「恋はつづくよどこまでも」「真犯人フラグ」など話題ドラマで圧倒的な存在感を出したモデル・女優の香里奈さん。これまで続けてきたモデル・女優での活躍の裏側で、ブランドプロデュースやサスティナブル・SDGs領域まで活動の幅を広げている。新時代と言われるAfterコロナはまさにVUCA時代であり、働く価値観や生き方にも大きな変化が起こる。そんな中、香里奈さんが踏み出したパラレルキャリアは新境地を切り開き、自分らしい人生を楽しむ一歩となっている。

どちらかと言えば、仕事は楽しめていない

2017年米ギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査で日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかおらず、米国32%と比べて大幅に低く調査した139か国中132位と最下位クラスだったことに加えて、コロナ禍で世の中全体が働くことや生きることへの価値観を大きく変えている実態を香里奈さんに打ち込んでみた。

――香里奈さんはその6%に入っていますか?

いや、正直私は6%には入っていないと思います。仕事が楽しくないという表現ではないのですが、10代からお仕事をさせて頂いていて、その頃は未知の世界・未来に繋がる道という視点でお仕事を捉えていたのでワクワクしながら習い事感覚で楽しめていました。

20代はとにかく忙しくてプライベートも少なくこなしている感覚でしたが結局仕事は楽しかったので続けられていました。でも30代になりそれまでのリズムでは限界が来ると感じていて、女性としての生き方、体力・生活リズムなどと素直に向き合ってみると、自分らしく、自分のペースで1歩1歩に集中して取り組むことが今は大事だということがわかりました。

振り返ってみると、以前はお仕事のために生きていたけど今は生活するためにお仕事をするというイメージです。だから、お仕事を楽しんでいるとは言えないのです。でも、私はモノを作ることが大好きでモデルや女優のお仕事はいろいろな役割の方々と一緒に作品を作るので好きをお仕事にできています。

日々スケジュールも違う毎日が新鮮で楽しめているという視点で言えば、お仕事を通じて日々を充実させて頂いています。

この2年間で自分と向き合えた

――コロナ禍で何か変わったことはありますか。

新型コロナウイルスの影響がここまで大きくなるとは思っていなかったのですが、お仕事はそもそも変化し続けるものだと思っているので特別コロナで大きく変わった感覚はありません。生活面ではずっとお家にいたので家族でもある愛犬と過ごす時間が増えたことは大きな変化です。

もちろんMTGがオンラインになったりと時間の使い方が変わったこともありますが、考え深いのはコロナ禍で本当に大事なモノ・ヒトがわかったような気がしていますね、良い意味で無駄に気付き自分で自分を変革できたことが多いのでこの2年間は私にとっては向き合えた時間です。

――ここ最近は特に新境地に挑んでいるように感じますが。

大阪王将「冷凍餃子」のCM反響もあり、まわりからは新境地、新たな一面、キャラ変など言われることが多いですが、もともと自分の中にあるキャラクターが表にでているだけなので自然な自分です。

たしかに私は昔から見た目が怖い、話しかけづらい、眠そう、怒られそうとか言われるのですが、実は昔から何ひとつ変わっていなくて、世間の皆様に知られていなかった自分を表現できたという捉え方をしています。

また、今出演させて頂いている「真犯人フラグ」では、役作りの為にロングヘアを約30cm以上切り、これまで演じたことのない狂気的な役柄にもチャレンジさせていただいています。

失敗しても努力して向き合って経験を積めばいい

――香里奈さんにとっての成長ってなんでしょうか。

成長のモノサシって中々難しいですが、お仕事を20年以上やらせて頂いているので昔に比べてできることが増えていたり、先のことが読めるようになっていたりと経験の積み重ねでお仕事をさせて頂いているので、成長って「あの時わからなかった、できなかったことを後になって自然に理解してできるようになった自分に気付くこと」だと思います。だから、新しいことに挑戦してわからないことがあっても失敗しても、努力して向き合って経験を積んでいつかできるようになれば「成長」するということだと思います。

業種に拘らないマルチな活動で自分ブランドを作る

――パラレルキャリアに繋がったきっかけは。

時代の流れが大きく影響していて、モデルはモデルのように業種の垣根があった時代から最近は業種に拘らないマルチな活動が求められていると思います。モデルの世界に女優さんやタレントさんも入ってくる時代であり、メディアの多様化どころか自分自身がメディアになれる時代です。

香里奈=モデル・女優ではなく、香里奈というブランドをどうやって輝かせていくのかを考えていく時代に、自分には何ができるのかを考えてみると、家族でもある愛犬が亡くなったことがきっかけで老犬の介護に必要なコトや飼い主さんの気持ちに寄り添ったコトで自分に何かできることがあればと思うようになっていました。そこに偶然頂いたお仕事のご相談がペット用品に関わることでした。

――今後もペット用品のブランドプロデュ―スはしていくのか。

はい、やりたいと思っています。亡くなってしまった母親犬もみじの介護をしたことで分かったことも多く、犬用のグッズは比較的若い犬向けが多く、充実もしています。一方で老犬や介護が必要になった時のアイテムは少なく、値段も高く飼い主にとっての現実は辛いものです。だからこそ私の経験や家族である愛犬の為にと考えている方々の声をカタチにできることに価値を感じていますのでチャレンジしていきたいと考えています。

