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”オール欧州組”となるオランダ遠征。日本代表のメンバーを大予想

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

オランダで行われるカメルーン戦(10月9日)、コートジボワール戦(13日)に向けた日本代表の招集メンバーが10月1日に発表されます。肩書はA代表ながら五輪世代を含む国内組で挑んだ昨年末のEAFF E-1から10ヶ月ぶり、フル代表としては約1年ぶりの活動となりますが、新型コロナウイルスの影響で、事実上の”オール欧州組”の構成になる見込みです。

森保一監督は25〜30人になることを示唆しています。欧州各国の検疫事情を確認しながら少し多めに呼んで、5日に現地でスタートする練習からチェックして、試合のメンバーを決めていく流れになりますが、ある程度のポジションバランスは考えて招集するはずです。

・筆者の招集予想メンバー

GK 

川島永嗣(ストラスブール)

権田修一(ポルティモネンセ)

シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)

DF

酒井宏樹(マルセイユ)

室屋成(ハノーファー)

吉田麻也(サンプドリア)

植田直通(セルクル・ブルージュ)

冨安健洋(ボローニャ)

板倉滉(フローニンゲン)

長友佑都(マルセイユ)

安西幸輝(ポルティモネンセ)

MF

遠藤航(シュトゥットガルト)

柴崎岳(レガネス)

*橋本拳人(ロストフ)

中山雄太(ズウォレ)

伊東純也(ゲンク)

堂安律(ビーレフェルト)

久保建英(ビジャレアル)

南野拓実(リバプール)

鎌田大地(フランクフルト)

原口元気(ハノーファー)

三好康児(アントワープ)

中島翔哉(ポルト)

FW

大迫勇也(ブレーメン)

鈴木武蔵(ベールスホット)

*浅野拓磨(パルチザン)

鈴木優磨(シント=トロイデン)

岡崎慎司(ウエスカ)

*セルビア、ロシアがオランダの入国制限に該当するため招集見送りの意向(追記)

・可能性メンバー

菅原由勢(AZ)

ファン・ウェルメスケルケン際(ズウォレ)

松原后(シント=トロイデン)

森岡亮太(シャルルロワ)

伊藤達哉(シント=トロイデン)

奥川雅也(ザルツブルク)

乾貴士(エイバル)

食野亮太郎(リオ・アヴェ)

武藤嘉紀(エイバル)

北川航也(ラピード・ウィーン)

筆者の分析で、招集が濃厚と見られるメンバーは28人。怪我から回復途上と見られる遠藤渓太(ウニオン・ベルリン)と宮市亮(ザンクト・パウリ)、スペイン2部サラゴサの登録を外れ、今後の去就が不明な香川真司は外しています。

GKは鉄板でしょう。東京五輪の候補まで広げれば山口瑠伊(レクレアティーボ)や19歳の小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)もいますが、ここは素直にA代表の常連3人が選ばれるはず。3人とも所属クラブで出場機会を得られておらず(川島永嗣は開幕2試合に出場)、心許ない状況ですが、川島とシュミットは前節もベンチに入っていますし、経験のある選手たちなので、しっかりと準備はしているはず。

右サイドバックは酒井宏樹とFC東京からドイツ2部のハノーファーに移籍した室屋成が盤石になっています。マルセイユの重鎮になりつつある酒井宏樹は言わずもがな、室屋も新天地で早くも右サイドバックのレギュラーを勝ち取っています。2−1で敗れたオスナブリュック戦は70分過ぎにFWのフランク・エビナと交代しましたが、2点を追いかける状況の戦術的な交代だったと見られます。

左は新天地のマルセイユに早くも溶け込んでいる感のある長友佑都、左右のサイドをこなせる安西幸輝が順当ですが、もともと層の薄いポジションです。左右で4人選ばれる場合は国内組にもチャンスがあったので、森保監督がそこの強化を重視するなら、この機会にシント=トロイデンの松原后を招集する可能性も考えられます。前節のメケレン戦は出番がありませんでしたが、それまで5試合連続フル出場していたので、そこの評価次第ではありるでしょう。

