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“一打”にかける男たちの執念が呼んだ終盤の逆転劇! 《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

11日の名古屋は朝からどんよりとした空模様でした。おかげで暑さはやわらいだものの、予報通り午後は雨が降ったりやんだり。ナゴヤ球場のスタンドでは試合開始直後から傘の花が開き、途中で本降りになった時間帯もありました。カッパを着て傘を差しての観戦、お疲れ様です。このあと名古屋のお天気は回復し、12日の試合も大丈夫みたいですよ。まさか3戦ともやれるとは思いませんでしたね。

この日のウエスタン・阪神‐中日戦は歳内投手と鈴木翔投手が先発。中日は吉見投手が投げる予定で、阪神も榎田投手が中継ぎ登板、福留選手の出場とあって取材陣の多かったこと!試合は逆転しながら追いつかれ、追い越されたものの8回に大逆転しての勝利です。これで3連勝で、また5割に復帰しました。ここからなかなか勝ち越せない阪神ですが、今回は打線に期待できそうなので貯金を持って帰ってきてもらいましょう!

《ウエスタン公式戦》6月11日

中日-阪神 13回戦 (ナゴヤ)

阪神 003 000 050 = 8

中日 100 002 100 = 4

◆バッテリー

【阪神】歳内-榎田-高宮-○渡辺(1勝)-玉置-小嶋 / 小豆畑-岡崎(8回~)

【中日】鈴木翔(5回)-吉見(2回)-●田島(2敗)(1/3回)-小林(0/3回)-小熊(2/3回)-川崎(1回) / 田中-小田(6回~)

◆三塁打 吉川

◆二塁打 歳内、吉川、藤井、赤坂、小田、伊藤隼、中田

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]二:荒木   (4-2-2 / 1-1 / 1 / 0) .333

2]遊:北條   (4-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .220

3]左中:伊藤隼 (5-2-2 / 0-0 / 0 / 0) .252

4]一:陽川   (5-2-0 / 2-0 / 0 / 0) .223

5]右:福留   (4-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .286

6]三:西田   (4-0-1 / 1-1 / 0 / 0) .243

7]捕:小豆畑  (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .158

〃打:森田   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .252

〃打捕:岡崎  (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .313

8]中:横田   (3-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .193

〃打:原口   (1-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .323

〃投:玉置   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:小嶋   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

9]投:歳内   (3-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .500

〃投:榎田   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:高宮   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:渡辺   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃打:狩野   (1-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .263

◆投手 (安-振-球/失-自/防1御率) 最速キロ

歳内 5.1回 85球 (5-7-1 / 3-3 / 3.40) 142

榎田 0.2回 9球 (1-2-0 / 0-0 / 1.53) 139

高宮 0.2回 13球 (2-0-0 / 1-1 / 1.00) 138

渡辺 0.1回 5球 (0-1-0 / 0-0 / 0.55) 139

玉置  1回 15球 (1-2-0 / 0-0 / 3.60) 142

小嶋  1回 14球 (1-0-0 / 0-0 / 4.22) 143

終盤につないでつないで大逆転!

1回、先頭の荒木が右前打して盗塁を決めるも後続を断たれた打線。するとその裏、歳内がやはり先頭の西川に左中間への三塁打を浴び、1死後に藤井の右前タイムリーで先取点を与えます。しかし3回には1死から歳内がレフトへ大きな大きな当たり!フェンスの最上部に当たった打球は跳ね返らず越えていきました。このエンタイトルツーベースのあと荒木と北條が連続四球で1死満塁となり、伊藤隼の中前2点タイムリーで逆転!2死後に福留が四球でまた満塁として西田は押し出し四球。この回、2安打4四球で3得点です。

2回以降の歳内は、4回に藤井の中前打を許しただけ。ここも併殺があったので、5回まではすべて3人で片づけました。ところが6回、小田の左前打と西川の左翼線二塁打が続き、無死二、三塁として暴投で1点。次の森越から空振り三振を奪って歳内は降板。1死三塁という場面で登板した榎田は、藤井のレフトフェンス直撃二塁打を浴びて追いつかれます。高橋周と古本は連続三振で同点止まりでしたが、7回は高宮が簡単に2死を取りながら、代打・赤坂と小田の連続二塁打で再び勝ち越しを許します。

4対3と中日リードで迎えた8回、田島から陽川と福留が連打して1死後に代打・森田が告げられるも、投手が小林に代わって次の代打は岡崎。鮮やかな右前打で1死満塁とします。ついで代打の原口が三遊間を抜いていく同点タイムリー!投手が小熊に代わって、さらに代打・狩野の左前タイムリーで勝ち越し!まだ続く1死満塁のチャンスで暴投があり1点追加し、とどめは荒木の右前タイムリー!これで2人が還って、この回4連打(3連続タイムリー)を含む6安打で5得点。試合をひっくり返しました。

