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気候危機の不安を、市民や企業は「叫んで」爆発させた。ノルウェー国会前で

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
「多くの人が政治家に行動を求めている」ことを伝える方法とは

気候危機に対する対応が十分ではないと、市民が政治家に抗議する手法はさまざまだ。ノルウェーでは「気候のために叫ぶ」という行為が定着しそうだ。

2019年に始まり、まだ1度しか開催されていない「叫ぶ」という行為。開催当初から、意義のある抗議活動として現地で注目を集めた。

当時は首都オスロだけでも3万人、全国各地での運動を合わせると合計で6万人が参加。

ムンクの叫びの国の人々が、国会前で叫ぶ理由

オスロ国会側から撮影。この広場は抗議活動の場としてよく使われている。大きな音をだせば、国会の中に響く距離だ
オスロ国会側から撮影。この広場は抗議活動の場としてよく使われている。大きな音をだせば、国会の中に響く距離だ

2021年の叫ぶ運動はノルウェーで大きな意味を持つ。9月13日には国政選挙を控え、争点は社会格差、気候、税金などになる見通しだ。

叫ぶ抗議の目的は、気温の上昇幅を2度未満に抑え、自然保護のために適正な政策をするように政治家に求めることだ。行動を起こす政治家への賛同のエールにもなる。

国会(後ろ)の窓ガラスからは議員が外の様子を見ることができる
国会(後ろ)の窓ガラスからは議員が外の様子を見ることができる

選挙で選ばれた政治家は、市民との団結や市民からの応援を必要としている。叫ぶことは「簡単で、おもしろくもあり、気候のために何かをする行為につながる効果的なやり方」だと主催者側は説明している。

高齢者の姿も多かった
高齢者の姿も多かった

ノルウェーでは国政選挙は4年毎に開催される。だから今回は「4年分をみんなで叫ぼう」という思いもこもっている。

賛同する企業も続々と名乗りをあげた。自治体、企業、団体など、スポーツ連盟、教会、SNSのスナップチャット社など、企業ロゴは気候叫び公式HPに記載されている。芸能人も呼びかけを行い、国会前には右派・左派の政党も集まった。

気候対策が足りないと批判されやすいのは右派と左派の大政党だ。右側の青い旗はソールバルグ首相の保守党。
気候対策が足りないと批判されやすいのは右派と左派の大政党だ。右側の青い旗はソールバルグ首相の保守党。

コロナ禍なので国会前に足を運ぶ人は限られる。だから、SNSなどで自分が叫んだ動画を投稿すると、「叫びの図書館」としてネットで見ることもできる。

「惑星は政界でのスーパーヒーローを必要としている」というメッセージ
「惑星は政界でのスーパーヒーローを必要としている」というメッセージ

「なにかしたかった。私たちは石油とお金に依存しすぎ」

「気候危機を心配していて、この活動に賛同するし、自分でも何かしたいと思ったから来ました」と高校生のアグネスさん(16)は取材で話す。

「未成年だからまだ今年は投票がでもできない。でも、投票したかった」と話すアグネスさん
「未成年だからまだ今年は投票がでもできない。でも、投票したかった」と話すアグネスさん

「ノルウェーは気候危機のための十分な行動をしていないと思います。私たちは石油とお金に依存しすぎです」

「叫ぶという行為で何か変わるかと聞かれれば、何も変わらないかもしれない。それでも、私は何かしたかったんです」と話した。

「どうして石油?解決策は明らかなのに」
「どうして石油?解決策は明らかなのに」

巨大なメガホンがアートとして公開された。このメガホンはこれから全国各地を巡回する。黄色い服を着ているのは圧倒的な人気を誇る歌手アイセ・クリーヴランドさん
巨大なメガホンがアートとして公開された。このメガホンはこれから全国各地を巡回する。黄色い服を着ているのは圧倒的な人気を誇る歌手アイセ・クリーヴランドさん

叫んだ後は市民は踊ったり、地面に倒れたり。中央で踊る女性は石油産業からの撤退を強く求める「緑の環境党」の党首ウーネ・バストホルム国会議員
叫んだ後は市民は踊ったり、地面に倒れたり。中央で踊る女性は石油産業からの撤退を強く求める「緑の環境党」の党首ウーネ・バストホルム国会議員

「石油を掘るのを止めて!」(左)、右側はソールバルグ首相が「責任…?」と地球に火をつけている抗議の絵
「石油を掘るのを止めて!」(左)、右側はソールバルグ首相が「責任…?」と地球に火をつけている抗議の絵

抗議活動の際に保護者が子どもを連れてくるのはノルウェーでは普通の光景だ
抗議活動の際に保護者が子どもを連れてくるのはノルウェーでは普通の光景だ

気候・環境の抗議活動の場には子どもや若者の姿が目立つ。「まだ投票できない」とフラストレーションがたまっている人も多い
気候・環境の抗議活動の場には子どもや若者の姿が目立つ。「まだ投票できない」とフラストレーションがたまっている人も多い

後ろの青い旗は「保守党」、右の赤い旗は「左派社会党」。左手前は気候対策を求める高齢者の団体
後ろの青い旗は「保守党」、右の赤い旗は「左派社会党」。左手前は気候対策を求める高齢者の団体

国会広場前に置かせているオレンジの置物は2週間の旅行による排出量を表したもの
国会広場前に置かせているオレンジの置物は2週間の旅行による排出量を表したもの

「フィヨルド汚染=地球はどうでもいい」という抗議文で叫ぶ女性
「フィヨルド汚染=地球はどうでもいい」という抗議文で叫ぶ女性

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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