センターバックは予選も含めた常連である吉田麻也、冨安健洋、植田直通の3枚は間違いないところ。もう一人の板倉滉がコパ・アメリカでボランチ起用されていますが、U-23では3バックの一角で起用されており、一方で同じセンターバックとボランチのマルチプレーヤーである中山雄太は中盤で起用されています。この二人は五輪代表だと中心的なメンバーですが、A代表では当面、当落戦のライバルになって行きそうです。ただ、招集メンバーをベンチ入りの23人に絞らないと見られる今回は二人とも入るでしょう。

中盤はドイツで充実著しい遠藤航が主軸になっていけるかという試金石の機会になり得ます。FC東京から移籍したロシアリーグのロストフで得点力を開花させている橋本拳人も予選再開に向けて、あらためて主力定着をアピールしたいところ。その一方でスペイン2部レガネスに移籍して間もない柴崎岳は第2節での怪我の不安もありましたが、直近のカルタヘナ戦で途中出場しており、大事は無さそう。

この3人の関係でいうと本質的にゲームメイカーと呼べるのは柴崎だけですが、遠藤もビルドアップの安定感が増しており、橋本もボールを奪って攻め上がるだけでなく、長短のパスで起点になるプレーも上達させているので、中断前の様な柴崎が絶対と言える状況ではなくなっています。そうした環境の方が柴崎も良い意味で競争意識を持って合宿に臨めるでしょう。

もう一人は中山と板倉でセンターバックかボランチかという使い分けになってきますが、板倉がフローニンゲンでセンターバックとして出続ける一方で、中山は今シーズンの初先発となったスパルタ戦がアンカーのポジションでした。これはレギュラーをになってきたフィンランド代表MFラムの出場停止によるものですが、CKからヘディングでゴールを決めるなど地元紙でもMOMの評価を得ており、そのまま定着していく可能性もあります。

ただ、中山がボランチで代表に定着していくための課題としてパスの判断とボールスピードがあり、機動力でカバーしている部分は五輪代表の方でも明確に表れているので、そうした部分をどれだけ改善していけるかで、国内組も参戦できる来年の時点で評価がどうなっているかに結び付く様にも思います。何れにしても今回は板倉が後ろ、中山が中盤という使い分けが予想できます。

2列目は多士済々で、所属クラブで試合に出ている選手を拾って行っても普通に人数が溢れてしまう日本代表のホットゾーンです。久保建英はビジャレアルで途中出場が続いているものの強豪クラブでの挑戦ということもあり、順当に選ばれるはず。堂安律もオランダのPSVから期限付き移籍したドイツ1部のビーレフェルトでしっかりと居場所を見つけており、あとは目に見える結果が求められるところです。

プレミア王者で奮闘する南野拓実も厚い選手層の中でも短い時間ながら出番をもらえており、7-2で大勝したリンカーン・シティとのリーグカップはフル出場で2得点を奪う活躍を見せており、森保監督がカメルーン戦とコートジボワール戦のどちらに重きを置くか不明ですが、主力中の主力として期待されます。

ベルギーのゲンクで全試合にフル出場、2得点を記録している伊東純也も鉄板なところ。ビーレフェルトでインサイドハーフ気味のポジションがメインになっている堂安に代わり、右サイドのファーストチョイスになってくるかもしれません。堂安は4-2-3-1の場合、右と中央の2ポジションでチャンスが出てきそうですが、中央は南野がいるので、レギュラーポジションを掴む意味では茨の道かもしれません。

鎌田大地も大迫勇也がいない試合では南野と縦の2トップ的な関係を確立しつつありました(南野が前に出る方が機能していた)が、大迫がいて、北海道コンサドーレ札幌からベルギーのベールスホットに移籍した鈴木武蔵もベフェレン戦で逆転勝利につなげる同点ゴールなど上昇中、ポストプレーの技術に定評のある鈴木優磨も招集される場合、あらためて代表での位置づけを構築していく必要があるかもしれません。岡崎慎司もスペイン1部に昇格したクラブで堂々と1トップのポジションを掴んでいるのは素晴らしいことです。前節のバレンシア戦は2トップでしたが、センターフォワードにこだわりを持って評価を高めていることは間違いありません。

