女芸人・友近に聞く、新時代に求められる「若者の力」と「自分の見つけ方」

自身のキャリアを丁寧に振り返りながら語る芸人・友近(撮影:干田 哲平)

今、「若者の学生時代の学びと能力開発」を語る上で注目したいのが『女芸人・友近』だ。「売れる営業になりそう」「天才だと思う女性芸人」「トークが上手い芸人」などのランキングで1位に輝くなどピン芸人としての活躍はもちろんだが、彼女が座長を務める単独ライブでは、バッファロー吾郎Aさん、秋山竜次さん(ロバート)、ゆりやんレトリィバァといった個性豊かな芸人を見事に束ねて舞台の成功を収めている。

その姿は、個人としてキャリアを築きプロジェクトの成功に向けて組織を編成する、現代のビジネスパーソンと重なる部分が多い。その気づきから、今回は2年間テレビ番組をご一緒させて頂いていた友近さんをゲストに新時代の「はたらく」に必要な“人を巻き込む力”や“新しい事への挑戦”についてお話を伺った。

「やりたい」という気持ちに対して、常に素直でありたい

佐藤裕:まずは、友近さんの“仕事”のルーツからお話を伺いたいのですが、芸人を志したきっかけを教えて下さい。

友近:小学生の頃、演芸界は第一次漫才ブームと呼ばれる時代で、ツービートさんや、ザ・ぼんちさん、太平サブロー・シローさんが舞台で活躍し、バラエティー番組では「オレたちひょうきん族」が放送されていました。それをテレビで観ながら、ぼんやりと「この仲間に入りたい」と思っていましたね。

佐藤裕:かなり早い時期からお笑いの道へ進みたいと思っていたんですね。

友近:そうですね。ただ、どうすれば芸人になれるか、はっきりと分からなくて。歌うことも好きだったので、中学生の頃は、音楽関連のオーディションに応募したり、地元のカラオケ大会に参加したり、という感じでした。

佐藤裕:手探りながらも、将来に向かって積極的に動いていたのですね。ちなみに、当時のオーディションはどのような結果だったのですか?

友近: 13歳のときに、全国ネットの素人参加型の歌番組があったんです。その大会の司会が、なんと憧れの太平サブロー・シローさん。歌う前のフリートークで、板東英二さんや、幸田シャーミンさんなどのモノマネを披露したんです。そこで、舞台で人を笑顔にする喜びのような感覚を初めて味わいました。

佐藤裕:当時から、モノマネのレパートリーがあったんですね!それで吉本興業に入ることになったんですか?

友近:いえ、吉本興業の養成所に入るのはまだ先です。カラオケ大会に参加するなどの活動が、たまたま地元テレビ局の方の目に止まって。大学に通いながら愛媛県のローカル番組のレポーターとして芸能活動をスタートしました。その後、大学を卒業して、旅館に仲居として就職したんです。

佐藤裕:また、お笑いとは遠い世界ですね。

友近:その時、テレビで放送されていた「湯けむり殺人事件」のようなサスペンスドラマが好きで、仲居も面白そうな仕事だな、と思って(笑)。

佐藤裕:その頃から好奇心旺盛で、自分の気持ちに対して素直に行動するタイプだったんですね。

友近:興味を持ったことは全部やりたいんです。仲居をしながらも、テレビ番組のレポーターは並行してやっていて。ただ、情報を伝える役割のレポーターにおいては、私が見せるお笑い的な要素は必要ないと、カットされることは多かったですね。それで、動画編集なしで人を笑顔にできる舞台で勝負したいという気持ちが、日に日に大きくなっていきましたね。

佐藤裕:それで、NSC(吉本興業の養成所)に通い始めたんですね。

友近:そうなんです。

佐藤裕:務めていた職場を辞めて、先の見えない世界に飛び込むのは、怖さを伴うチャレンジだと思うのですが、その葛藤はありませんでしたか?

友近:それが、全くなくて。今もなんですが、現状が楽しい環境でも、そこで満足しちゃいけない、何かを探さなきゃ、という思いが常にあります。

佐藤裕:強いですね。経験したことのないことに対して、普通なら、“失敗するかも”という怖さや、世間の目が気になりますよね…。

友近:それよりも、“やりたい”という思いが勝って、まったく気にしませんでした。芸人としてデビューしてから、鳴かず飛ばずの時期もありましたが、自分が面白いと思うネタを貫いて来れたのも、この性格だったからかもしれませんね。

友近×はたらクリエイティブディレクター佐藤 裕(撮影:干田哲平)
友近×はたらクリエイティブディレクター佐藤 裕(撮影:干田哲平)

自分の興味を追及して、輝く場所に出合えるかが、成功の秘訣

佐藤裕:私も何度か、友近さんの舞台を観劇しましたが、いつも着眼点が素晴らしいですよね。まわりにいる“ユニークな人”を、常に観察していることが、よく分かります。“これ笑いになる”というヒラメキは、どこから生まれるんですか?

