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【ギラ・ジルカ&SUPER SOUL JAZZ】DVD発売ライブ! 緊急インタヴュー

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
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まるで暗号のようにアルファベットが並べられたタイトルを引っさげて、ギラ・ジルカ念願のプロジェクトが動き出している。

GZ&SSJという暗号のようなアルファベットは、ギラ・ジルカ&スーパー・ソウル・ジャズの頭文字を取ったもの。

プロのシンガーとして、デビュー20周年を目前にした2010年。ようやく自身の名を冠したファースト・アルバム『all Me』をリリース。世に「なぜこれほどの逸材が埋もれていたのか?」と衝撃を与えたギラ・ジルカが、その名前を敢えて頭文字にして隠しながら進めているプロジェクトが、これだ。

隠している理由を彼女は、「ワタシの名前を出したバンドにしちゃうと、どうしても束縛したくなるから……」と、意味深な笑い声とともに、答えてくれた。

♪ “できない”と諦めかけていた夢との偶然の出逢い

きっかけは、あるイヴェントだった。

金沢の犀川を臨むライヴハウス“RIVERSIDE”が企画した、金沢市民芸術村での「JAZZ FLOW」というステージ、そのオファーのためにギラ・ジルカが選んだのは、“ギラ・ジルカとレギュラー・バンド”ではなく、敢えてギター・トリオという布陣だった。

ファースト・アルバムからサウンド・プロデューサーとしてギラ・ジルカのブランディングを担ってきたギタリストの竹中俊二、2013年7月にリリースしたサード・アルバム『Day Dreaming』で見事なフィット感を醸し出していたベースのSOKUSAIとドラムスの加納樹麻という顔ぶれ。

そこに地元のミュージシャンも交えて進められたステージは、ギラ・ジルカに“天啓”を与えることになる。

「ワタシ、こういうことがやりたかったんだ!」

チャカ・カーンに憧れ、アメリカのバークリー音楽大学事態の1期下だったレイラ・ハサウェイの活躍を憧れのまなざしで見つめながら「ワタシも……」と思うものの、自分が軸足を置いていた日本の音楽シーンではいずれもその片鱗を滲ませることすら難しいというジレンマに悩みながら歩んできた“シンガーとしての道”だった。

それが、セッションを前提とした“自分仕切りの束縛から離れたステージ”で再燃し、「できるかも……」という光が差し込んで来たのだ。

実はSSJという名前、Sunji(竹中俊二)、SOKUSAI、Juasa(加納樹麻)の頭文字をとってのネーミングが発端だったとのこと。そのままでは身も蓋もないので、Super Soul Jazzという、これまたこのバンドのサウンドと方向性にぴったりの単語にスライドさせることができてしまった。これもまた、セレンディピティと言うべきだろう。

この年の5月に開催された高槻ジャズストリートにそのメンツで出演、確かな手応えを得たギラ・ジルカは、なんと10月に“スタジオ・ライヴ・レコーディング”を敢行してしまう。

「このバンドがいちばん光るのはライヴだから(笑)」

いや、そういう問題じゃなくて……、と突っ込みたくなるところだけれど、彼女のアタマのなかにはすでにSSJとしてのサウンドができあがり、それをカタチにするためには「スナーキー・パピーみたいにやればいい」という図式ができあがってしまっていた。

そして、スタジオには8台のカメラまで持ち込まれ、実現した“スタジオ・ライヴ・レコーディング”は映像にも収められた。

こうして、ギラ・ジルカの心の底に燻り続けていた“野心”と、それに呼応して集まった日本のコンテンポラリー・ジャズ・シーンを代表するミュージシャンたちおよびトンがったスタッフたち、そしてなによりもそんな刺激的な“出逢いもの”が三度の飯より好きでなければ足を運ぶはずがないというギラ・ジルカのファンが“三位一体”となってしまう。

2016年4月にアルバム『Geila Zilkha & Super Soul Jazz Recording Live at NK SOUND TOKYO』。そして2017年2月にDVD版がリリースされた。

♪ レアであるからこそ見逃せない貴重なライヴ

念願が叶ったように見えるGZ&SSJだが、ギラ・ジルカはこれをゴールにも、軸にもする気配を見せていない。

GZ&SSJには「エキストラを入れない」と決めているという彼女は、人気アーティストであるメンバーたちの困難を極めるスケジュール調整を行ないながら、年間数本でもいいから「続けていきたい」と語る。

もちろん、スケジュール調整の難しさは、ソロ・シンガーとして人気を誇りながらほかにもいくつものプロジェクトに首を突っ込んでいる彼女自身も同じだ。

だからこそ、ファンとしては、彼女がこれで燃え尽きてしまわなかったこと、年に数本でもライヴをやろうとしていることに注目しなければならない。

これはつまり、GZ&SSJという“謎めいた文字”を目にしたら、その暗号が意味するところの「召集命令」を察知し、指定された場所に集合しなければならないのである。

【ギラ・ジルカ&SUPER SOUL JAZZ】DVD発売ライブ!

★7/18(火)二子玉川KIWA(http://oasis-kiwa.com/schedule-detail/914/170718/)

「ギラ・ジルカ&SUPER SOUL JAZZ」DVD発売ライブ!

ギラ・ジルカ(ヴォーカル)、竹中俊二(ギター)、松本圭司(ピアノ)、SOKUSAI(ベース)、加納樹麻(ドラムス)

★7/25(火)大阪ROYAL HORSE(http://www.royal-horse.jp/)

ギラ・ジルカ(ヴォーカル)、竹中俊二(ギター)、松本圭司(ピアノ)、SOKUSAI(ベース)、加納樹麻(ドラムス)

★7/26(水) 京都RAG(https://www.ragnet.co.jp/livespot/)

ギラ・ジルカ(ヴォーカル)、竹中俊二(ギター)、松本圭司(ピアノ)、SOKUSAI(ベース)、加納樹麻(ドラムス)

♪ Geila Zilkha & SUPER SOUL JAZZ (Trailer)

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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