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アレルギー性皮膚疾患治療の救世主?デュピルマブとオマリズマブの有効性と安全性を検証

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【生物学的製剤とは?デュピルマブとオマリズマブの特徴】

近年、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹などのアレルギー性皮膚疾患の治療に、生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬が注目されています。今回は、その代表的な薬であるデュピルマブとオマリズマブについて、最新の研究結果をもとに解説します。

生物学的製剤とは、生物の体内で作られるタンパク質を利用して作られた薬のことです。従来の薬とは異なり、ピンポイントで病気の原因となる物質を抑える働きがあります。

デュピルマブは、アトピー性皮膚炎やその他の皮膚疾患の治療に使われる薬です。体内のIL-4とIL-13という物質の働きを抑えることで、炎症を抑える効果があります。一方、オマリズマブは主に蕁麻疹の治療に使われ、アレルギー反応を引き起こすIgEという抗体の働きを抑えます。

【デュピルマブとオマリズマブの有効性:アトピー性皮膚炎と蕁麻疹への効果】

最新の研究によると、デュピルマブはアトピー性皮膚炎の症状を改善する効果が高いことがわかっています。特に、従来の治療で効果が不十分だった患者さんにも効果があるとされています。

オマリズマブについても、慢性蕁麻疹の治療に効果があることが確認されています。蕁麻疹に悩む多くの患者さんにとって、新たな希望の光となっています。

これらの生物学的製剤の登場により、従来の治療では十分な効果が得られなかった患者さんにも、新たな選択肢が生まれました。特にアトピー性皮膚炎や慢性蕁麻疹など、長期的な管理が必要な疾患において、患者さんのQOL(生活の質)向上に大きく貢献すると考えられます。

【安全性の検証:副作用リスクは本当に低いのか?】

生物学的製剤の効果が注目される一方で、多くの患者さんが気になるのが副作用のリスクです。今回の研究では、デュピルマブとオマリズマブの安全性について、詳細な分析が行われました。

驚くべきことに、デュピルマブの使用は113種類の重篤な副作用のうち、112種類について有意なリスク増加が見られませんでした。同様に、オマリズマブも61種類の重篤な副作用のうち、60種類で有意なリスク増加が認められませんでした。

特に注目すべき点は、両薬とも様々な感染症のリスク増加と関連がなかったことです。これは、免疫系に作用する薬であることを考えると、非常に重要な発見といえます。

さらに、デュピルマブの使用はアトピー性皮膚炎の発症リスクを低下させ、オマリズマブは喘息の発症リスクを低下させることもわかりました。これは、これらの薬が治療だけでなく、予防的な効果も持つ可能性を示唆しています。

ただし、すべての薬には副作用のリスクがあります。デュピルマブでは、まれに結膜炎などの眼の症状が報告されています。オマリズマブでも、ごくまれにアナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー反応が起こる可能性があります。

そのため、これらの薬を使用する際は、必ず医師の指示に従い、定期的な経過観察を受けることが重要です。また、何か気になる症状が現れた場合は、すぐに医師に相談しましょう。

日本では、デュピルマブは2018年からアトピー性皮膚炎の治療薬として承認されています。オマリズマブも、2013年から慢性蕁麻疹の治療薬として使用されています。海外と比べると承認がやや遅れていますが、日本人を対象とした臨床試験も行われ、日本人にも十分な効果と安全性が確認されています。

生物学的製剤は、従来の治療では効果が不十分だった患者さんに新たな希望をもたらしています。しかし、その使用にあたっては、個々の患者さんの状態や既往歴、生活環境などを考慮し、慎重に判断する必要があります。

また、これらの薬は高額なため、経済的な負担も考慮する必要があります。日本では特定の条件を満たせば医療費助成制度を利用できる場合もありますので、詳しくは主治医や医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。

今回の研究結果は、デュピルマブとオマリズマブの安全性を裏付ける重要なエビデンスとなりました。しかし、長期的な安全性については、さらなる研究が必要です。今後も継続的な監視と研究が行われ、より安全で効果的な治療法の確立につながることが期待されます。

アレルギー性皮膚疾患でお悩みの方は、これらの新しい治療法について主治医に相談してみてはいかがでしょうか。一人ひとりに合った最適な治療法を見つけることが、症状の改善と生活の質の向上につながります。

参考文献:

Xiao Y, Yang W, Wang M. A comprehensive analysis on the safety of two biologics dupilumab and omalizumab. Front. Med. 11:1435370. (2024) doi: 10.3389/fmed.2024.1435370

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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