デトネーションエンジンを打ち上げたJAXA観測ロケット「S-520」今年度はもう一基の打ち上げを予定
11月14日、JAXAの観測ロケット「S-520 34号機」はデトネーションエンジンを宇宙へ打ち上げることに成功しました。本記事では、H3やイプシロンと比べ、あまり知られていない観測ロケットについてご紹介していきます。
■低高度の軌道で宇宙実証実験ができる唯一のロケット
観測ロケットは普段皆さんがよく見るH3ロケットなどとは異なり、ロケットが宇宙まで上昇し、落下するまでの間に観測を行うことを目的としています。実験終了後はロケットは海上へ落下します。
ロケットの上段には観測機器が搭載されており、飛行中の空気抵抗や加熱から保護するため、ノーズコーンという蓋をかぶせて打ち上げます。あらかじめ決められた高度でこのノーズコーンを開くことで、宇宙に到達してから地上へ落下するまでの間に観測を実施できるようになります。
現在の技術では、多くの人工衛星が高度250km以上を周回、気球で到達できる高度は約50kmのため、その間の高度で実験や観測ができるのは観測ロケットのみということになるのです。
■現在運用中の観測ロケットは3種類
歴代の観測ロケットは合計7種類あり、現在運用中のモデルはS-310, S-520, SS-520となります。
11月14日にデトネーショネンジンを搭載したS-520ロケットは、K-9M、K-10型ロケットに替わる単段式ロケットとしてJAXA宇宙科学研究所が開発しました。直径520mm、打上げ時の重量約2,100kgで、高度約300kmに到達できます。
推薬はイプシロンロケットなどと同じタイプの固体燃料が使われています。アルミハニカムコアや、GFRP、CFRPのサンドイッチ構造により、軽量化と高い耐熱性を実現しました。1980年1月に初号機が打上げられて以来、今回の打ち上げを含めて34機が打上げられています。
ちなみに、2024年度には観測ロケットがもう一機打ち上げられる予定となっています。まだ日程やペイロードの詳細は明かされていません。これからの観測ロケットの活躍も楽しみですね。
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