JRAで馬券発売され、ダノンプレミアムが出走する豪G1の有力馬紹介
11日にオーストラリアのG1に日本馬が出走
新型コロナウイルスの騒動に揺れる競馬界だが、当然これは日本に限った話ではない。ヨーロッパでもアメリカでも主要競走が中止になったり、延期されたりしている。そんな中、ひとまず日程通り消化出来ているJRAの努力は計り知れないモノがあるだろう。
無観客にするなどして何とか開催を継続しているのは日本の競馬界ばかりではない。オーストラリアも地区によっては開催され続けている。この時期はザチャンピオンシップスで有名なシドニーの競馬も同様。無観客は当然だが、他にも総賞金を減額するなどして、オーストラリアンターフクラブはシドニー地区での競馬の生命線を確保。4月4日にはザチャンピオンシップスの1日目が行われ、この11日には2日目が行われる予定である。
この2日目に行われるのがクイーンエリザベスS(G1、ロイヤルランドウィック競馬場、芝2000メートル)だ。総賞金が400万豪ドルから200万豪ドルへと半減されたこのレースだが、日本のダノンプレミアム(牡5歳、栗東・中内田充正厩舎)を始め13頭がエントリーしており、JRAでも馬券を発売する方向にある。ダノンプレミアムに関して細かい解説は今さら不要だろう。今回は他の出走馬達について、あくまでも個人的な見解を簡単に記していこう。
ダノンプレミアムのライバル達はどんな馬?!
まずは立場的には日本と同様に外国からの挑戦となるアデイブ(せん6歳、英、W・ハガス厩舎)。近年では凱旋門賞2着のシーオブクラスなどを育てた名門ハガス厩舎の所属馬。英国ではG2勝ちもあったが、G1勝ちはなく、昨秋の英チャンピオンSでマジカルの2着したのが目立つ程度。しかし、オーストラリア遠征初戦となった前走でランヴェットS(G1)を優勝。自身初のG1制覇を飾った。その競馬ぶりは早目先頭から直線で一度はかわされながら差し返す強い形。古豪アヴィリウスや直後にドンカスターマイル(G1)を勝つネットーヤーらメンバーも揃っていただけに、オーストラリアなら格が違ったと思わせる競馬だった。
そのランヴェットSで2着だったのがベリーエレガント(牝4歳、豪、C・ウォーラー厩舎)。こちらはウィンクスで有名な伯楽の管理馬。マッチレースの末、アデイブには差し返されたが、3着以下は完封といえる内容。それを証明するように前走のタンクレッドS(G1)はほぼ持ったまま4・3馬身差の大楽勝。昨年、リスグラシューが勝ったコックスプレート(G1)では出遅れもあって14頭立ての12着に敗れていたが、過去にATCオークスを勝つなど元々今ぐらいの時期の方が走るタイプ。レースごとにメンコを着けたり外したりを繰り返していたが、外している近走でいずれも好走。ようやく良くなってきた気配がうかがえるだけに面白い1頭だ。
ちなみにC・ウォーラー調教師は他にも4頭を出走させる予定だが、人気がなくても一発があるかもしれないのがコールディング(せん4歳)かもしれない。斤量面で恵まれたのも事実だが、ブリンカーを外して来た前走で着順ほどには差のない競馬を披露。鋭い脚がないタイプだが、スタミナ勝負になれば意外な大駆けがあるかもしれない。
逆にキングズウィルドリーム(せん6歳)は実績だけみれば多少売れそうだが、実は左回りの方が良いタイプ。D・ウィアー厩舎からの転厩馬だが、転厩前の海岸調教も良かったのか、はたまた年齢的なものか、転厩後は以前ほどの勢いが見られないのも気掛かりだ。
実績という意味では注目されそうなのがヴァウアンドディクレア(せん4歳、豪、D・オブライエン厩舎)。昨年のメルボルンC(G1)の勝ち馬で、それ以来の出走となった前走のローズヒルギニー(G1)では外からそれなりに伸びてみせた。ただし、元々末脚勝負型の馬なのに、更に外から2頭にかわされて敗れた点は気になる。果たしてそのひと叩きでどれだけ良化しているのか?と、後は展開が向くかどうかだろう。
実績と勢いならニュージーランドからの遠征馬テアカウシャーク(せん5歳、NZ、J・リチャーズ厩舎)も負けていない。リスグラシューが制したコックスプレートで3着に善戦後、G1を連勝。前走のジョージライダーS(G1)は大外から差を詰めての3着。そのジョージライダーSが1500メートル戦である事からも分かるようにマイル以下を中心に使っているので、距離が課題となる。ニュージーランドからの遠征馬といえ、この2月には早々にオーストラリア入り。すでに現地で2戦しているので、遠征の心配は皆無。今回は初めて接着タイプの特殊蹄鉄を使用するとの事。果たしてそれでどのくらい走りが変わってくるのか?という事になりそうだ。
また、同じ厩舎からはメロディベル(牝、5歳)も出走する。こちらもリチャーズ調教師のオーストラリアの厩舎に入厩しての競馬が続いている。先週のドンカスターマイルはネットーヤーの4着。ブリンカーの他に舌を縛ったり、パドックだけメンコを装着したりといかにも気性面で難しいタイプのようで、競馬ぶりは末脚勝負型。毎回のようにゴール板を通過してから先頭に立つような走りをする。もっともそのほとんどがマイル前後かマイル以下のレースで、2000メートル前後はほとんど走っていないが、そんな中でニュージーランドS(NZ・G1、芝2000メートル)優勝などの実績がある。意外とこのくらいの距離の方が末脚を発揮出来るのかもしれない。注意が必要そうだ。
ちなみにリチャーズ厩舎のこの2頭の面倒をみているのはC・ソーントン調教助手。騎手時代には02年の中山グランドジャンプをセントスティーヴンで優勝している。日本に縁のある男が、今回も馬券にかかわってくるかもしれない。
赤道を越えて朗報が届くだろうか?
さて、昨年のマイルチャンピオンシップ(G1)以来の出走となるダノンプレミアムの仕上がり具合はいかほどか。本来なら例年通り現地で取材をしている予定だったが、世界を蹂躙するウイルス戦争のせいで私も家にいて情報を収集するにとどまっており、状態面など詳細は伝聞でしか取れていない。G1勝ちは17年の朝日杯フューチュリティSのみだが、昨年も天皇賞(秋)やマイルチャンピオンシップで2着に好走するなど、実力的に大きなヒケはとっていないはず。ゲートは3番と好枠があたったようだが、果たしてどのような結果が待っているだろう。発走は日本時間11日(土曜)の14時55分。コロナで雰囲気も沈みがちな日本の競馬ファンに明るいニュースが届くだろうか。注目したい。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)