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令和就活スタート。同時に平成就活の終焉カウントダウンが6月1日からスタートした。

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
平成就活から令和就活へ(写真:アフロ)

昨日6月1日は全国で21就活をターゲットにしたインターンシップのPRイベントが開催されいよいよ大学3年生が「令和就活」をスタートさせた。一方で2020年4月入社を目指す就職活動の選考解禁日ということでも話題となった。中でも選考解禁日にすでに内定を持っている学生は51.1%(ディスコ社調べ)と採用の早期化が色濃くなっている。また選考解禁日に「面接が5分で終わってすぐに内定が出た」という学生の声も珍しくない。つまり企業側も選考解禁日に合わせて「面接ではなく面談」を繰り返し一定レベルの学生評価をして6月1日を迎えている。まさに就活ルールの形骸化である。

内定率よりも選考を受けている実態に注目

実態としては経団連に加盟していない企業が示されたルールに縛られる必要はないため、売り手市場を背景に採用活動の早期化を加速させている。当然、学生もその温度感を捉えて活動の早期化となっている。5月の内定率にフォーカスされるケースが多いが、内定を保持しているか?ではなく内定獲得を目指す活動をしているか?がポイントであろう。感覚的には内定保持は5割よりはもっと高く、内定獲得を目指す、つまり6月1日前に本格的に企業の採用選考を受けているという意味ではさらに高いはずである。

4月、5月で北海道、東京、名古屋、大阪、広島、福岡で就活生にインタビューをして感じるのは多少のスピード感の違いはあるが昨年同時期と比較して内定保持率や活動が本格化するタイミングとしては早い。

平成の就職活動で変わらなかったもの

21就活から就活ルールが廃止され、新しい形として令和就活がスタートする。平成就活については結果課題とされていたミスマッチ(3年3割問題)の改善には至らなかったと言える。入社後に感じる「リアリティショック」は約8割(パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」)というデータが最近取れているように企業の採用戦略が進化する中、学生の就活は大きく変わらなかった。

いよいよ令和就活がスタート

6月1日から全国的に21就活をターゲットにしたインターンシップのPRするイベントが開催され実態的に21就活がスタートしたと言って良い。当然経団連のルールが廃止されたことで早期が予想されており学生達もその情報からスタートする時期を早めている。

令和就活の「変化」は採用選考全体の早期化やインターンシップの早期化・複雑化、企業の低学年時向け施策(大学1年生から企業が学生と接点を持ち、早期内定から入社まで勤務型インターンシップで囲い込む)も活発になるという声もある。

ところが、囲い込み施策については大手・ブランド企業の一部の人事は温度感が違う。平成就活のように学生が企業のブランドや安定性で選社をすることが変わらないのであれば他の企業が低学年時から学生を囲っていても4年生でリーチが出来れば逆転・横取り出来るという大手・ブランド企業ならではの発想もある。

通年採用は本当に浸透していくのか

今年4月新卒学生の通年採用を拡大することで経団連と大学側が合意している。この影響は確かに意識の高い大学生は低学年時から企業のインターンシップに参加をして相思相愛であれば大学2年生からでも内定は獲得出来る。

  • そのまま就職活動をせずにインターンシップを継続して大学卒業と同時に入社をする超早期化
  • 大学を卒業した後に自分の目指す方向性の勉強をし直してから就職活動をする
  • 大学卒業してから海外などの経験を積んで就職活動をする
  • 部活や大学外の活動を終えてから就職活動をする

多様な価値観の中で就職活動をする時期を選択できるという理想的な側面もある。

一方で企業側の声を聞くと入社のタイミングが分散されることでのコストや人的課題が大きくなるという懸念もある。結果、入社のタイミングは複数あるが新人研修はある程度まとめてしまうということになる企業も出て来るだろう。新入社員の成長という視点では新しい問題になる可能性もある。

世界の就活から日本の就活を考えてみる

そもそも世界的にも日本の就活は独特だという事実を忘れてはいけない。

アメリカは実力主義という言葉がピッタリで、大学の成績も非常に大事で、何より何を学んでいたのか?

そしてインターンシップ経験を通じて社会で必要な力をどれだけ手にしているのか?

つまり「何がしたい?ではなく何ができる?」を問われる。

当然就活シーズンなどはないので、自分のタイミングで企業にノックをしていく。

ヨーロッパについても、大学生活が重要で自分の学びと将来向かうべき道がずれれば卒業後に「ギャップイヤー」として留学やビジネススクールで必要な知識や能力を得るために時間を費やす。その後に個別に企業の選考にトライする。

世界の就活はあくまで参考。真似る必要もないしどの国が恵まれているという話でもない。大切なのは、自分が置かれている市場がどうなっているのかを正しく知ること。その為に世界のさまざまな国の就活を見ることで、日本との比較が自然と出来るようになり興味も出て来る。就活が自分事に変わる。

令和就活の必勝法とは

大学生は情報過多に陥り、本質を見落とすことがある。新しい就活がスタートすることで多くのメディアが沢山の見解を発信する。もちろん大学や近くの大人達も同じだ。

大切なのは早くから(出来る限り大学1年生から)社会全体を把握する為の努力をしたい。

  • 未来の経済、はたらく環境がどうなっているのか?
  • 日本のグローバル化
  • 労働人口減少問題
  • AI化と人間の共存

知識を付けていく過程で社会と繋がる活動が必要になる。実はそこで社会のリアルを掴むことも自分の能力把握、開発に繋がる。もちろん大学の学びは社会で活かす意識で勉強すれば社会人になっても活かせるものが多い。学生自身が就活ではなく、社会で必要とされる知識や能力をどのように養っていくかの意識が勝負のカギとなるのです。

未来志向が鍛えられて社会全体が捉えられて、知識や能力値が上がっていくことで自分の進むべき方向性は自然と見えてくるものです。そして、企業がどのように採用を考えて学生を評価しているかも理解できるので就活に注目している学生にもプラスになる。

すべての大学生が社会、ビジネスと繋がることを主体的に一歩踏み出すことを期待したい。

そして、大人達がその環境を整え支援することが令和就活を良くしていくために必要だと考える。

【参考】

※世界の就活について「就活ハンター」として番組出演します。

https://news.paravi.jp/sekaishukatsu/ 

※パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査

https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2019/20190522_02/

はたらくを楽しもう。

はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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