友近:よく、作家さんや芸人仲間からも、同じことを聞かれるんですが、“ネタ作りのルールや方程式みたいなものはないんですよね。もう、感覚と瞬発力だけ。例えば、友人の結婚式に行くと、新婦の友人代表として女性3~4人がスピーチするでしょ。それを多くの人は、なんの違和感もなく聞いているけど、私は身内ノリでキャッキャッと言っている光景がなんかおかしくて…。ちょっと意地悪な目線かもしれません。

佐藤裕:そういった実体験を通じて、面白いって思った人物を自身に憑依させる。友近さんの“お笑い”を観ていると、そんな感じがします。

友近:おかしな人に遭遇すると、一旦その人になりきってみる。それで、ブツブツと独り言を言っていると、思いもよらぬセリフが不思議と出てきて、それを書き留めていった結果、一本のネタができることがよくあります。また、ある時は、自分のヒールで地面を蹴ったら“カーン”って気持ちよく響いたことが気になって。このハプニングをどうにか面白くできないかと考えたのが、扇子で釈台を叩く講談と組み合わせた “ヒール講談”というネタです。

佐藤裕:その“気づき”を、その場で終わりにせず、きちんとアウトプットできるところにビジネスパーソンにも通じるヒラメキがあるように感じます。

友近:きちんと、仕事にする(ネタにする)には、インターネットやYouTubeで下調べしたり、情報収集も欠かしません。

佐藤裕:そういった積み重ねがあるから、どのネタもスベり知らずなんですね。

友近:ただ、“笑い”は会場のお客さんと作り上げる部分も大きいので、意外と相性もあるんですよ。

佐藤裕:友近さんも、スベることがあるんですか?

友近:もちろんです。デビュー時に、女子高生らお客さんが芸人のネタを審査するというのが、当時の吉本興業の恒例だったんです。彼女たちの前で金融業のネタをやったら、まったく笑いが起こらなかったということもあります。そりゃ共感せーへんやろって分かっていたんですけどね。全員笑かすって本当に難しいこと。ただ、舞台袖にいた芸人の先輩方が、“コイツ面白い”って言ってくれて、バッファロー吾郎さんが主催する舞台に私を立たせてくれて、同じネタでめちゃくちゃウケたんですよ。

佐藤裕:そこで、自分を生かす主戦場を見つけたんですね。

友近:そうなんです。ここのお客さんは、こんなに理解してくれるの!? スタンスを変えずに私の“笑い”を貫いてきて本当に良かったと思えたんです。

佐藤裕:これは、きっと一般企業の方や、これから就職する学生にも“ためになる”考え方ですね。

集団コントをする場合は自分の立場以上に、まわりの能力やキャラが生きるかをいちばんに考える

友近:目的意識を持っていれば、遠回りして無駄なことはひとつもないと思います。私自身、レポーター、仲居を経験して、芸人という働き場所を見つけました。'''職業を絞りすぎると、自分の能力を活かし、楽しめる場所に出合う機会を狭めてしまう。

'''

佐藤裕:それは、キャリアデザインの考え方と同じですね。

友近:例えば、“人と接するのが好き”という学生さんがいたなら、飲食業もそうだし、たくさんの人を取材するライターや、裕さんのような仕事、講師という道もあるし、選択肢を広げてチャレンジすればいい。その経験のなかで、“この職業が向いてるのかも”と自分で気づけたときに喜びを感じられるんじゃないかな。

佐藤裕:社会人経験のある友近さんの言葉だから、説得力がありますね。そうやって、自分でより活躍できる場を見つけていき、さらに大きなことを成し遂げるというステップを着実に踏んでいるんですね。そんな中で、友近さんが心がけていることはありますか?

友近:そうですね。例えば、複数の芸人と大きな笑いを生むコントでは、いっしょに楽しみたいと思える人と舞台に立っています。そして、自分が脚本を手掛ける時は、自分の立場以上に、出演者にどんな人物を演じてもらうことが、その人の能力やキャラクターが生きるか、それをいちばんに考える。

佐藤裕:それは民間企業がプロジェクトに取り組むときにも必要な能力ですね。今は、リーダーシップの概念が変わってきていて、いわゆるスティーブ・ジョブズのような旗振り役ではなく、自分がやりたい事を進めるために“人を巻き込む力”が注目されていますからね。

友近:そうなんですね。

佐藤裕:他にも、まわりの演者との絡み方や、仕事の取り組みで、意識していることはありますか?

友近:私がMCを務めたABCテレビの番組「ザッツ・エンカ・テインメント~ちょっと唄っていいかしら?」(2018年に放送終了)では、そうそうたる顔ぶれの演歌歌手をゲストにお迎えしました。演歌のみなさまのフィールドではないジャンルのバラエティー番組にご出演いただくので、できるだけ喋りやすい空気を作って、楽しんで帰ってもらいたいという思いで取り組んでいました。

佐藤裕:具体的に、どうやって居心地の良い空気作りをしたんですか?

友近:これは私の性格ですが、本番でも、カメラが止まってからも、喋り続けるようにしています。

佐藤裕:いかなる時でもコミュニケーションを欠かさないということですね。それって、苦じゃないですか?

