[台風19号]避難所生活での「災害弱者」へのサポートと、障害の有無に関わらずできる心身のケア

(写真:ロイター/アフロ)

2019年10月に発生した台風19号。関東や東北の計21河川が氾濫、37人が死亡、17人が行方不明、189人がけが(14日時点)と、各地で大きな被害が発生しました。

被害は広域にわたるものの、その度合いは地理的状況によってばらつきもあり、すでに「日常」が戻ってきたという人もおられるでしょう。一方、まだ復旧の目処が立たず、避難所生活が続いている人たちも多くおられます。

各地の被害・避難状況や復旧に関しては、現在進行形で情報が変わってきているので、お住まいの自治体のページや、NHKの特設ページをご参照ください。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/disaster/typhoon19/

この記事では、いわゆる「災害弱者」と呼ばれる人たちー病気や障害がある方、妊婦や高齢者の方、子どもや外国人、旅行者など、避難生活における困難が大きく、個別のサポートを必要とする可能性が高い人たちがいるということ、そして、そうした方々へのサポート方法についてお話しします。

また、障害の有無に関わらず、ストレスが強くお互いに余裕がない環境下での考え方や関わり方のコツについてもあわせてご紹介いたします。

避難所生活が現在も続いている避難者の方々や避難所運営者の方々に参考にしていただくことを念頭に書きましたが、それ以外の方々にも、今後の災害に備えて、こうした個別のサポートを必要とする方々がいるということを知っていただければ幸いです。

1. はじめにー避難生活では誰もが「弱さ」を抱えている。まずは自分を守り、お互い無理のないサポートを

特に困難が大きくサポートを必要とする「災害弱者」について紹介すると言っておきながらなのですが、何よりもまず覚えておきたいのは、災害時の避難所においては、誰もが不安や困難と共に生きており、その意味では障害の有無に関わらず、皆がそれぞれの「弱さ」を抱えているということです。

いつもと違う食事・睡眠・生活環境で、身体やこころに変化が起きるのは、人間としてごく自然なことです。

普段なら気にならないことにイライラしたり、頭痛や不眠が起きたり、周囲とのコミュニケーションに困難さを感じたり…こういった反応は誰にでも起こり得ることなのです。

「自分は健康だから我慢しなければ…」と思わず、まずは自分自身の心身を大事にケアしてあげてください。

その上で、お互いに無理のない範囲で、どんなサポートができるだろうか?と考えていただけると嬉しいです。

以下に、児童精神科医の小澤いぶきさんが書いた、災害時の心のケアについての記事と、避難所生活の経過に応じて生じるさまざまなストレスについて概観した、新潟青陵大学大学院教授の碓井真史さんの記事リンクを掲載します。こちらもぜひ参考にしてみてください。

事故や災害が起きたときのケアについて~子ども「心」のケアの視点から~, 小澤いぶき

より良い避難所のために・災害弱者を守るために:避難所ストレスの今とこれから、そして対処法:熊本地震, 碓井真史

2. 「災害弱者」と呼ばれる方々の避難所生活における困難と、私たちにできるサポート

病気や障害がある方、妊婦や高齢者の方、子どもや外国人、旅行者などの方々は、上述の共通のストレスに加えて、心身の特性によって情報の受け取り方が違ったり、自由に行動できる範囲が限られていることで困難が生じやすい方々です。

一人ひとりの症状や必要なサポートは異なりますが、本記事では簡単に、同じく避難所生活をする方々同士でできる簡単なサポートの例を紹介します(もちろん、困ったときは避難者同士で抱え込むのではなく、避難所運営者の方々に相談してみてください)。

■視覚・聴覚障害や外国語話者の方への「情報保障」

視覚障害や難聴・聴覚障害のある方、外国語を母語とする方は、避難所内で共通・一斉に行われる情報伝達を受け取りにくかったり、理解が困難な場合があります。また、知的障害や、自閉症スペクトラム・学習障害といった発達障害のある方は、複雑・抽象的な内容の理解や遂行が困難な場合があります。

