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小さい子どももカードゲームを楽しむために -大人が工夫できる簡単なこと-

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授

年末年始で親戚一同が集まると盛り上がるゲーム大会。我が家の親族は一番上は小学校5年生から、一番下は3歳まで、いとこたちがぞろぞろ集まります。もちろん今どきの子ども達はデジタルゲームにも夢中なのですが、カードゲームだって負けてはいません。

Amazon.co.jp の『売れ筋のカードゲームランキング』(2019年1月23日時点)では、

1位:ウノ UNO カードゲーム

2位:ナンジャモンジャ

3位:ドブル(Dobble) 日本語版カードゲーム

ということでした。

ウノは昔からあるカードゲームで親御さん世代も一度は遊んだことがあるのではないでしょうか。根強い人気です。

この中の3位『ドブル』を子どもたちと(大人も本気で?!)やって楽しかったので紹介します。「ドブル」は、2009年にフランスで発売されたゲームで、大ヒットのゲーム。(ちなみに、アメリカでは「Spot It! 」という商品名だそうです。)

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それぞれに50種類以上のマークの内から8つが描かれた55枚のカードで遊ぶゲームです。

全てのカードは他のカードとたった1つだけ共通するマークが描かれており、それを探すことがゲームの目的です。

例えば、、、

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右上の札を見た人は、真ん中の山札と見比べて「イルカ!」と叫ぶ、そのような感じでゲームが進んでいきます。

ドブルではこの同じ55枚のカードを使って、ルールの異なる複数のゲームができるようになっています。「2枚のカードの間に共通するマークを見つけて名前を言う」という共通のルールがありつつも、

1)山札の一番上のカードと同じマークを見つけたら、カードを1枚もらえて、枚数の多い人が勝ち

2)最初にすべてのカードを配っておいて、最後の1枚を中央に開く。そのカードと同じマークを見つけたら、宣言しながら手持ちカードを捨てて、先に手持ちがなくなった人が勝ち

など、いろいろなタイプの遊びができて、大人も思わず白熱してしまうゲームでした。

「同じ絵を見つけるだけ」 そんなシンプルなルールなので、子どもだってできるし、経験も不要。モノの名前がわからなくたって「シロクロさん!」とか叫べばなんでもOKなのです。

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大人も子どもも楽しむために環境を工夫してみる

ところで、カードゲームは年齢によっては一緒に遊ぶのが難しかったりもします。我が家の子どもたちもカードゲームは大好きなのですが、ルールの難しいゲームは、小学4年生の兄はやりたがるものの、4歳の妹には難しい。妹がもっと小さい頃は、誰かとペアになってどれを出したらいいか教えてあげながら、遊ぶことも多かったのですが、3歳後半になってくるとだんだん「自分も一人でやりたい!でもルールがわからない。ギャー!」という状態になってきました。

そんなときに周りの環境を整えたり、座る位置を工夫するだけで、一緒に楽しく遊べることに気づいたのでご紹介します。

例えばトランプの七並べ。リビングの座る向きの工夫でできるようになったのです。娘が毎回同じところに座りたがるし、急にできるようになったな、と思い、娘をよく観察していると、

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こんなもので『カンニング』をしていました!

リビングの壁にかかっている時計をちらちら見て、自分の手元のカードと見比べているではありませんか。負けず嫌いな娘は失敗するのが嫌なので、間違えないように「『8』のとなりに並べていいのは『9』だ」などとチェックしていたようです。

J(11),Q(12), K(13)は難しいので、最初から抜きにするとみんなでワイワイ遊べるようになりました。Aはマークが1つだけ書いてあるので入れておいてもわかるようです。

また、『アルゴ』というゲームがあります。

これは配られた手持ちのカードを数字の小さい順に伏せたまま並べて、相手の数字を推測するゲーム。黒白どちらも0から11までの数字があり、数字が小さいものは左、大きいものは右、同じ数字の場合には黒が左というルールがあります。

黒の1より小さい黒は0のみ。白の10より大きい黒は11のみ。と数字を推測していくゲーム。
黒の1より小さい黒は0のみ。白の10より大きい黒は11のみ。と数字を推測していくゲーム。

同じように時計の見える位置に座らせてみたのですが、白黒の順番がまだ難しいようで、「白と黒、どっちがちいさいんだっけ?」と聞いてしまい、ネタバレになってしまっていました。

そこで、すべてを並べた、『答え用紙』を作り、あらかじめ娘に渡してみました。並べる際にはその紙を見ながら、自分の手持ちカードの順番を考えたり、相手がどのカードを持っているか推測したりするのです。

たったこの1枚の紙を作っただけで、ちゃんとゲームとして成り立つようになりました。

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ルールを引用して自分たちで作ってみる

カードゲームはたくさんの種類があり、すべて買いそろえるのは大変。どういったゲームに子どもが食いつくかもわかりません。

どんなカードゲームが好きかな、この冬休みの間に何か新しく投入したいなと、いろいろなカードゲームを調べていたら、小学1年生の次男の掛け声で、子どもたちが自分たちでカードを作り出しました。

1)紙に適当なキャラクタを兄弟妹でそれぞれ描く

2)それを写真に撮って、パソコンに取り込む。それぞれ画像を四角形で切り取る。

3)市販の『名刺・カード用紙』(ダイソーやセリアなどでも売っています)にそれぞれ4枚ずつ印刷

自作のキャラクタを描く子どもたち
自作のキャラクタを描く子どもたち
次男作
次男作
長女作
長女作
 矩形選択で切り取って、カードレイアウトソフトに貼り付けて印刷するだけ。
矩形選択で切り取って、カードレイアウトソフトに貼り付けて印刷するだけ。

あっという間に、オリジナル『ナンジャモンジャ』が完成していました。ナンジャモンジャは簡単に言ってしまえば、見知らぬキャラクタに名前を付けて早く呼ぶゲーム。確かにキャラクタはなんだってありなのです。

A4用紙1枚から、10枚のカードが取れるのですが、最後2枚余ってしまっていて、そこにはすべてのキャラクタを並べた『ジョーカー』を作成。

“全部の名前を言えないとビリ決定”などと自分たちでオリジナルルールも作っていました。

今回はちょっとデジタル加工しましたが、もちろん、全部手書きで作るのもアリ。

小学生の男の子たちの間では、戦闘物のカードゲームも人気です。我が家の子どもたちは小学校下校後は学童保育で過ごしていますが、学童保育はカードゲームなどのゲームの持ち込みは禁止。そこで、学童保育の先生が考えてくださったのが、カードゲームのためのカードを自作する、そしてその自作したカードで遊ぶ、というもの。

そんな『カードを自作する』ことを知っていたからこそ、出てきたアイデアなのかもしれません。

このようにして、我が家の兄たちには、「妹は小さくてゲームができないから入れない」のではなく、何を工夫したら妹も一緒に遊べるか、ルールを変更してみたり、新しくゲームを作ってみるよう促してみています。

ボードゲームカフェが人気

JERRY JERRY CAFEアソビCafeといった、世界中のボードゲームで遊べる『ボードゲームカフェ』も増えています。 100~数百種類のボードゲームが店内には用意されてあり、みんなで遊びやすい大きめなテーブルがあるカフェで、食べたり飲んだりしながら、ボードゲームで遊べるのです。

複数人で予約して遊びに行くのはもちろん、1~2人で行って、カフェに来ている知らない人と一緒に遊ぶこともできます。

オンラインで見知らぬ人との対戦ゲームが当たり前になった今の世の中ですが、一方ではこのようにオフラインでの遊びもじわじわ人気なのです。

(この記事はEnfaniからの転載です)

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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