まずはSDGsという言葉だけでも知ってもらえれば

――SDGsにサスティナブルと幅が広がっているのはなぜ。

東京ガールズコレクションのSDGs推進ステージに出演させて頂いた時にSDGsという言葉を理解したことがきっかけで、まずは10代20代の若い世代にSDGsという言葉だけでも覚えてもらえればと活動していましたが、今では新しいことに対して少しでも自分を媒体としていろいろな方々に価値を届けられたらと意識しています。「あ、そう言えば香里奈がSDGs、サスティナブルとか言っていたな~」というレベルからでも良いと思いますし、私に今できる価値ってなんだろうと考えた時に知るきっかけを発信することに辿り着きました。

香里奈さんがSDGsの活動を始めるキッカケとなった「東京ガールズコレクション」のステージ
香里奈さんがSDGsの活動を始めるキッカケとなった「東京ガールズコレクション」のステージ

またファッション誌「GINGER」内で、今できることをテーマに連載もさせて頂いています。実際に、ごみ処理場に行ったり、フードロスと向き合ったり、自転車シェアリングや電気自動車を体感したり、脱プラスティックを取材したりと、学んだことを記事にするようにしています。

教える立場ではなく一緒に学んでいくスタイルで、お仕事を通じてまだまだ学ばせてもらっている状況です。自分の中でも変化が出ているのはTVや雑誌・ネットでSDGsやサスティナブル領域に目が向くようになり、アンテナが変われば行動も変わるんだなと感じました。

そして、そこから新しいアイディアも出せるようになったので私にとって大きな収穫です。

実は街で人間観察を良くやっちゃいます。

――香里奈さんはクリエイター気質なところがありますね。

確かに撮影現場でもスタッフさんのカメラや編集技術の方に興味がありますね。あとは同業よりも異業種の方がお話しになる内容にはいつも新しい学びや発見があるので好きです。

意外とひとりで過ごすことが好きなので、ひとりでご飯を食べている時や電車に乗っている時にサラリーマンや女子高生の話しを聴いちゃったりしています。いわゆる人間観察が好きで、そこでリアルを感じてお仕事に活かすことも多々あります。

コロナ禍で変わった「今」の捉え方

――今後のお仕事やキャリアの方向性はどう考えていますか。

元々、大きな夢を持ったり先をイメージして行動するタイプではないのですが、コロナ禍でより目線の落とし方は変わったと思います。1,2年先に大きな目標を決めても、何らかの影響でシャットダウンされてしまう可能性のある世の中だと、私は心が折れてしまうので目の前のコトに向き合って頑張る方が健康的な気がしています。それを繰り返してステージを自分らしく上げていくイメージです。

モデル・女優、プロデュース業以外にも自分にできることがあれば、今後も挑戦したいと考えています。自分に今なにができるのか、背伸びすることなく頂いたオファーの中に自分ができることの真実があると信じて柔軟に動けるようにしていたいです。

変わり方がわからない

常にチャレンジを続けてきたので、その繰り返しが結果的に「新しいキャラクター」と巡り合い、それが重なって新しい業種のお仕事に繋がっています。

意識して新境地を開拓しているわけでもないのですが、チャレンジを続けるのは今の時代には大事なことだと思うので、いつ仕事がなくなるかもしれないという危機感の中で自分を変えずに真っ直ぐ進みたいなと思います。

そもそも私は自分の変わり方がわからないので自分らしくを大事にしたいです。

香里奈さん×はたらクリエイティブディレクター佐藤裕(撮影:中山友莉菜)
香里奈さん×はたらクリエイティブディレクター佐藤裕(撮影:中山友莉菜)

素直で正直、とにかく人懐っこい人柄に驚く

今回の取材でまず驚いたのは香里奈さんの人懐っこい性格。どんな質問にも飾らない、素直で正直に答えるスタンスはテレビを通じてのイメージと大きくギャップがあった。本人にもそのギャップを伝えたが、むしろ本当の自分を知られることを目的としていない、そういうお仕事なのでミステリアスで良いと思っていると楽しそうに語ってくれる。

自分では意図的ではないというものの、変化の激しい・先の見えない世の中で大きな夢や目標を持って進むよりも、目の前にある自分にできることに向き合って、努力して積み上げる。そこで見えた景色で次のステップをゆっくり、自分らしく探していくスタイルは、Afterコロナに必要なキャリア観でもある。

家族や友人、犬との関わりを聞いていると本質としっかり向き合っていることが良く分かる。周囲に流されるのではなく、何が本当に正しいのかを見極めた上で自分らしくを貫くことで一歩ずつ前に進む。その為にも自分のキャリアの幅を広げて視野を広げようとしている香里奈さんの考えは、コロナ禍で本当に厳しい環境に置かれている若者のヒントになる。

この先も香里奈さんの自分らしい歩み方に注目したい。まだまだ、世の中に新しい価値を発信してくれるはずだ。

はたらくを楽しもう。

【香里奈(かりな)】

1984年2月21日、名古屋市生まれ。

モデルとして芸能界デビュー。00年から14年まで「Ray」専属モデル、09年から「GINGER」レギュラーモデル。01年にドラマ「カバチタレ!」(フジテレビ系)で女優デビュー。20年1月期放送のドラマ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)、21年10月/22年1月期「真犯人フラグ」(日本テレビ系)への出演が話題を集めた。近年ではモデル・女優業以外にペット用品ブランド「BESTIES」のブランドプロデュース、社会貢献活動なども幅広く展開。