欧米の国債利回りが上昇し、日本の長期金利は0.2%が視野に。0.25%を付けると急激な円安リスクも
イングランド銀行は3日のMPCで政策金利を0.25%引き上げ0.5%とした。金融政策委員9人のうち4人は0.5%の利上げを主張。ECBは現状維持ながらラガルド総裁の年内利上げの可能性は低いとの発言はなく、これらを受けて欧州の国債は急落した。米10年債利回りも1.83%に上昇。
欧米の国債は売られ、日本国債も売られ、10年国債の利回りは0.195%に上昇した。取引時間中としては日銀がマイナス金利政策の導入を決めた2016年1月29日以来、約6年ぶりの高い水準となり、0.2%が視野に入りつつある。
債券先物も下落し、昨年2月につけた直近安値の150円38銭を割り込んできた。
欧米の中央銀行は一時的としていた物価上昇に対して、一時的との認識を改め、金融政策の正常化を急ぐことになった。
これに対して日銀の物価目標としている消費者物価指数(除く生鮮)は、11月で前年比プラス0.5%に過ぎない。2%にまだ距離があり、日銀は動かないとの見方も強いが、本当にそうであろうか。
1月の東京都区部の消費者物価指数(除く生鮮)は、前年比プラス0.2%とさらに上昇幅を縮小させた。これはGO TOトラベルによる要因が剥落したためである。そして、携帯電話料金の引き下げによる影響はまだ内包しており、それを除くと前年比プラス1.7%近辺となるのである。
全国の消費者物価指数も同様の数値となることが予想される。ただし、携帯電話料金の引き下げによる影響がなくなるのは4月以降となるので、名目上は0.2%近辺、実質は1.7%近辺ということになろう。それでもまだ2%には届いていないが、実質で2%に近づくことが予想され、その兆候も出てきている。
たとえば、国連食糧農業機関(FAO)が3日発表した1月の食料価格指数は植物油指数が急上昇し、約10年ぶりの高水準付近となっている。
3日のニューヨーク市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物の期近物が上昇し、2014年10月以来、約7年4か月ぶりに1バレル90ドルを超えてきた。
日清食品は、主力の「カップヌードル」を6月1日出荷分から値上げすると発表した。
このように日本の物価も今後さらに上昇してくる可能性が高いとみざるを得ない。それに応じて長期金利には上昇圧力が掛かることも予想される。
日銀は長期金利コントロールを行っているがそのレンジを±0.25%としている。つまり長期金利はその上限に接近しつつある。0.25%に届いたら日銀は無制限買入を実施するため、そこで長期金利の上昇は抑えられるので、めでたしめでたしとなるのであろうか。
たしかに無制限買入によって10年債利回りの上昇は抑えられるかもしれないが、これは強力な量的緩和、つまり金融緩和策にも映ることになる。物価が上昇し欧米の長期金利が上昇し、それを受けて金利が上昇したにもかかわらず、そこで強力な緩和策を行うとどうなるのか。
もし日銀が無制限買入を実施し、3月にはFRBが利上げをするということは、日米の金融政策の方向性の違いが顕著となり、また日米の長期金利スプレッドが拡大することも意味する。
そうなると外為市場では円安が急速に進む懸念が出てくることになる。ここから120円に向けて円安が進むようなことになると、円安による輸入物価への影響も考慮すれば、参院選も控えた政権にとっては、あまり好ましくない状況ともなりかねないのではなかろうか。