【佐賀市】被災を乗り越え、6月に店舗を移転オープン!300年の歴史を持つ、地区で最後の和紙工房。
佐賀市の山奥で、300年の歴史を築き、守られ続けている“和紙”の文化。和紙を日常使いするイメージはあまりないかも?でも意外なところで使われていたり、誰もが知るイベントを陰で支えている存在でもあるんです。
明治後期、佐賀市大和町名尾エリアには、100軒もの紙すき工房があったそうです。紙の一大産地となったものの、その後、徐々に減少し…今、残っているのはなんと1軒だけ。それが「名尾手すき和紙」です。国道263号を三瀬方面にまっすぐ。「三反田」交差点を県道209号に繋がる東方向に曲がり、とにかくひたすら道なりに進みます。山間のうねりのある道を過ぎると田んぼが広がるのどかな雰囲気。
数年前の豪雨で工房と店舗が被災したことを受け、昨年8月、同地区に工房を新築移転。合わせて店舗も移転し、今年6月に「KAGOYA」の名でオープン!再スタートを切りました。伝統ある和紙の工房と店舗…と聞くと少し敷居が高く感じますが、一般の方も気軽に立ち寄り、間近でその伝統と文化を感じることができます。
こちらが店舗「KAGOYA」です。
中に入ると、天井から吊るされた大判のカラフルな和紙。そしてシンプルで洗練された空間…スタイリッシュで近代的だけれど、奥ゆかしさも感じます。左側に雑貨などの商品、机を挟み真ん中には乾燥棚のようなものがあり、その中にもたくさんの和紙が眠るように並んでいます。
和紙のイメージがぐっと広がる商品と空間。
ここの和紙を使って作られた提灯。和紙によって、電球から外への灯りの移し方が変わるため、明るさや灯り方など、細かいオーダーに合わせて選ぶそうです。
お店の方に伺ったところ、周辺の手すき和紙工房が後継者不足などさまざまな要因で畳んでいく中、生き残れた理由の1つが「提灯用の和紙づくりに長けていたこと」なんだそう。写真の提灯は展示用で成形などはオーダーしたものですが、提灯用の和紙の注文が全国各地から届くそうです。
さて、その奥に並ぶのはアートな空間。和紙は、その柔らかい雰囲気から、淡い色合いのものを想像しがちですが、パキッとした色も馴染みます。このゾーンも、全て和紙を使ったものです。お祭りの提灯まで!山笠で活躍する提灯にも、ここの和紙が使われているそうです。
左側の棚に並んだ商品たち。扇子や便せん…
ブックカバーやコースター、メモ帳など。御朱印帳もありました。
いただいたのは、なんと和紙の原料から作られたお茶!さらに…その下に敷いてあるのも、和紙で作られたコースターです。“柿渋”という、水に強い種類だそうで、こぼれた水滴もしっかり吸ってくれました。コースターは商品として棚に並んでいます。
お店に来る前から筆者が狙っていたのは、ブックカバー。無事、ゲットできました!
手にとって感じてほしい、和紙の強さと美しさ。
名尾手すき和紙の原料は、名尾地区で自生する「梶の木」。一般的な和紙に使われるものより繊維が長くしっかりとしているため、薄くても頑丈な和紙を作ることができます。和紙の、その“強さ”を確認するには、両手でゆっくり割くと良いとのことで、お店の方が実際に見せてくださいました。裂け目が毛羽立つように、じりじりと分かれていくのがわかります。
梶の木の収穫は毎年冬、1~2月に1年分、まとめて。その後、長く細かな工程を経て、この工房で和紙へと姿を変えていきます。その過程は思った以上に体力仕事だそうですが、それもまた神秘的で芸術的で。佐賀の山奥で今もなお受け継がれていることに、何だか合掌したくなる思いです。
購入したブックカバーは薄くて軽く、優しい手触り。でもしっかり頑丈で、大切な本を深く包んでくれます。贈り物やお土産にもおすすめです♪
佐賀が誇る工芸品、「名尾手すき和紙」。歴史や伝統を重んじるのも大切ですが、貴重だからこそ、より多くの方に知ってほしい、足を運んでもらいたいと感じる場所でした。