをはじめ、北米出身の7選手が韓国籍を取得。
さらに、20世紀末のアジア通貨危機の影響で廃止されたサンム(尚武=国軍体育部隊)アイスホッケーチームが、期間限定(現時点での方針)ながら復活。
これによって成人男子に課せられる兵役期間中も、アジアリーグなどでプレーを続けられるようになりました。韓国の代表メンバーとしてプレーしています。
▼NHLで2連覇した男を指揮官に招へい
そして極めつきは、ピッツバーグペンギンズのDFとして、NHL2連覇の実績を誇るソウル生まれのカナダ人で、NHLの下部リーグ(AHL)でアシスタントコーチを務めてきたジム・ぺク(50歳)を、男子代表監督に招へい。
このような一連の積極的な強化策を評価した国際アイスホッケー連盟は、2015年9月に「韓国に対し開催国出場権を与える」との決定を下し、ピョンチャンオリンピック出場が決まったのです。
▼鎖国が解けて日系外国人がオリンピックに
韓国男子代表の歩みを振り返ると、20年前の日本代表の強化と重なる点が少なくありません。
1998年の「長野オリンピック」開催が決定し、最も大きな変化をもたらしたのが、日本リーグの”鎖国”が解けたことでした。
国内のトップチームが加盟していた日本リーグでは、「日本人選手の活躍の場が減る」などの理由により1984年から外国籍選手の登録を禁止。10季にわたって”鎖国”の状態が続きました。
しかし、自国での冬季オリンピック開催が決まり、強化の観点から鎖国にピリオドが打たれ、1994年秋から日本国籍の取得を前提に日系外国人選手が来日。
その中には、NHLドラフトで2巡目指名を受けた桑原ライアン春男(日本名/長野五輪開幕日当時25歳=・現OHL・サギノースピリットコーチ)や、ロサンゼルスキングスのGKデベロップメントコーチを務めている芋生(イモオ)・ダスティ(27歳)に、晩年はオーストラリアにわたってプレーを続けたユール・クリス(22歳)ら、長野オリンピックや世界選手権(当時は上位16か国が参加するトップディビジョンに参戦)で日本代表の中核を担った選手たちの姿がありました。
▼「日系人=特別待遇」ではなかった
しかし、日本国籍を取得した日系人選手が、全て特別待遇を受けたわけではありません。
なかには長野オリンピックまでに日本国籍取得が完了しながら、デイブ・キングGM(40歳・現オリンピックカナダ代表コーチ)らのお眼鏡にかなわず、補欠(負傷者などの代替)メンバーとなり、檜舞台に立つことができなかった大川(ダイカワ)ダニエル(26歳・前NAHL・ブルッキングス ブリザードGM兼ヘッドコーチ)のような選手も・・・。
このようなチーム内の厳しい競争を勝ち抜いた23人が、オリンピック代表に選出されましたが、キャプテンを担った坂井寿如(としゆき=33歳・元日本代表GM)や、ジュニア代表時代からリーダーを担ってきた桜井邦彦(25歳・現王子イーグルス監督)の日本人に加え、日系人選手のまとめ役となった辻占(ツジウラ)スティーブン健(35歳・元日本代表監督)や、樺山義一(32歳・元WHLレスブリッジ ハリケーンズ アソシエイトコーチ/写真中央)らが、強いリーダーシップを発揮。
全ての力を結集した日本は、最後の試合となったオーストリアとの13位決定戦を、ゲームウイニングショット(シュートアウト=サッカーのPK戦に相当)の末に制し、インスブルック大会以来となる「22年ぶりの白星」を勝ち取りったのです。
▼当時の日本よりも韓国は強い!?
当時の日本は(現在の算定方法とは異なりますが)世界ランキング「24位」
一方、現在の韓国の世界ランキングは、「21位」
日本代表には、NHLでのプレーキャリアを持つ選手はいませんでしたが、韓国代表には「2人」
この数字だけを見ると韓国は、長野オリンピックで1勝した日本よりも好成績を残せそうに見えますが・・・。
▼テストマッチでは格の違いを見せつけられる・・・
10日に行われたOAR(オリンピックアスリート フロムロシア=赤)とのテストマッチでは、格の違いを見せつけられ 1-8 のスコアで大敗。
KHLなどで活躍するロシア人選手の前に、韓国代表はやられっぱなしだったとあって、不安な想いに駆られる地元ファンも少なくなさそうですが、果たして「韓国男子代表はピョンチャンで勝てるのか?」
15日のチェコ(世界ランキング6位)戦を皮切りに、17日はスイス(同7位)、18日にはカナダ(同1位)と顔を合わせます。