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【琉球ゴールデンキングス】21点差を逆転しての勝利はディフェンスの機動力を生かせる選手を起用した成果

青木崇Basketball Writer
ディフェンスの奮闘から見事な逆転勝利を手にした琉球 (C)B.LEAGUE

「今日の試合はブースターさんに勝たせてもらったようなもの」

 琉球ゴールンデンキングスの桶谷大コーチは、沖縄アリーナに駆けつけた8020人の大半を占めるファンのサポートに対して感謝の言葉を口にした。島根スサノオマジックと対戦するセミファイナルのゲーム1、琉球は1Qに21点のリードを奪われながらも、94対85のスコアで劇的な逆転勝利をゲット。団結の力というチームのスローガンに相応しい雰囲気を作り出すホームコート・アドバンテージは、チーム史上初のファイナル進出に王手をかける要因になった。

 島根は1Q早々から安藤誓哉の2本連続をきっかけに、3Pショットを高確率で決めていく。白濱僚祐が右コーナー、リード・トラビスがアルバルク東京との第3戦を思い起こさせるようなピック&ポップからそれぞれ2本決めるなど、1Qだけで11本中8本成功と完全に火がついた状態に突入していた。

 しかし、琉球はコー・フリッピンと並里成の連続3Pを含む8連続得点をきっかけに、1Q終盤以降から徐々に反撃を開始。ディフェンスにも少しずつ粘り強さが出始めると、島根が得意とするピック&ロールからの3Pショットは、2Q以降リングを弾いてしまう回数が増えていく。桶谷コーチは試合をこう振り返る。

「全体的に安藤と金丸(晃輔)をゲームを通して抑えられたところはかなり大きかったと思います。そこを抑えたくて、ちょっとヘルプに行ける(選手の)ところから1Qにかなりやられてしまいました。チームの中で冷静にやっている子とパニックになっている子がいたために歯止めが効かなくなってしまい、オフェンスもあまりできなくなりました。特に(岸本)隆一が1Qずっと出ているのに、ボールは動いていないので触れないという状態がありました。そこでイニシアチブを取られてしまってしんどい展開になってしまいましたが、2Q以降はみんなが我慢しながらちょっとずつ返していけたかなと思います」

 2Q以降の30分間、島根の3Pショットは18本中3本しか決まらなかった。そのうちの2本はこの試合で17点とステップアップした白濱で、安藤と金丸は成功数がいずれも0本。「普段入っていない選手がビッグショットを決めるなど、1Qでの島根は火がついたように絶好調でした。それでも我々にはいいゲームプランがありましたので、我慢強くやり続けようと心掛けました」と話すアレン・ダーラム(198cm)と、ドウェイン・エバンス(201cm)という機動力のある外国籍選手を起用する時間を長くしたことにより、後半の琉球はピック&ロールのディフェンスとローテーションが格段に向上。このアジャストこそが琉球の逆転劇を生んだ最大の理由であり、桶谷コーチは頭を悩ませながらも、勝つための最善策として小さなフロントラインで戦うことを決断したのだ。その理由については次のように説明する。

「ピック&ポップでジャックのところを狙われているというのがあって、そこは自分たちの弱点でもあります。そこをスウィッチするのか、レイト・コンテストにするのか、レイト・スウィッチにするのかをこの間からずっとやっているのですが、ジャックは相手選手をパウンディング(繰り返し激しくコンタクトすること)できる(利)点があります。どっちを取るかというところで悩むのですが、パウンディングしたおかげでニカ(ウィリアムズ)がファウルアウトになったのはよかったところ。明日はその答えをしっかり出すことです。人を変えるだけではなく、ジャックがそれをやり切ることは、次のゲームで重要だと思っています。今日は人を変えることで、そこ(ディフェンスの問題)を解決しようとしたのはまちがいないです」

 4Qの島根は、個の力で局面を打開できるペリン・ビュフォードがチームを牽引しようと奮闘し、チーム最多となる27点を記録。しかし、チームの持ち味である活発なボールムーブからリングにアタックするといったオフェンスの連動性をなかなか出せないまま、時間だけが経過していった。

「僕たちのオフェンスが単調になってしまったので、なかなかいい形で(ショットが)打てなかったのはあります。それ以上に琉球のポイントを押さえたディフェンスの激しさとエナジーがあったから、こういう結果になってしまったのだと思います」と白濱が語ったように、4Qの島根はオフェンスの遂行力が徐々に低下。また、安藤が1Q序盤に決めた3Pショット2本以外は無得点に終わったことも、島根にとっては大きな誤算だった。

 琉球のディフェンスでこの日最高のハイライトは、3Q4分24秒に起きたターンオーバーからビュフォードがあっさりダンクでフィニッシュしそうな局面で、岸本があきらめずに追いかけてスティールしたハッスルプレー。直後のオフェンスでこの試合21点と好調だった今村佳太が3Pショットを決めるまでのシーンは、劇的な逆転劇を生むきっかけになったと言ってもいい。

 オフェンスに目を向けると、琉球が3Pショットで島根を1本上回る12本成功させたことは見逃せない。4Q1分32秒に岸本が左コーナーから決めた3Pショットは、逆転勝利を決定的にするもの。島根のポール・ヘナレコーチは「最大の違いは、彼らが48%の確率で3Pを決めたことでした。岸本、今村、並里のトータルが18本中11本成功なので、彼らが素晴らしい仕事をした」と、高確率で成功させた相手を称賛するしかなかった。

 8000人を超えるファンの前で琉球がディフェンスで主導権を握ってファイナル進出を決めるのか、それとも島根が爆発力のあるオフェンスが噛み合って雪辱するのか? 22日夜に行われるゲーム2は、ゲーム1以上に激しい攻防が最後まで展開されるに違いない。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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