「引き分け以下でハリルホジッチ解任」は、意外と正しい選択だ。
オーストラリア戦は引き分け以下で、ハリルホジッチが解任される可能性がある―。
23日に日刊スポーツが出したニュースは衝撃的だった。内容は以下の通りだ。
何をバカげたことを。
これほどの瀬戸際まで引っ張って解任するなど、愚の骨頂。もしも解任するなら、もっと早くに決断するべき。こんなタイミングで解任しても、バタバタ慌てるだけで何も良いことがない。一笑に付した人は多いのではないか。
こんな情報が、「協会関係者の言葉」として表に出ること自体も不可解であるし、単なる飛ばし記事かもしれない。
ただ、このような議論が起こる背景は、わからなくもない。
9月5日の最終戦となるアウェーのサウジアラビア戦は、酷暑が予想される。キックオフが夜とはいえ、気温は約30度で、それを超える可能性もある。なおかつ試合が行われるのは、紅海沿岸都市のジェッダであるため、湿度も高い。高温多湿の厳しい環境だ。
この環境下の試合をハリルホジッチに託すことに、不安がないと言えばウソになる。
気温37度で行われた6月のイラク戦は、後半になるとまともに走れる選手がほとんどいなくなり、見るのが辛いほど、ぼろぼろの試合だった。コンディショニングに失敗し、采配も裏目に出た。基本的にハリルジャパンは先行逃げ切り型で、ホームのUAE戦、イラク戦、アウェーのオーストラリア戦、イラク戦など、先制に成功はするが、追加点がなく、逃げ切れずに追いつかれるケースが多々ある。その場合、後半の息切れ感も強い。
サッカーに適さない環境下で、いかに相手を走らせ、消耗を避けて時計の針を進めることができるか。この点でハリルホジッチは納得の行く答えを見せていない。とりわけ、イラク戦のイメージは相当悪い。
逆に、清武弘嗣、大迫勇也、原口元気が活躍した昨年11月のホームのサウジアラビア戦(2-1)など、サッカーに適した涼しい環境下であれば、今の日本代表はかなりアグレッシブで強さを感じさせる。あるいは、久保裕也や今野泰幸が活躍した今年3月のアウェーのUAE戦(2-0)も、気温は27度だが、湿度が38%と乾いており、選手は暑さが気にならないと言っていた。
環境が良ければ、今の日本代表は強い。
自分たちの形よりも、相手を分析し、守備面でしっかり対策を施す。そして激しいプレッシングから、縦に速いカウンターを繰り出す。それに適した選手を試合ごとに起用する。「弱者のサッカー」と揶揄する人もいるが、日本がワールドカップに出れば、相手によって弱者のサッカーをやらざるを得ないのは当たり前だ。コンフェデレーションズカップでは、ドイツでさえ、チリを相手に弱者のサッカーをやって、優勝をつかんだ。ハリルホジッチの戦略で、ワールドカップを見たい気持ちは強い。
しかし、だからといって、酷暑のサウジアラビア戦を任せていいものか。その点だけは不安だ。
解任する場合は、手倉森誠コーチの昇格以外はあり得ないだろう。手倉森氏はリオ五輪の最終予選でも、我慢のサッカーで、前半は息を殺し、後半に転じて一刺しを浴びせるパターンを確立し、アジア優勝を果たした。先行逃げ切りのハリルジャパンとは、ゲーム志向が違う。手倉森“監督”に任せる手はある。
ワールドカップとか先のことを何も考えず、ただ出場権の獲得だけを目指すなら―。オーストラリア戦の引き分け以下でハリルホジッチを解任する選択肢は、意外と妥当なのだ。悩ましい。
そんなことを考えなくてもいいように、オーストラリア戦で出場を決めよう。過去予選で未勝利の歴史を覆して。