どうなる新「Vポイント」 名称やデータ連携について聞いてみた
6月13日、CCCの「Tポイント」と三井住友の「Vポイント」を統合し、新たに「Vポイント」という名称で2024年春に提供開始することが発表されました。
長く親しまれてきたTポイントがなくなるという驚きとともに、三井住友カードの利用者からはデータ連携について不安の声が上がっています。いま分かっている範囲で詳細を聞いてみました。
内部的にはVポイントとTポイントが共存か
CCCと三井住友の両グループは2022年10月に資本・業務提携で基本合意。VポイントとTポイントを統合した新たなポイントブランドを創出すると発表しました。
そして今回、出てきたのが新しい「Vポイント」です。名称こそVポイントとなったものの、ロゴの色合いはTポイントを彷彿とさせるもので、「青と黄色のVポイント」と銘打っています。
利用者はTポイントのほうが多く、アクティブなユーザー数はTポイントの7000万人に対し、Vポイントは1600万人です。規模の小さいVポイントに名称を統一する理由について、CCCの増田宗昭会長は「全世界のVisa加盟店で貯まる、使える点を伝えたかった」と語っています。
昨今の競争環境の変化によりTポイントの価値が相対的に下がったことを増田氏は認めつつも、激化する経済圏争いについては「企業のエゴではないか」と否定的に語り、既存の経済圏とは異なる価値を作っていく意向を示しています。
なお、以前には「VTポイント」という商標を出願して話題になったことがありました。その経緯については「あらゆる可能性を鑑みて出願したが、両社での協議を経てVポイントになった」(CCCMK広報)と説明しています。
一方、三井住友カードの大西幸彦社長は、他社のポイントは使える場所や期限を気にすることが多く、「企業に操られている感」がストレスになると指摘。VポイントはVisaの加盟店ならどこでも使えるシンプルさを強調しました。有効期限はTポイントと同じ「最終利用日から1年後」に変わっています。
Tポイント以外の名称について、CCCMK広報によれば「Tカード」は「Vカード」に名称を変更。カードデザインは新ロゴを踏まえて調整中で、その他の「T」がつくサービスは協議中としています。Tポイントに関する店頭の掲示物などは、随時変更をお願いしていくとのことです。
ただ、両社の発表を詳しく見ていくと、今回の統合をもってTポイントが完全に「消滅」するわけではないことが分かります。
たしかに2024年春にはTポイントの名称が「Vポイント」になり、VポイントとTポイントをまとめる機能が提供されるものの、「利用者自身でまとめる操作をしない限り、両ポイントが勝手に統合されることはない」(CCCMK広報、三井住友カード広報)としています。
そのため、内部的にはVポイントとTポイントが残る形になるようです。Tポイント加盟店でTカード(Vカード)を提示すれば、現金払いなどの支払い手段でもポイントは貯まります。
Tポイントから他のポイントに交換したり、他のポイントからTポイントに交換したりするサービスについても、従来通り提供予定とのことです。
2024年春時点では両ポイントのアプリも残る予定となっており、「Vポイントアプリ」にはTポイントの機能が、「Tポイントアプリ」にはVポイントの機能が加わることで使い勝手が強化される予定です。
利用者にはどういうメリットがあるのでしょうか。最も分かりやすいのがポイント還元率の上乗せです。Tポイント加盟店で三井住友カードを利用すると、条件を満たすことで0.5%〜1%を上乗せし、合計1.5%〜2%還元になるという施策が用意されるそうです。
これまでにない新機能の構想もあります。ポイントカードの提示と決済を1回で済ませる「ワンオペレーション」機能では、支払いの前にポイントカードを出す必要がなくなり、利用者にとっても加盟店にとっても時短になります。
ポイントカードを提示しなかった場合でも後からポイントを貯められる「あとたま」も、ポイント利用者と加盟店の両方に嬉しい機能になりそうです。
詳細は検討中としており、実現はまだ先になりそうですが、支払い時の二度手間やポイントカードの出し忘れはポイント利用者にとって定番の悩みといえるだけに、期待したいところです。
データ連携は「事前に同意を取る」
VポイントとTポイントの統合にあたって、利用者から不安の声が上がっていたのがデータ連携の部分です。
CCCMKによるプレゼンでは、これまで扱ってきたTポイントによる7兆円規模の利用データに、三井住友カードによる国内外30兆円規模の利用データを組み合わせることで、マーケティングに活用するという構想が語られました。
この点についてCCCMKと三井住友カードに確認したところ、「利用者の同意がない限り、三井住友カード利用者のデータがCCCMKに渡ることはない」(両社広報)とのこと。どのようにして同意を取るかは、あらためて発表するとしています。
また、CCCMKでは情報がどのような目的で使われるか消費者が確認できるプライバシーセンターを立ち上げ、第三者によるアドバイザリーボードも設置するなど、プライバシー保護を最優先する方針を表明しています。
これらを踏まえた上でポイント統合をするべきかどうか、ポイント還元率の上乗せなどのメリットと天秤にかけながら、考えることになりそうです。