北海道新幹線の高架を望む、列車が来ない廃止予定駅 津軽線 大平駅(青森県東津軽郡外ヶ浜町)
令和4(2022)年8月豪雨の影響で不通が続き、令和9(2027)年春の廃止が計画されている津軽線の蟹田~三厩間。蟹田から数えて2駅目にあるのが大平(おおだい)駅である。ついつい「おおひら」と読んでしまいそうな隠れた難読駅名で、同じ線内に「大川平(おおかわだい)」というよく似た駅名もあるのが紛らわしい。
大平駅は昭和33(1958)年10月21日、津軽線の蟹田~三厩間延伸に伴い開業した。ホームから少し離れたところにブロック造りの待合室があり、構内は広い。待合室とホームの間には保線車両の基地が設けられている。待合室とホームの位置関係を見るに、将来的には交換設備を追加することを見越した造りだったのではなかろうか。現状は閑散ローカル線と化している津軽線の蟹田~三厩間だが、かつては青函トンネル建設の資材・人員輸送で賑わいを見せており、輸送力増強のために交換駅を増やす可能性も視野に入れていたのだろう。
待合室は開業時に建てられたもので、築66年。コンクリートブロック造りで、同日に開業した中小国駅、津軽二股駅、大川平駅にも同型のものが建てられたが、津軽二股駅のみ後に建て替えられている。昔の写真を見るに、元は現在窓がある部分にも出入口があったようだ。
ホームは1本だけだが、もしかしたら保線車庫が建っている部分がホームとなっていた可能性もあったのかもしれない。豪雨被害で列車が運休となってから2年以上、ホームは赤く錆びて草に覆われていた。
駅名の「大平」は明治の町村制で蟹田村が成立するまで存在した東津軽郡大平村に由来する。
筆者が訪問した9月下旬、大平駅構内では保線車両の点検作業が行われていた。保線車両の働き場所である津軽線の運休で使われていないこれらの車両だが、路線の廃止後は他路線に転属したりするのだろうか。
大平駅の東方では北海道新幹線の高架が津軽線を跨いでおり、その北には海峡線と北海道新幹線の線路が合流・分岐する「大平分岐部」がある。3つの鉄道路線が一堂に会する鉄分の濃い空間だが、津軽線は運休中、海峡線は基本的に貨物列車だけで乗車の機会はほとんどないため、3線のうち一般利用者が乗ることができるのは北海道新幹線だけだ。それも防音壁に遮られるため、分岐部付近を車内から観察するのは難しいだろう。
運休以前は、北海道新幹線の高架を潜って大平駅に到着する津軽線の列車を駅構内から見ることができた。何気なく撮った一枚だが、津軽線が復旧することなく廃止となることが決まった今、貴重な写真になりそうだ。
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