「災害弱者」へのサポートと感染症対策、障害の有無に関わらずできる心身のケア【#コロナとどう暮らす】

(写真:ロイター/アフロ)

梅雨前線の活動が活発化し、3日夜から4日にかけて、九州から東北にかけての広い範囲で大雨となると予想されています。すでに九州を中心に大雨被害が出ており、今後各地で被害状況に合わせて避難の呼びかけが進むと思われます。

参考:tenki.jp 「4日 九州から東北の広い範囲で大雨警戒」

この記事では、いわゆる「災害弱者」と呼ばれる人たちー病気や障害がある方、妊婦や高齢者の方、子どもや外国人、旅行者など、避難生活における困難が大きく、個別のサポートを必要とする可能性が高い人たちがいるということ、そして、そうした方々へのサポート方法についてお話しします。

あわせて、誰もが不安を抱えているであろう、災害避難時の新型コロナウイルス感染症対策についても、知っておくとよい考え方や情報をご紹介します。

また、障害の有無に関わらず、ストレスが強くお互いに余裕がない環境下での考え方や関わり方のコツについてもあわせてご紹介いたします。

避難者の方々や避難所運営者の方々に参考にしていただくことを念頭に書きましたが、それ以外の方々にも、今後の災害に備えて、こうした個別のサポートを必要とする方々がいるということを知っていただければ幸いです。

1. はじめにー避難生活では誰もが「弱さ」を抱えている。まずは自分を守り、お互い無理のないサポートを

特に困難が大きくサポートを必要とする「災害弱者」について紹介すると言っておきながらなのですが、何よりもまず覚えておきたいのは、災害時の避難所においては、誰もが不安や困難と共に生きており、その意味では障害の有無に関わらず、皆がそれぞれの「弱さ」を抱えているということです。

いつもと違う食事・睡眠・生活環境で、身体やこころに変化が起きるのは、人間としてごく自然なことです。

普段なら気にならないことにイライラしたり、頭痛や不眠が起きたり、周囲とのコミュニケーションに困難さを感じたり…こういった反応は誰にでも起こり得ることなのです。

「自分は健康だから我慢しなければ…」と思わず、まずは自分自身の心身を大事にケアしてあげてください。

その上で、お互いに無理のない範囲で、どんなサポートができるだろうか?と考えていただけると嬉しいです。

以下に、児童精神科医の小澤いぶきさんが書いた、災害時の心のケアについての記事と、避難所生活の経過に応じて生じるさまざまなストレスについて概観した、新潟青陵大学大学院教授の碓井真史さんの記事リンクを掲載します。こちらもぜひ参考にしてみてください。

事故や災害が起きたときのケアについて~子ども「心」のケアの視点から~, 小澤いぶき

より良い避難所のために・災害弱者を守るために:避難所ストレスの今とこれから、そして対処法:熊本地震, 碓井真史

2. 新型コロナと災害、避難時の感染予防は?

これまでの自然災害と違い、今年は新型コロナウイルス感染症対策を、災害・避難時の限られたリソースの中でどのように両立するか、という課題が降りかかります。

具体的な対応は地域によって異なりますが、一人ひとりが知っておくと良い考え方や実践について、大きく以下の3つをご紹介します。

■分散避難: 避難所での密集を避けるために、可能な人は「親戚・知人宅」「ホテル」「在宅避難」「車中泊」などさまざまな避難先に分散して避難をする

分散避難の例 土砂災害や浸水リスクがなく安全ができている場合は、在宅避難・ホテル・親戚や友人宅での分散避難を。画像制作:Yahoo! JAPAN
分散避難の例 土砂災害や浸水リスクがなく安全ができている場合は、在宅避難・ホテル・親戚や友人宅での分散避難を。画像制作:Yahoo! JAPAN

出典:内閣府

画像制作:Yahoo! JAPAN(内閣府『避難所における新型コロナウイルス感染症への対応の参考資料について』のデータを元に作成

■感染予防グッズの持参: 避難時には、自宅から「マスク」(持っていない場合は、鼻と口を覆える大きさのタオルや手ぬぐい)、「アルコール消毒液」(無い場合はウエットティッシュ)、「体温計」を可能な限り持参して避難をする

災害時の感染症対策で備えたいもの。マスク、体温計、アルコール消毒液、ウェットティッシュ、自分用のせっけん、うがい薬、のど飴、防虫スプレー、ゴミ袋、ゴム手袋、スリッパ画像制作:Yahoo! JAPAN
災害時の感染症対策で備えたいもの。マスク、体温計、アルコール消毒液、ウェットティッシュ、自分用のせっけん、うがい薬、のど飴、防虫スプレー、ゴミ袋、ゴム手袋、スリッパ画像制作:Yahoo! JAPAN

画像制作:Yahoo! JAPAN

■避難所での環境整備: 避難所運営者を中心に、換気や間仕切りなど、「密閉・密集・密接」の3つの密を可能な限り避けられる環境をつくっていく

避難所での三密対策。テープ等で区画表示、パーティションの利用、テントを建てるなど。画像制作:Yahoo! JAPAN
避難所での三密対策。テープ等で区画表示、パーティションの利用、テントを建てるなど。画像制作:Yahoo! JAPAN

出典:内閣府

画像制作:Yahoo! JAPAN(内閣府『新型コロナウイルス感染症を踏まえた災害対応のポイント【第1版】』のデータを元に作成

以下のサイトに、災害時の新型コロナウイルス感染症対策についての情報がまとまっていますので、詳しくはこちらもご参考にしてみてください。

参考: NHK「今から考えておきたい 新型コロナと災害 避難はどうする?」

参考:公益財団法人市民防災研究所 「避難所等における新型コロナウイルス感染症対策の参考リンク集(随時更新)」 

3. 「災害弱者」と呼ばれる方々の避難所生活における困難と、私たちにできるサポート

病気や障害がある方、妊婦や高齢者の方、子どもや外国人、旅行者などの方々は、上述の共通のストレスに加えて、心身の特性によって情報の受け取り方が違ったり、自由に行動できる範囲が限られていることで困難が生じやすい方々です。

