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「与党代表を暗殺して北朝鮮の仕業に見せかける」「米軍を殺害して、米軍に北朝鮮を爆撃させる」は本当!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
国会で証言する放送人の金於俊氏(SBSからのキャプチャー)

 「SBS」や「TBS」、「MBC」などのテレビで自身の冠番組を持って政府を批判していた放送人の金於俊(キム・オジュン)氏が今日(13日)国会科学技術放送通信委員会に戒厳令関連の参考人として出席し、爆弾発言を行い、政界に衝撃を与えている。

 戒厳軍の14人の逮捕リストの中に与党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表と野党第1党の李在明(イ・ジェミョン)代表らと共に名前が挙がっていた金氏が「(戒厳令軍の)暗殺組が韓東勲代表を逮捕、移送中に暗殺し、北朝鮮の仕業による計画をしていた」と暴露したからだ。

 逮捕組の存在はすでに戒厳令で動員された指揮官らの証言で明らかになっているが、金氏は逮捕組ではなく、「暗殺組」が暗躍していたとして暗殺組の任務について以下のように証言していた。

 1.逮捕し、移送中の韓東勲代表を殺害し、北朝鮮の仕業に見せかける。

 2.「(暗殺組は)私とチョ・グック(祖国革新党代表)とヤン・ジョンチョル(元民主研究院長)の3人を逮捕、護送する部隊を襲撃する。特定の場所に北朝鮮の軍服を埋めて置き、一定の時期になったら(掘り出し)、従北勢力を救出しようとした北朝鮮軍の仕業と見せかける。

 3.米軍人を数人殺害し、米軍の北朝鮮爆撃を誘導する。

 4.北朝鮮の無人機に北朝鮮製武器を搭載し、使用する。

 5.金建希夫人が引退した機関要員(OB)に何かを督促していた。その中身は不明だ。

 タレコミにより戒厳令発令と同時にいち早く避難することができた金氏は以上の情報の「ウラはまだ取れていない」と断ったうえで、国防委員会に属している元陸軍大将の金炳周(キム・ビョンジュ)民主党議員ら2人の国会議員にこの情報を伝え、「今、調べてもらっているところである」と報告していた。

 戒厳令の計画を練った金龍顯(キム・ヨンヒョン)前国防相が戒厳令布告の口実をつくるため今回出動させた側近の呂寅兄(ヨ・インヒョン)国軍防諜司令官に指示し、10月に無人機を再三、平壌上空に飛ばし、北朝鮮を挑発していたことは周知の事実である。

 金前国防長官は無人機が平壌に飛来し、金総書記の執務室のある労働党庁舎の上空から金総書記を扱き下ろすビラを散布すれば、北朝鮮は過去の例からして間違いなく、対抗措置を取るか、あるいは韓国が実効支配しているNLL上の島に砲弾を撃ち込んでくるとのシナリオを描き、呂防諜司令官に無人機を平壌に飛ばすように命じたものと推察される。

 実際にかつて金正日(キム・ジョンイル)時代の2009年に脱北団体の対北ビラ散布に対して北朝鮮は延坪島を砲撃したことがあった。また、金正恩政権下でも2014年に京畿道蓮川からのビラに向け対空機関銃を10数発発射したこともあった。

 驚いたことに金前国防相は戒厳令を発令する1週間前には軍合同参謀本部を訪れ、「なぜ、北朝鮮のビラ風船に警告射撃をしないのか、風船を飛ばしている原点(地点)をなぜ攻撃しないのか」と、金明秀(キム・ミョンス)同本部議長を叱責していたとも言われている。金議長は「そうした指示を受けたことはない」と否定しているが、停戦協定違反に該当することや統帥権を持っている駐韓米韓との関係もあって軍トップとしてこうした情報を肯定するわけにはいかない事情がある。

 しかし、金於俊氏のこの国会証言が事実ならば、北朝鮮はさておき、米国は黙っていないであろう。ホワイトハウスや国務省など米政府高官らが尹大統領の非常戒厳宣布を「深刻な誤判断」だと批判したのも頷ける。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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