その裏は玉置が、2死から高橋周に中前打されるも2三振などで無失点。9回は小嶋が先頭の中谷左中間へ二塁打(レフト狩野がダイビング!あ~捕れない…)を浴びますが、後続を断って0点に抑えて試合終了です。

「福留、こき使うよ(笑)」

試合後の平田監督。再調整のため、この日からファームに合流した福留選手について「彼は野球に関して真摯なところがあり、打てなかったら考えてしまう。けど悪くないよ、バッティング練習を見ても。こうやって若い子とゲームに出たらリフレッシュもできる。できるだけこき使うよ(笑)。貢献してもらわないと。打球を追いかけたり、打ったあと走ったり、出てる間はこき使うよ」と笑いながら話していました。

同じくファームで中継ぎ登板して調整する榎田投手には「厳しいところでわざと出したけど、ホームランにならなくてよかったという当たり(藤井選手のタイムリー二塁打)だった。球のキレは悪くなかったけど、久しぶりの中継ぎで1球の怖さが勉強になるだろう。中日の打線はいいからね。キャッチャーを榎田がかばうくらいしていかないと」とのこと。

それから8回の攻撃で結果を残した代打陣を、平田監督は「見事だね!」と絶賛。「岡崎、原口、なかなか出番がなくてねえ。狩野も代打になると1球見たりするけど、きょうは初球から振っていったしね。このピンチヒッター3人とも素晴らしい。それに引きかえ見逃し三振とかバント失敗とか」。いつも試合に出ている若手選手への苦言もチラリと出ます。

何とかしたいと必死だった代打陣

代打が3人続いて、みんな揃ってヒットやタイムリーを打つのは、なかなかありませんよね。8回の攻撃は監督が評価した通り、お見事でした。もちろん陽川選手と福留選手が連打でチャンスを作ったのですが、そのあと満塁にした岡崎選手はナイスバッティングと言われ「いやいや、必死なだけですよ!きょうは原口でしょ」と笑っていました。でもほんと、さすがです。

原口選手は「いい当たりではなかったけど、抜けてくれた。つないでいかないとって、1死だったので自分がアウトになったら次にプレッシャーがかかると、それだけを思っていました。何とかしたいという気持ちしかないです!」と貢献できたことを喜びつつ、限られたチャンスで出た結果にホッとした様子でした。最近はファーストだけでなく、サードでの守備練習もおこなう原口選手。とにかく出場機会を増やしていきたいですね。

そして狩野選手は「高めだったけど反応できた。外野フライでも、と思って低めは手を出さずに。久しぶりに打席に立って、反応できたのが大きいですね。これまで1球目から振りにいけなかったのが、いけたから(ファウル)2球目に対応できたかな。試合になると結果、結果と思ってしまっていて…きのう監督や古屋コーチと話をして“平常心”と言われました。ミーティングさまさまです!」と笑顔いっぱい。

そうそう、9回の守備で二塁打となった打球について「あのダイビング、捕りたかった~!そっちの方が大きい!」と、バッティングのことより先に言っていました。帰り際にもまた「捕りたかったなあ。小嶋にも『なんですか、あのダイビング(笑)』って言われたんですよ。あー悔しい!」と繰り返す狩野選手でした。

勝ちは逃したけど2安打の歳内

最後に歳内投手のコメントをご紹介しましょう。「きょうは真っすぐがよかったので、カウントを取る時や決まる時にも使えていた。それはよかったと思います」。立ち上がりの失点は「先頭に長打を打たれて、あそこの場面で探り探りだったので、入りからちょっと考えないと。初回を自分で見直して、登板前のブルペンとかでやっていかないといけないと思う」と今後の課題に挙げました。スライダーについては「きょうはブルペンから悪かったのでゲームでも使わずです。いつも全部が全部いいいいというわけじゃないので。きょうはスライダーが悪い分、真っすぐとフォークがよかったから」と言います。

打っては3回にもう少しでホームランというエンタイトル二塁打、4回にも右前打を放ち3打数2安打だった歳内投手。既に公式戦では2本ヒットがあり、これで打率5割です。二塁打は入ると思った?「思わなかったです。レフトフライやと思いました」。逆風だったから?という問いには笑いで答え、引き揚げました。

きょう12日は心配された雨も問題なさそうですね。もしかすると晴れて、かなり暑いかもしれません。先発は白仁田投手の予定でしたが、故障のため2日前くらいに回避。吉見投手が先発します。しばらく中継ぎ待機でブルペンにはいつもいたんですけど、試合登板は先月23日の中日戦(鳴尾浜)以来で20日ぶりです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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