一人ひとりの症状や必要なサポートは異なりますが、本記事では簡単に、同じく避難所生活をする方々同士でできる簡単なサポートの例を紹介します(もちろん、困ったときは避難者同士で抱え込むのではなく、避難所運営者の方々に相談してみてください)。

■視覚・聴覚障害や外国語話者の方への「情報保障」

視覚障害や難聴・聴覚障害のある方、外国語を母語とする方は、避難所内で共通・一斉に行われる情報伝達を受け取りにくかったり、理解が困難な場合があります。また、知的障害や、自閉症スペクトラム・学習障害といった発達障害のある方は、複雑・抽象的な内容の理解や遂行が困難な場合があります。

そうした人たちが受け取りやすい形での「情報保障」の方法をご紹介します。

・視覚の困難さに対して: 口頭伝達や同行介助など

視覚障害のある方は、避難所内の掲示物を読めなかったり、慣れない環境かつ狭い避難所内での移動に困難が生じたりします。トイレや配給場所への同行介助をしたり、掲示物の内容を個別に口頭伝達したりしてあげると良いでしょう。視覚障害に限りませんが、普段と違う環境で、自分から支援を求めにくいと思われる方もおられるかもしれません。近くにいる方が、こまめに声をかけてあげてください。

・聞こえの困難さに対して: 筆談や同行介助など

聴覚障害のある方は、避難所内での口頭アナウンスを受け取れず、身の回りの視覚情報に頼ることになります。口頭アナウンスと合わせて掲示物や配布物があれば良いのですが、全ての情報をカバーできるとは限りません。身の回りの人が、筆談ボードやメモ用紙を使って情報を共有する、集合場所に一緒に行ってあげるなどして助けられることがあります。

・理解の困難さに対して: 視覚補助資料や「やさしい日本語」

食料等の配給の受け取り、起床や消灯時間など、避難所での生活において重要な情報は、避難所運営者の方々からアナウンスがあると思います。

ですが、知的障害や発達障害があったり、外国語話者の方々は、一見聞こえているように見えても、その内容の「理解」に困難さを感じている場合があります。

掲示物の情報でも、複雑・抽象的だと思われる内容には、テキストの横にイラストやピクトグラムなどの「視覚補助」資料をつけると良いでしょう。また、今回の災害でも各種報道機関が使用していましたが、通常の日本語の文章の横に、簡単・平易なひらがなの文章での「やさしい日本語」を添えるのも有効だと思います。

■肢体不自由や妊婦、高齢者の「移動のサポート」

上述の視覚障害の方の他にも、肢体不自由のある方、妊娠中の方や高齢の方などは、慣れない避難所内での移動に困難を感じやすい方々です。障害物や段差のある場所の移動は、周囲の人が移動をサポートしてあげてください。また、移動の困難さの度合いによっては、その人の代わりに周囲の人が物を受け取ったり情報伝達をするといった工夫も、できる範囲で検討していただければと思います。

■発達障害や精神障害、難病などの「見えにくい障害」に

他にも、発達障害や精神障害、難病といった外からは「見えにくい障害」のある方もおられます。疲れやすかったり、気持ちのコントロールが難しかったり、不安やパニックになりやすかったりといった特性のある方々が少なくありません。薬が切れてしまったり、普段と違う避難所環境でストレスが大きくなったりといった要因で、普段以上にそうした症状が出やすくなる可能性もあります。

こうした見えにくい障害のある方々は、「ヘルプマーク」を持っていることがありますし、ご自分からご相談をしてこられることもあります。どんな場面でどんな困りごとがあるのか、どんなサポートを必要としているのか、まずはご本人や保護者の方々にヒアリングをしてみてください。

通常以上に疲れやすかったり、集団行動が困難である場合は、食料等の配給の受け取りの列に並ぶのが困難な場合があります。個別の配給対応をしてもらったり、周囲の人が代わりに受け取るなどといったサポートを検討してみてください。

また、不安やパニックが大きくなったときの逃げ場所として、パーティションで区切られた「クールダウンスペース」を避難所内に設けると良いでしょう。

参考:LITALICO発達ナビ 「平成30年7月豪雨」、発達障害のある子への避難所での配慮ポイントまとめ

■「みんなで一緒に」できる遊びでリラックスを

避難所が学校施設などであれば、マットや跳び箱、フラフープといった運動器具を使って、簡単な運動をすることも良いでしょう。

運動以外にも、カードやボードゲームを持っている方は、近くの人に声をかけて一緒に遊んでみてください。

上記のような「困りごと」に応じたコミュニケーションももちろん大切ですが、困りごとの有無にかかわらずフラットに繋がり、一緒に遊んでお互いを知ることは、いざというときに孤立を防ぐセーフティネットとなってくれるはずです。

仮住まいであっても、今後続いていく避難所生活において「ひとりじゃない」と感じられる、困ったときに相談ができる繋がりが避難所の中にあることは、何よりも大きな心の支えになってくれると思います。

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自然災害と一口に言っても、台風や地震といった災害の規模、発生地域の特性によって、地域ごとの被害の様相やその後の避難・復旧状況は異なってきます。今回は、被害や地域の状況のちがいによらず、共有しておきたい視点や考え方、個々人ができる工夫全般をご紹介しましたが、今後の各地の災害状況や感染症対応を踏まえて、より具体的なテーマに特化した情報発信も行っていきたいと思います。