聴覚障害者の方たちの政治参加を促すために必要なことは何か。
いよいよ衆議院選挙(10月10日公示、10月22日投開票)です。昨今では18歳選挙権によって「被選挙権年齢」の引き下げも検討されているようです。また、女性がもっと積極的に政治参加するために、クオータ制の導入を求める声もあります。しかし、選挙での投票、あるいは立候補するには年齢や性別以外の壁も大きく立ちはだかっている現状があります。
今回はその一例として聴覚障害者の方たちの政治参加を促すために必要なことについて、特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(略称:TA-net)理事長の廣川麻子さんにお聞きしました。
特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(略称:TA-net)は演劇などの舞台における情報保障(聴覚障害者向け字幕・視覚障害者向け音声ガイド・手話通訳など)の普及・促進・人材育成・提供、情報保障の調査研究・開発、情報保障の担当者・団体との連携、運営支援を行い、潜在する観劇希望者への情報提供と利用機会促進に寄与することを目的に活動しています。
廣川さんによると聴覚障害者の方が選挙で投票する際に困っていることでは「候補者の演説の内容がわからない。これが最大の問題だ。」と言います。
また、立候補するときに困ることについて尋ねると「手話通訳が必要だが、そのための経費を自己負担しなければならず、他の候補者に比べて資金準備の面で不利になる。」について挙げています。
続いて、政治家になったときに困ることでは「議会開催中は、斉藤りえ北区議会議員(東京都)のように議会で文字システム導入など配慮がなされるようになったが、それ以外の活動中の手話通訳に関する費用の補償がない。そのため、ほかの議員に比べて情報収集の範囲が狭くなり、不利となる。」とのお話でした。
このように選挙に立候補することも、当選して議員になったあとも不利となり、聴覚障害者の方たちが政治参加する道を阻む要因となっています。聴覚障害者の方たちに限った話ではありませんが、これではますます政治家の道を目指すのは一握りの人たちばかりになってしまいます。選挙制度の在り方もそうですが、誰でも政治家にチャレンジできる環境整備をしていく必要がありそうです。また、政策が当事者へ伝わることによって投票率が上がるかもしれないし、当事者によるロビイング(政策提言)も活発化するかもしれません。
私は政治の世界こそ多様な人材を揃えていく必要があると考えています。「投票率あげよう!」「選挙に立候補できる年齢の引き下げを!」などといろいろ賑わっていますが、多様な人たちが政治参加できる環境を整えていくことが急務なのではないでしょうか。