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河南省鄭州のマンションで「お見合い」中に突然封鎖!デリバリー配達員も、通いの家政婦も、家庭教師も…

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

1月初旬から新型コロナの感染者が急増している中国・河南省の鄭州(ていしゅう)市で、お見合い相手の男性宅にたまたま滞在している間に突然マンションが封鎖。プチ・ロックダウン状態となって、外に出られなくなってしまった女性のことが、中国のSNSで話題になっている。

帰ろうとしたらマンションが封鎖

現地の報道によると、この女性は30代の王さん。広東省の広州市で働いていたが、親のススメで、1月9日に故郷の鄭州市に戻り、10人の男性とのお見合いを行う予定だった。

4人の男性とお見合いをした後、5人目の男性から「自宅で料理をふるまう」と誘われてマンションをたずね、食事後、いざ帰ろうとしたときにマンションが封鎖となり、そのまま隔離となってしまったという。

「ゼロコロナ」を掲げる中国では、たった1人でも感染者が出れば、そのマンションは封鎖となり、外出禁止。住民全員がPCR検査を受けなければならない。

中国の都市部では一軒家は少なく、多くの人がマンション住まい。たいてい数棟から数十棟が1つのゲートで囲われており、たとえ自分が住むマンションで感染者が出なくても、同じ敷地内にある隣のマンションで出れば、敷地から外へは一歩も出られなくなってしまい、数千人が隔離となる。

問題は、封鎖の決定から封鎖の実行までの時間があまりにも「短い」ことだ。

朝起きたら家が封鎖されていた⁉

封鎖の決定はその地域の行政担当者が行い、社区と呼ばれるエリアの管理を行っている居民委員会の担当者に通知。即時に封鎖が各戸に通知されてゲートが閉められる仕組み。

SNSのグループで全戸に通知されるほか、ゲートにも通知書が掲示され、ロープなどが張られる。

具体的に何時間なのか、何十分間なのかはケース・バイ・ケースで一概にはいえないが、実際に私の知り合いも「夜、家に帰ったときには何事もなかったのに、朝起きて、外に出ようとしたら封鎖されていて驚いた」という話をしていた。

そのくらい突然、マンションが封鎖されるため、冒頭で紹介した王さんのように、たまたま誰かの家を訪ねていたときに、そのマンションが封鎖されて、そこから出られなくなってしまった、という嘘のようなホントの話は珍しくない。

この女性は、お見合い相手が毎日料理を作ったり家事を全部してくれること、無口で全然しゃべらないが、誠実な人であること、などを写真や動画つきで盛んに取り上げたため大きな話題となったが、ほかにも、たまたまデリバリーの配達をしていた配達員や、通いの家政婦、家庭教師などが突然の封鎖でゲートから出してもらえず、閉じ込められ、着の身着のまま、2~3週間、そこで過ごしたという“悲劇”もある。

王さんがSNSに投稿した、お見合い相手の男性が作った料理の数々(中国メディア「西加網」より引用)
王さんがSNSに投稿した、お見合い相手の男性が作った料理の数々(中国メディア「西加網」より引用)

中国のゼロコロナ政策では「例外」や「特例」は決して認められないため、どんなに深く、切実な事情があろうとも、いったん隔離されたら最後、一定の期間を経なければ、そこから出してもらうことはできない。

王さんの投稿についてSNS上には「これはきっと運命の恋だ!」「よほどご縁があったんですね」などの好意的なコメントのほか、「どうせ話題づくりのためだろう」「インフルエンサーなんでしょ?」などの疑問の声も挙がっている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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