そうした人たちが受け取りやすい形での「情報保障」の方法をご紹介します。

・視覚の困難さに対して: 口頭伝達や同行介助など

視覚障害のある方は、避難所内の掲示物を読めなかったり、慣れない環境かつ狭い避難所内での移動に困難が生じたりします。トイレや配給場所への同行介助をしたり、掲示物の内容を個別に口頭伝達したりしてあげると良いでしょう。視覚障害に限りませんが、普段と違う環境で、自分から支援を求めにくいと思われる方もおられるかもしれません。近くにいる方が、こまめに声をかけてあげてください。

・聞こえの困難さに対して: 筆談や同行介助など

聴覚障害のある方は、避難所内での口頭アナウンスを受け取れず、身の回りの視覚情報に頼ることになります。口頭アナウンスと合わせて掲示物や配布物があれば良いのですが、全ての情報をカバーできるとは限りません。身の回りの人が、筆談ボードやメモ用紙を使って情報を共有する、集合場所に一緒に行ってあげるなどして助けられることがあります。

・理解の困難さに対して: 視覚補助資料や「やさしい日本語」

食料等の配給の受け取り、起床や消灯時間など、避難所での生活において重要な情報は、避難所運営者の方々からアナウンスがあると思います。

ですが、知的障害や発達障害があったり、外国語話者の方々は、一見聞こえているように見えても、その内容の「理解」に困難さを感じている場合があります。

掲示物の情報でも、複雑・抽象的だと思われる内容には、テキストの横にイラストやピクトグラムなどの「視覚補助」資料をつけると良いでしょう。また、今回の災害でも各種報道機関が使用していましたが、通常の日本語の文章の横に、簡単・平易なひらがなの文章での「やさしい日本語」を添えるのも有効だと思います。

■肢体不自由や妊婦、高齢者の「移動のサポート」

上述の視覚障害の方の他にも、肢体不自由のある方、妊娠中の方や高齢の方などは、慣れない避難所内での移動に困難を感じやすい方々です。障害物や段差のある場所の移動は、周囲の人が移動をサポートしてあげてください。また、移動の困難さの度合いによっては、その人の代わりに周囲の人が物を受け取ったり情報伝達をするといった工夫も、できる範囲で検討していただければと思います。

■発達障害や精神障害、難病などの「見えにくい障害」に

他にも、発達障害や精神障害、難病といった外からは「見えにくい障害」のある方もおられます。疲れやすかったり、気持ちのコントロールが難しかったり、不安やパニックになりやすかったりといった特性のある方々が少なくありません。薬が切れてしまったり、普段と違う避難所環境でストレスが大きくなったりといった要因で、普段以上にそうした症状が出やすくなる可能性もあります。

こうした見えにくい障害のある方々は、「ヘルプマーク」を持っていることがありますし、ご自分からご相談をしてこられることもあります。どんな場面でどんな困りごとがあるのか、どんなサポートを必要としているのか、まずはご本人や保護者の方々にヒアリングをしてみてください。

通常以上に疲れやすかったり、集団行動が困難である場合は、食料等の配給の受け取りの列に並ぶのが困難な場合があります。個別の配給対応をしてもらったり、周囲の人が代わりに受け取るなどといったサポートを検討してみてください。

また、不安やパニックが大きくなったときの逃げ場所として、パーティションで区切られた「クールダウンスペース」を避難所内に設けると良いでしょう。

参考:LITALICO発達ナビ 「平成30年7月豪雨」、発達障害のある子への避難所での配慮ポイントまとめ

■「みんなで一緒に」できる遊びでリラックスを

避難所が学校施設などであれば、マットや跳び箱、フラフープといった運動器具を使って、簡単な運動をすることも良いでしょう。

運動以外にも、カードやボードゲームを持っている方は、近くの人に声をかけて一緒に遊んでみてください。

上記のような「困りごと」に応じたコミュニケーションももちろん大切ですが、困りごとの有無にかかわらずフラットに繋がり、一緒に遊んでお互いを知ることは、いざというときに孤立を防ぐセーフティネットとなってくれるはずです。

仮住まいであっても、今後続いていく避難所生活において「ひとりじゃない」と感じられる、困ったときに相談ができる繋がりが避難所の中にあることは、何よりも大きな心の支えになってくれると思います。

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台風でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。

また、すべての被災された皆さまに心よりお見舞いを申し上げるとともに、私自身も情報発信や義援金等で、出来る限りのサポートを続けたいと思います。