れいわ2議員の介護負担を巡って。社会の側にある障害と「合理的配慮」

(c) LITALICO Inc.

重度の障害があり、先日の参議院選挙で当選した舩後靖彦氏と木村英子氏の議員活動中に、公費による介護サービスを受けられなくなってしまう問題を受け、参議院議院運営委員会の理事会は、当面、参議院が費用を負担して介護サービスを行うことを30日に決めました。

8月1日招集の臨時国会を前にして、お二人が議員活動のスタートを切れるよう、参議院としてのサポート姿勢をクリアにした意思決定。私はとても嬉しいニュースと受け止めましたが、SNSではさまざまな意見も目にしました。

障害のある議員が議員活動=仕事をするために必要なサポートを、誰が、どのように負担するのか。参議院が「当面負担」としていることの意味は。これらを読み解くための大事な考え方として、「合理的配慮」という概念をご紹介したいと思います。

困りごとに応じて柔軟な対応をー「合理的配慮」という考え方

合理的配慮とはなにか (c) LITALICO Inc.
合理的配慮とはなにか (c) LITALICO Inc.

合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。

困難や障害のある人であっても、周りの環境を整えたり、適切なサポートをしたりすることで、これまでできなかったことができるようになることは数多くあります。合理的配慮は、障害がある人も障害のない人と同様に社会活動に参加し自分らしく生きていくために、必要な調整をしましょうという考え方です。

その人が直面している困難や周囲の環境に応じて、必要な合理的配慮は異なりますが、わかりやすい具体例としては、以下のようなものがあります。

合理的配慮の具体例 (c) LITALICO Inc.
合理的配慮の具体例 (c) LITALICO Inc.

選挙で選ばれた船後氏・木村氏は、これから議会への参加など、さまざまな活動を通して、国会議員としての役割を果たすことが「仕事」として求められます(それ自体は他の議員と同様です)。しかし、仕事をするためには、どうしてもお二人の身体特性上、介護ヘルパーによる支援が必要になる。ところが、障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」制度では、就労中は介護サービスが受けられない決まりとなっていた。すべて自費で賄うにはあまりにも金額が大きいし、そもそも仕事をしなければお金を稼いでいくこともできない…。

そんなジレンマを乗り越えるべく、彼らがその一員として活動をする組織である参議院が、介護費用を当面負担することにした。これが今回の事例での「合理的配慮」の内容となります。

合理的配慮は、英語の「Reasonable Accommodation」という用語を英訳したものです。「配慮」というと片方が一方的にサポートするようなイメージを受けるかもしれませんが、もともとAccommodationには調整・調和・便宜・和解といった意味合いが含まれており、当事者間の双方向的な協議を大切にする概念です。

合理的配慮は双方向の協議が大切 (c)LITALICO Inc.
合理的配慮は双方向の協議が大切 (c)LITALICO Inc.

何が「合理的」かは、当事者間の協議によって決まります。双方のできることできないこと、人員やお金や時間といったリソースの制限があるなか、「可能な限り」の工夫を一緒に考えていくなかで、その場面、場面に応じた「合理的配慮」の内容が決定します。

本件について、さまざまな意見を目にしますが、基本的には事案の当事者である参議院の決定をまずば尊重し、見守っていきたいものです。

合理的配慮をきっかけに、そもそもの制度改善を期待したい

これまで説明してきた「合理的配慮」は、あくまで場面、場面に応じた個別具体の対応となります。いわば、対症療法であり、調整弁です。

ですがそもそも、事の発端は、重度訪問介護利用者が就労すると公費介護が打ち切られるという制度設計にありました。

「制度の壁」が、2人の議員活動を妨げる「障害」となったのです。

社会の側にある障害 (c) LITALICO Inc.
社会の側にある障害 (c) LITALICO Inc.

お二人が利用していたのは、2013年に施行された障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」制度による支援です。日常的に介護を必要とする人を対象にヘルパーを派遣し、家事の援助や外出の付き添いなどさまざまな支援を受けられます。自己負担は最大一割で、両氏は24時間利用をしています。

ですが、重度訪問介護での「移動支援」の利用場面は、買い物や投票など日常的、または社会的な活動に限定されています。国会議員としての「移動」はその目的に該当せず、サービスが打ち切られてしまう、というのが今回起こった問題です。

もともと制度が設計された際には、重度訪問介護を必要とするような方は、そもそも就労が困難だと考えられていたのでしょう。ですが今では、テクノロジーの活用をはじめ、重度の障害がある方でも仕事を可能にする方法がたくさん生まれてきています。

働けるようになった一方で、痰の吸引や入浴といった日常的な介助の必要性は残る、という人たちが現れてきた。つまり就労と重度訪問介護が並走することが「現実的」なオプションであるという時代が、すでに来ているのではないかと考えられます。

お二人が所属するれいわ新選組は、介護費用を職場とみなされる参議院が負担することが常態化することには否定的で、運用ルールを変えて公費負担としていくことを求めているとのことです。職場や議会が負担することを当たり前としてしまうと、資金に余裕がある職場でしか重度障害者が働けなくなる懸念があっての提言です。

(参考:朝日新聞デジタル「れいわ2議員の国会内での介護費用、参議院が負担へ」2019年7月30日21時11分)

以下、脳性麻痺の当事者でもある、東京大学の熊谷晋一郎教授のツイートでも同様の提言がなされています。

参議院と厚生労働省も、年度内に議員活動中の介護サービスへの費用分担について協議するとともに、障害のある方の通勤や就労の支援のあり方について検討を加速させるとのことです。

(参考:NHK NEWS WEB 「重度障害 議員活動中の介護サービス 当面は参院が費用負担へ」2019年7月30日 22時00分)

合理的配慮をきっかけに、制度自体のあるべき姿が再び議論・検討されていくこと、現場での個別具体的な対応が、ユニバーサルな制度設計へとフィードバックされていくのが望ましいと思います。

お二人の当選・当院をきっかけに起こった今回の議論は、お二人の議員活動だけでなく、重度の障害のある方の自立生活や就労の可能性を広げていく上での、大切なイシューです。

さまざまな困難がありながらも、議員としての活動をスタートした船後さん、木村さん、そしてお二人の活動をサポートする方法を模索した参議院関係各位の方々に心からの敬意を表すると共に、私自身も、これからの重度訪問介護制度のあり方を考えていきたいと思います。

参考: 筆者執筆記事,LITALICO仕事ナビ「合理的配慮とは?障害のある人の権利と事業者の義務、職場における合理的配慮の具体例を紹介します」