西高東低で始まった「インフルエンザ警報」 実態はもっと多いかもしれない
複数の保健所管轄区域で、インフルエンザが「警報レベル」に到達しています。都道府県レベルでは、沖縄県がすでに「警報」を発出しています。インフルエンザ陽性の増加が著しく、発熱外来によっては新型コロナと逆転しているところが散見されます。
複数地域で「インフルエンザ警報」
現在新型コロナ第8波は減少傾向ですが、1月末~2月にかけてインフルエンザが急増するフェーズが到来する可能性があります。
国立感染症研究所では、インフルエンザ流行レベルマップを公開しています(図1)。全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関を受診したインフルエンザの患者数を週ごとに集計し、過去のシーズンをもとに基準値を設け、流行期入り・注意報・警告などを発出する仕組みになっています。
具体的には、1つの定点医療機関当たりの患者数が、1人超で流行期入り、10人超で注意報、30人超で警報、となっています。過去のインフルエンザをみると、ピーク時の数値は50~70人です。
沖縄県ではこの数値が30人超に到達し、ついに「インフルエンザ警報」が発出されました。発熱者のかなりの割合をインフルエンザが占めるようになっている印象です。
都道府県としては沖縄県のみが該当となっていますが、全国の保健所管轄区域で警報レベルを超えているところは全部で7か所あり、全て西日本です。大阪府や福岡県などで都道府県レベルの警報発出が近づいています。
インフルエンザはもっと多い?
発熱外来は、年末年始は「新型コロナ陽性・新型コロナ陽性・インフル陽性・新型コロナ陽性・・・」といった感じの推移でしたが、現在、小児向け発熱外来などではインフルエンザ陽性が新型コロナ陽性を上回っている地域も多いです。
新型コロナと異なり、インフルエンザのうち高齢者は少ないです。現在警報が出ている沖縄県では、インフルエンザと診断された人のうち60歳以上だったのは3.9%だけでした(2)。
過去のインフルエンザシーズンとは異なり、現在発熱外来がたくさん開設されています。そのため、本来定点医療機関で報告されていただろうインフルエンザ陽性数が、過少になっているかもしれないという指摘があります。
つまり実態としては、想定しているよりもインフルエンザはもっと流行しているのではないか、ということです(図2)。
インフルエンザの感染者数は推定値で算出できないため、もしこの見解の通り過少になっているとしても、どの程度過少になっているのか、現時点では知る術がありません。
そのため、インフルエンザの流行が終わった後、過去の定点あたり報告数との比較検討が必要かもしれません。
まとめ
インフルエンザの患者数が急増しています。西高東低で始まった警報レベルの地域が、今後増えてくる可能性があります。
しかし、新型コロナと同時流行になっており、インフルエンザ単独の流行実態が把握しにくくなっているかもしれません。
どちらの感染対策も同じであるため(表)、この同時流行の波を乗り切りたいところです。
(参考)
(1) インフルエンザ流行レベルマップ(URL:https://kansen-levelmap.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/new_jmap.html)
(2) インフルエンザの流行状況について ~インフルエンザ警報発令~(URL:https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/vaccine/yobou/press/documents/20230119_infulenza.pdf)