友近:まったく苦じゃないんですよ。人が好きっていうのもあるからずっと喋っていたいんですよね。それで、またカメラがまわるとお互いにほぐれた関係でコミュニケーションが取れる。

佐藤裕:自然体に近い状態でコミュニケーションが取れるようにしていくことで、人間関係を築いてきたんですね。

友近:遠慮しない関係が、お互いの能力を発揮する上では必要です。あとは、常識を持って接することが大事。

佐藤裕:なるほど、その距離が、良い信頼関係を築くということですね。

友近:今、一緒にやってる芸人やスタッフさんは、デリカシーのある方ばかりで、人の気持ちが分かる喋り方をする。そういう人ならついて行こうと思うし、“人を巻き込む力”がある人って、きっとそういう人なんだと思います。

キャリアや今の仕事、仲間について語る友近(撮影:干田哲平)
キャリアや今の仕事、仲間について語る友近(撮影:干田哲平)

「興味の芽生え」を絶やさないことが、何事も原動力になる

佐藤裕:今後、やってみたいことはありますか?

友近:以前、NHKの番組「課外授業 ようこそ先輩」に出演したときに、愛媛の小学校で「“オモシロイ”に会いに行こう」というテーマで授業をさせていただいたんですが、子供や大学生に向けた授業を、またしてみたいです。

佐藤裕:興味深いです。ちなみに、どんな番組内容だったんですか?

友近:子供たちに、自分の街で気になる人を見つけてもらって、どこが面白いと感じたか発表してもらうという内容でした。

佐藤裕:きっと、感性豊かな意見が出てきたでしょうね。

友近:それぞれの意見や感想を、文章にするも良し、描写してモノマネするも良し、という発表の形式まで自由にしたので、本当に個性豊かで…。今って、自分だけこんな考えしてたらアカンとか、みんなと合わせようとする子供が多いんちゃうかなと思って、あえて自由にやってもらいました。そこから生まれる、その違いが、人の個性だったり、興味の芽生えだったりすると思うんです。

佐藤裕:良い授業ですね。是非、次は私のプロジェクトに参加する学生を相手に実施していただけませんか。

友近:もちろんです。楽しみにしています。

はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕(撮影:干田哲平)
はたらクリエイティブディレクター 佐藤 裕(撮影:干田哲平)

                         

意識高い系の方がかっこいい時代

ここ数年で若者の中で「意識高い系と思われたくない」という想いが文化になってしまっている。常に周囲に目をやりながら同調して自分の意見さえ丸めてしまう。

ところが、社会では周囲と同調して成果を出すものでもなく、個の自立、意識の高さが勝負になる。つまり、若者は社会に出てこれまでと異なる価値観を持つ必要があり、ここに大きな葛藤が生まれ躓く事が多いのが現状で、早期離職やリアリティ・ショックにも繋がっている。

今回の友近さんの生き方、想いの貫き、新しいことへの興味の持ち方はまさに新しい時代に若者が意識をすべきポイントであろう。

他人と比較をして自分を丸めるのではなく、自分の興味のために工夫してアクションして振り返る。時に厳しい環境だとしてもそこから生まれる新しい可能性を常に意識する。

そして、一緒にはたらく仲間との関係をどのように意識するか。自分なりの解をしっかり持って貫く。

はたらく環境は激変していますし、今回のコロナショックのように何が起こるか分からない時代だからこそ、これからの若者は未来志向を持って自分らしい「場所」を見つける為に多くの経験を積み、振り返りの中で自分の方向性を定めることが大切になるのだろう。

はたらくを楽しもう。

友近×はたらクリエイティブディレクター佐藤 裕(撮影:干田 哲平)
友近×はたらクリエイティブディレクター佐藤 裕(撮影:干田 哲平)

友近

1973年生まれ。愛媛県出身。

幼いころからお笑いが好きで、姉とアドリブ芝居や物真似を楽しんでいたのが芸人としての原点。地元テレビ局の番組レポーターとして有名になった後、2000年大阪の吉本総合芸能学院(NSC)に入学。バッファロー吾郎など先輩芸人から注目され、舞台やテレビ番組で活躍。02年「R-1ぐらんぷり」でファイナル進出、03年「第33回上方漫才コンテスト」で優秀賞、「NHK新人演芸大賞」で大賞を受賞する。

物真似をはじめ緻密な人物描写を元に架空のキャラクターを作り出す「憑依芸」を得意とするほか、女優業、舞台など多岐にわたる活動をしている。

佐藤裕

はたらクリエイティブディレクター

若者の“はたらく”に対するワクワクや期待を創造する活動を行う。これまで15万人以上の学生と接点を持ち、年間200本の講演・講義を実施。現在活動はアジア各国での外国人学生の日本就職支援にまで広がり、文部科学省の留学支援プログラム「CAMPUS Asia Program」の外部評価委員に選出され、グローバルでも多くの活動を行っている。2019年2月にはハーバード大学の特別講師を務めた経験を持つ。また、パーソルホールディングス株式会社ではグループ新卒採用統括責任者、パーソルキャリア株式会社 エバンジェリスト、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、デジタルハリウッド大学の非常勤講としての肩書きも持つ。新刊『新しい就活