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たばこを吸い続けると、将来歯が少なくなる? 加熱式たばこなら大丈夫か

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

呼吸器内科では多くの喫煙者を診察しますが、よく相談されるのが「歯の問題」です。歯周病になりやすく、たくさん歯が抜けてしまうことから、入れ歯を使っている人も少なくありません。

たばこと歯周病の関係

たばこを吸うと、歯周病が悪化します。「歯にトラブルが出てから歯科医院に行けばいいや」と思っている人も多いですが、喫煙者では歯周病の症状が出にくいとされており図1)、楽観的に考えていると手遅れになる可能性があります。

図1. たばこと歯周病の関係(筆者作成、イラストは、ジャパクリップ、看護roo!より使用)
図1. たばこと歯周病の関係(筆者作成、イラストは、ジャパクリップ、看護roo!より使用)

口の中に生息している細菌は、バイオフィルムというネバネバの膜を形成しながら増殖していきます。毎日歯磨きをして、定期的に歯科医院を受診することで、これをコントロールすることが可能です。

しかし、歯周病によって歯茎が傷んで歯周ポケットが深くなると、持続的に炎症を起こしてしまいます。

たばこを吸うほど歯は残りにくい

たばこを吸っている若い人は、そもそも歯の心配なんてしません。しかし、年齢を重ねるとこの問題が顕在化してきます。結果、じわじわと歯にダメージが蓄積して、周りの人よりも早く歯がなくなりやすいのです。

たとえば、歯周病のリスクは非喫煙者の4倍とされています(1)。喫煙し続けていると、歯が抜ける本数が非喫煙者より増えることが示されています(2,3)。

現在または過去喫煙者で1日21本以上たばこを吸うグループは、9本以上歯を失うリスクが非喫煙者の約2倍でした(図2)(3)。

図2. 1日あたりの喫煙本数と9本以上歯を失うリスク(参考資料3をもとに筆者作成)
図2. 1日あたりの喫煙本数と9本以上歯を失うリスク(参考資料3をもとに筆者作成)

また、喫煙年数が長いグループでは、現在喫煙者(46年以上)で歯を失うリスクが約2倍、過去喫煙者(31年以上)で約3倍でした(図3)(3)。

図3. 喫煙年数と9本以上歯を失うリスク(参考資料3をもとに筆者作成)
図3. 喫煙年数と9本以上歯を失うリスク(参考資料3をもとに筆者作成)

もちろん歯の問題だけではなく、たばこを吸えば吸うほど、がんのリスクも高くなります。百害あって一利なしです。

加熱式たばこにスイッチすると歯の健康によいのか?

今年6月、たばこ関連企業から、加熱式たばこに切り替えることで歯周病が軽減するといったレポートが発表されました(4)。

レポートでは、日本人の歯周病患者で喫煙者を対象に、喫煙を継続する群、加熱式たばこにスイッチする群、両方とも併用する群の3群に分けて、歯周病の治療効果の差が検証されています。いずれの群でも歯周ポケットの深さは改善されましたが、それぞれに有意な差はありませんでした。しかし、「加熱式たばこにスイッチしたほうが、細胞損傷が少なく、歯茎の治癒能力がわずかに改善したのではないか」と考察されています。

これに対して、日本歯周病学会は、非喫煙者群が設定されていない研究であることや、著者全員がたばこ産業の従事者であることを懸念しています(5)。また、当該プロモーション活動に対して、国立がん研究センターは、2021年FDIポリシーステートメントにあるタバコフリーの推進に反すると表明しています(6)。

現時点で、加熱式たばこにスイッチすることで歯周病が減るという明確な根拠が示されているとは言えない状況です。

まとめ

将来歯周病によって歯が抜けないようにするためには、できるだけ早く禁煙することが望ましいです。

加熱式たばこに含まれている化学物質を長期間体内に吸い込む行為が、将来どのような病気を引き起こすのかまだ十分に分かっていません。そのため、歯周病だけでなく、肺や全身の副作用について質の高い研究で検証を行う必要があります。

呼吸器内科医の見解としては、紙巻きたばこであろうと加熱式たばこであろうと、余計なものや異物を吸わないことを心がけてほしい、と思っています。

(参考資料)

(1) Thomar SL, et al. J Periodontol. 2000;71(5):743-751.

(2) 千草隆治ら. 日本ヘルスケア歯科学会誌. 2022; 21(1): 36-39.

(3) Yanagisawa T, et al. Oral Dis. 2009;15(1):69-75.

(4) フィリップモリスジャパン合同会社. 加熱式たばこは喫煙者の口腔衛生の改善に寄与できるか(URL:https://www.whitecross.co.jp/articles/view/2280

(5) 日本歯周病学会. 新型タバコ(加熱式タバコ)に関する見解2(URL:https://www.perio.jp/file/news/info_211109.pdf

(6) Hirano H, et al. Tob Control. 2022 Aug 11;tobaccocontrol-2021-057191

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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