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名称も“女神”も一新したKリーグ開幕。デビューお預けの豊田陽平に期待を寄せられるワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
蔚山現代の豊田陽平(写真提供:FA Photos)

昨日3月1日、韓国ではKリーグが開幕した。

Jリーグから約1週間遅れての幕開けとなったが、以前紹介した通り、Kリーグは今季から名称を変更。1部リーグは「クラシック」から「Kリーグ1」に、2部リーグは「チャレンジ」から「Kリーグ2」と名を変えて新シーズンを迎えている。

(参考記事:「Jリーグと類似しすぎ」「差別化できない」韓国プロサッカーがまさかの9度目の名称変更へ)

また、今季からは、昨年7月から1部リーグで導入されたビデオ判定を2部リーグでも導入。クラブとの契約が可能となる最低年齢も満18歳から17歳に引き下げるなど、改定された点は少なくない。

余談だが、今季は新たな“Kリーグ女神”も登場しているらしい。

これまで韓国では、チャン・イェウォンやイ・ユギョンなどが“サッカー女神”と呼ばれてきたが、最近は、『MBC SPORTS+』で女子アナウンサーを務めるチョン・スンジュが人気急上昇中。開幕戦を控えて行われたメディアデーでも司会を務め、関心を集めた。

紆余曲折を経て韓国に渡った豊田陽平

このように様々な面が一新された今季のKリーグで、特に注目したいのはレンタル移籍で蔚山現代に加わった豊田陽平だろう。

今年1月3日から12月31日までの期限付きで、サガン鳥栖から移籍。もともとは別の日本人選手が候補に挙がっていたという蔚山現代の裏事情があったが、そんな紆余曲折もあり、豊田は今季の注目外国人選手のひとりになっている。

(参考記事:「最初は別の日本人FWを狙っていた」豊田陽平のKリーグ移籍・韓国裏事情を現地記者が明かした

開幕前には韓国の複数のメディアが豊田の名を見出しに置いて報じる扱いで、『SPOTVNEWS』などは、蔚山のチームメイトで元Jリーガー(横浜FC→新潟→大宮)のチョ・ヨンチョルとともに、豊田に直撃インタビューまで行っている。

その関心に応えるように、Kリーグ開幕前に行われたACLグループステージでは、第1節のメルボルンV戦に先発出場。第2節の川崎フロンターレ戦にはフル出場し、チームの勝利に貢献した。

日本人Kリーガーが感じた日韓サッカーの違い

ただ、昨季王者の全北現代と対戦した昨日の開幕戦では出場機会を与えられず、Kリーグ・デビューはお預けとなった。それだけに豊田が今後、韓国でどう存在感を示していくかにも注目が集まるところだ。

振り返ればKリーグでは、2001年に海本幸治郎が城南一和(現・城南FC)に加入して以来、数多くの日本人選手がプレーしてきた。アジア枠が導入された2009年以降、その数はさらに増えている。

昨年には、和田倫季と和田篤紀の兄弟が揃って2部リーグの釜山アイパークでプレーし、Kリーグ史上初めて外国人兄弟が同じユニホームを着たとして話題を集めていた。

ただ、そんな日本人Kリーガーたちが、日本と韓国との環境の違いに苦労してきたのも事実だ。

実際、2016年に2部リーグの釜山アイパークでプレーした渡邉大剛は、当時のインタビューで、「(Kリーグは)Jリーグとすべてがあまりにも違いすぎる」と戸惑い交じりの告白をしていた。

(参考記事:日本人Kリーガー渡邉大剛が見て感じた“日韓サッカーの決定的な違い”

それだけに今後、豊田もこうした壁にぶち当たる可能性も否定できないが、それでも韓国では、豊田の活躍に期待を寄せる声が目立っている。

その理由について、韓国記者に話を聞いたところ、豊田の献身的なプレースタイルと豊富な活動量が評価されているという。

また、チームメイトからの評価も高いらしい。前出の『SPOTVNEWS』のインタビューでチョ・ヨンチョルは、日韓のサッカーを比較しながら、豊田の選手像をこう分析している。

「豊田は自分だけのサッカースタイルを持っている選手です。日本選手らしくないスタイルですね。前線でのヘディングもうまいし、献身的に走り続ける。フィジカルが良い選手です。Kリーグでも十分に通用するのではないでしょうか。韓国に来てからの姿を見て、サッカーに対する姿勢や情熱にも感心しています」

ちなみに、同インタビューによれば、豊田は現在、チョ・ヨンチョルのことを「先生」と呼び、韓国語のレッスンを受けているらしい。まだまだ単語を覚えている段階というが、韓国語の習得にも積極的に取り組んでいることがうかがえる。

いずれにしても、豊田が韓国で期待を集めていることは間違いない。

Kリーグで活躍した日本人選手と言えば、最近ではFCソウルで活躍した高萩洋次郎(現・FC東京)が真っ先に挙げられる。

ただ、一昨年に現地のサッカー専門誌が実施した「外国人選手格付け評価」で日本選手の成績は芳しくなかったし、昨年は阿部拓馬(蔚山現代→ベガルタ仙台)も安田理大(釜山アイパーク→アルビレックス新潟)も目立った成績を残せず、日本に戻った。それだけに余計に、豊田にかかる期待とプレッシャーは大きいと言えるかもしれない。

様々な面が一新されたKリーグ。いよいよ幕を開けた新シーズンには、新天地でプレーする元日本代表FWにも注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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