セルビアのパルチザンで、インジヤ戦でのハットトリックなど爆発的な活躍を見せる浅野拓磨はFWでも裏抜けを得意とするタイプですが、やはり前線の中央が能力を発揮しやすいので、広島時代の恩師である森保監督もその前提で起用していくはず。結局トップ下ともセカンドトップとも言える2列め中央のポジションには南野、堂安、鎌田、さらに久保も入ってくることになり、森保監督の中で所属クラブのポジションに拘らない仕分けが必要になってきます。

左サイドはドイツ2部のハノーファーで10番を背負い、揺るぎない地位を確立しつつある原口元気がスタメン候補。ポルトで今季の出場こそ無いものの、全体練習に復帰している中島翔哉も約1年ぶりということで招集される可能性は高いですが、すでに分かっている選手だけに、11月に代表活動がある前提で今回は見送るというケースが全く考えられない訳ではありません。

五輪世代が多く招集されたコパ・アメリカで大活躍した三好康児はいわゆるフルメンバーのA代表は未経験ですが、今回は招集されやすい状況にあると思います。ただ、所属のアントワープでは今季ここまで途中出場が3試合で、前節はベンチ入りしたものの出番がなかったので、そうした状況を森保監督がどう判断するか。

少なくともパフォーマンスは悪くないので、招集に障害は無いと思われます。三好の場合は個人で仕掛ける能力がありながら、周りを使ったり、使われるのもうまいので”森保ジャパン”でも異色の存在になっていくポテンシャルはあります。ミドルシュートなど得点力もありますが、MF寄りの選手なので、2列目のサイドから中央に関わっていく様な役所になることが想定できます。

「可能性メンバー」としてピックアップした選手たちは代表実績の豊富な選手とそうではない選手に分けられますが、25〜30人という目安はあるものの、特に人数の枠を設けていません。五輪代表の方で森保監督が招集している食野亮太郎や菅原由勢、伊藤達哉はなかなか活動が無い五輪代表に代わり、ラージファミリーとして今回の活動を考えていれば招集される可能性もあります。オランダでプレーする菅原は招集しやすいですし、食野は今季から加入したポルトガル1部のリオ・アヴェでチームを救う開幕戦ゴールを決めるなど、存在をアピールしています。

そのほか、ベルギーでは最も成功した日本人選手と呼べる活躍をしながら、ここ最近なかなか代表に縁がない森岡亮太やザルツブルクで昨シーズンに続きCL本戦出場の可能性もある奥川雅也などは今回の機会に選ばれても全くおかしくありません。また実績組の乾貴士、同じエイバルで、ビルバオ戦で短い時間ながらラ・リーが1部デビューした武藤嘉紀の復帰も十分にあり得ます。

ただ、武藤に関してはこの時期エリバルに残ってフィットを高める方が結局ベターかもしれません。それも詳細が未定となっている11月の代表活動とセットで考えていくべきものでもあると思います。前回のアジアカップでは清水エスパルスの選手として出場した北川航也もオーストリアのラピード・ウィーンでジョーカー的な位置づけながら継続的に出場しており、代表活動の中での意識付けも含めて招集するケースはあり得ます。

すでに欧州の主要リーグでプレーする選手の数だけでも代表チームが2チーム作れるぐらいいるので(ポジションに偏りはあるものの)、想定しているであろう国内組の候補、さらに東京五輪との兼ね合いも含めて、どういうメンバー構成で臨むのかは蓋を開けてみなければ分かりません。ただ、おおよそは想定内のメンバーになるのかなと思います。

注:脱稿後、新聞社の取材によりセルビアの浅野拓磨選手とロシアの橋本拳人選手はオランダへの入国規制で招集を断念する意向が報道されました。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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