新卒内定式で起きている混乱 人事を悩ませる「音信不通や掛け持ち」学生が増加する理由とは

内定式に参加しても本当に入社するのか分からない?(写真:アフロ)

2019年春に卒業予定の大学生、大学院生向けの内定式が全国各地で10月1日に開催されたように「10月1日内定式」はある種の日本文化になってきたのは事実である。ところが近年は、企業の考え方や就職時期の変動などの都合に伴い内定式の時期を後ろ倒しにしてみたり、そもそも開催しないという企業も少なくない。そもそも「8月選考解禁で10月内定式」という過去の大きな分岐点は今考えても人事の頭を痛めた大きな要因だ。そして12月に入って各所で内定式が開催されるのは不思議なことではない時代となって来たようにも感じる。

そんな中、人事の世界ではここ数年、内定式に関してこのような声を聞くことが増えた。

「内定式に音信不通になる」

「内定式を掛け持ちしている」

「内定式時点で複数内定承諾をしている」

こういった実態を踏まえて、昨今の就活事情、直近で話題になった「就職ルールの廃止問題」にも触れてみたい。

内定式でどの企業を辞退するか判断する

本来就活生が最後の意思表示をするという言い方もできるほど重要な式典である内定式の当日に音信不通になり欠席、そのまま内定辞退になる学生は珍しくないと多くの新卒採用担当は言う。内定承諾の意志が緩く、直前で決断が変わってしまうケースもあれば、近年増加しているのは10月1日まで複数の企業の内定を承諾していてどの企業に入社するかを迷い考えるケース。中には内定式を掛け持ちして役員陣の発信内容や場の雰囲気、同期となる内定者の様子を見て最終的にどの企業に入社するかを判断するという学生も現れている。

頭が痛いのは企業の人事である。入社する新入社員の数に変動が生じるため、ここ数年10月1日を起点に数字がブレることを見込んで内定承諾の数をコントロールする企業が多くなっている。では、何故このような学生の行動が増えてしまったのか?

就職活動の短縮化がもたらした新しい就活スタイル

2015年に就活に関する倫理憲章が指針(3月広報解禁、8月選考活動スタート、10月内定式)に変わり、就活生の活動期間が大きく短縮された。そのため学生は企業、社会の知識が薄い中で内定承諾をしてしまい、自分の判断を後悔したり、入社後のギャップを感じたりといった傾向に陥りがちだった。

その後、活動期間は3月広報解禁、6月選考活動スタート、10月内定式に変更になったものの、既に企業は水面下で学生と接点を持つ術を確立し、ブランディング目的のインターンシップが乱発してしまった。すると学生達はルールに従うよりも企業の水面下の動きに合わせて活動するのが当たり前となり、就活生の活動、意識、価値観も変化した。

理由のひとつが、企業の提供する情報が限定的だということ。学生からすれば、情報は何が本当か分からない表面的なものばかり、それゆえ内定承諾をしてから企業の本質を知り、判断するという流れになり、複数企業の内定承諾が増えてしまったというわけだ。結果、内定式の日に辞退、音信不通、内定式の掛け持ちという何ともおかしな行動が普通に起きてしまっている。

古い就活から新しい就活へ

確かに2013年頃からの就職活動にまつわるルールの遍歴を見ると、学生の混乱は避けられず、結果的には意志決定するための情報収集を行う時間が短く、内定式まで複数の内定を承諾しておいて、内定式の雰囲気で入社するか否かの判断をする、4月の入社までに情報を集めたり社員と交流したりする中で判断をするというのも理解はできる。ただ、それは現状の日本の就活に関する文化の中での話。企業の就活に関する考えが大きく変わっている中、学生の就活に対する意識もそろそろ変革してもよいタイミングに来ているのではないだろうか。

社会が作り出すルールに振り回されないためにも、大学3年生の夏から就活をスタートするのではなく、もっと早く始めたい。そうすれば、大学1年生から社会のリアル、構造を理解し未来志向で情報を集めていくことで「はたらくことの本質」を捉えることができ、自分自身と向き合う時間が増える。

大手やブランド企業に入ることが正だった時代の就活ではなく、自分らしく、社会にどんな価値を提供したいかを十分に考えた新しい就活になれば、意思決定に迷い複数の企業で内定承諾をする必要もなくなっていくはずだ。未来を自分でデザインできる時代だからこそ、そうあるべきだと思う。

就活市場が変化しようとも、学生が早くから自分の人生やキャリアに意識を持ち向き合うことで昨今の就活にまつわるトラブルは良き方向に変化していくはず。そして、社会全体が若い世代の後押しを正しくできるように変化していくことを期待したい。

はたらくを楽しもう。