『ロドリゲス流は夏からが本番』ACL浦和vsジョホール【浦和レッズ川柳な試合レビュー】
■ACL仕様に色々と戸惑う
まったく予想がつかないことだらけ。
まずなんといっても、いったい相手のジョホールっていうチームがどれだけ強いのかよくわからない。予選リーグはフロンターレと同組なのに首位突破したくらいなんだから、弱いはずはないだろうが、ホームでやった有利さは当然ある。Jリーグのチームみたいに見慣れていないし、守りを固めてくるのか、ガンガン攻めるのか、パスで来るのか、ドリブルが多いのか、そういうもの自体、よくわからない。
観客がどれだけ集まるのかも予測できない。ちょっと前なら、ACLの予選リーグでもホームなら軽く2万は来たのだが、コロナ以来、すっかり状況は変わってる。前は4万はいってたカードが制限なしになった今年でも2万人台、が普通に起きてる。
あと、わからなくて困っているのが、チケットの買い方。今日の試合はどの席も同時発売なので普通に南側自由席を買ったものの、このあとの準々決勝、準決勝は「声出し」できる席とできない席の発売日をズラすというのと、そもそもレッズが順当に勝ち進んでいくかもわからないのとで、いつ、との席を買ったらいいのか困ってしまう。
わかっているのは、今日一日、いい天気、ってことだけだ。で、埼スタに出発だ。
いざ行かん きょうは一日 いい天気
試合開始1時間前に南側のスタンドに出ると、さすが北側ゴール裏、すでに満員。また空間全体が左右に揺れながらの「声出し」応援が見られると思うと、埼スタはやっぱりコレでなきゃ、って気にさせられる。
バックのロアーも満員に近づいていってて、バックアッパーも前列の方はビッシリと埋まっていってる。
最終的には2万人をちょっと超えたくらい。あれ、案外入ったな、という印象だ。当然、
アウエー席のジョホールサポの数は少ないものの、それでも百人くらいは来てた。
レッズの主催試合でないためにMDPを売ってなかったのと、先発メンバー発表が普段より10分以上はやく、しかも英語と日本語が流れるのがやはりACL。
さすがに前の試合のようなコレオはない。
南側自由席は、子供連れのファミリー層はほとんどおらず、かわりに「ソロ活」の若者、オジサンの比率がグッと増えている。
ソロ活の 大人が楽しむ ACL
■ロドリゲスサッカーの申し子になるモーベルグ
試合が始まると、最初ちょっと攻められたものの、すぐに主導権を取り戻し、いきなりPKだ。この攻防ですぐに感じたのは、ジョホールの「キメの粗さ」。勢いよく攻めたりするものの、DFはだいぶ雑で、抜きやすそうだし、ゴール前でもファールを取りやすい。
またそれがはっきりしたのが次のチャンス。大久保がうまくドリブルですり抜けようとしたら、敵はファウルでしか止められなくて、ゴール正面でFK。またそれを、実に鮮やかにモ―ベルグが決めてくれた。
南側はゴールがすぐ目の前で、そのキックの弾道がよく見える。ポストに当たるどうかのギリギリの隅で、これはもう、極上の花火職人が作った打ち上げ花火みたいなものだ。この2点目で、ほぼ勝利は確信した。
極上の 打ち上げ花火だ モ―ベルグ
それで3点目はまた、レッズ攻撃陣が、雑なジョホールDFを左右に揺さぶった上でモ―ベルグがあっさりゴール。モ―ベルグは、なんか、レッズの他の選手と完全に呼吸が合ってるみたい。ちょうどいいパスが出るところにいるし、時には自分でドリブルに行っちゃっても、それでチームのバランスが崩れない。
それでいうと、最初にPK決めたショルツも、ここにいてほしい、というポジションのところに必ずいる。あるいは、監督の戦術を一番よくわかってるのがこの2人なのかもしれない。去年もそうだったが、ロドリゲス監督が指揮をとると、年の初めごろは形がうまくできずに低迷して、ようやく夏場くらいになって豊富な運動量で縦横無尽に攻めを仕掛けるロドリゲス流がハマってくる。だから天皇杯のようなトーナメント戦には間に合っても、リーグ戦の優勝争いに間に合わない。2~3カ月前倒しにならないもんか。
春先も もっと勝ってよ ロドリゲス
後半に入り、どちらかというと攻められるシーンも目立っては来たものの、ほぼ心配ない。レッズDFが崩されてるわけじゃないから。一度だけ、「ヤバい!」とあわてたのがあったが、そこは岩波がゴール前に入って、相手のシュートをはじいてくれた。
それで締めは、後半の残り15分に入ったユンカーの「飛び出し」2得点だ。雑なジョホールDFのおかげもあって、「まさかの15分出場でのハットトリック」もあったかもしれない展開だった。
ユンカー、ショルツのデンマーク、モ―ベルグのスウェーデンと揃ったので、次に狙うのはノルウェー、フィンランドの選手か。北欧4か国揃ったら、世界クラブワールドカップで優勝するんじゃないか。もちろん、日本人選手の活躍が前提だけど。
またしても 北欧トリオで 大勝利
ジョホールの選手たちは、大敗にガッカリしたのか、サポーター席に近づいてはみたものの、ちゃんと整列して挨拶することなく、うなだれて去っていった。あれは、いかん。どんなに負けても、来てもらったお礼はしなきゃ。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。去年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2021』(飯塚書店)が好評発売中。現在は、山中企画で、タブレット純の3冊目の本と、お笑い系プロダクション「浅井企画」の元専務・川岸咨鴻氏の半生を追う本を準備中。『浦和レッズ川柳2022』も計画中だ。