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日本「外国人観光客受け入れ」 韓国「日本ツアー爆売れ」 1日に1億円売上げ…不買運動どこに?

仁川国際空港(写真:アフロ)

26日19時ごろ、日本の岸田文雄首相が「海外観光客の受け入れ再開」を明らかにしたが、韓国ではこれを見越してすでに「日本のパッケージツアー」が"爆発的人気"なのだという。

26日に国内最大の経済紙「毎日経済」が"単独報道(スクープ)"としてこれを報じた。

【単独】NO JAPANだと言ってたのに…日本のパッケージ2時間で10億ウォン売れた

旅行代理店「チャムチョウン(すごくいい)旅行」が準備した

「大阪2泊3日 49万ウォン(約4万9000円)パッケージ航空券代・宿代込み」

が、爆発的人気を見せたのだ。

当初1200人分の予約を準備していたが、あまりの人気に175人分を追加。「毎日経済」は「予備分の予約を含めると、2000人を超える"旅行族"が日本行きを決めた」としている。

これは同社の今年のそれまでの日本旅行全体予約数「286」の7倍の数字。韓国では20日頃から「日本政府が海外観光客を受け入れ再開を決定するのでは」との報道が始まっていた。実際に岸田首相が「受け入れ表明」を示したのは26日19時ごろだったが、同社のパッケージは26日午前から販売を開始した。なぜか。

「同社は7月以降に観光ビザならびにコロナ検査の規制が解除となると予想し、先行販売でパッケージを売り出した」(毎日経済)

25日に国内最大の通信社「聯合ニュース」が「日本が団体旅行客を受け入れる方向」と報じた点も影響があったと見られる。

また同社はこのパッケージの売出しに際し「観光ビザの問題が解決しない場合は料金100%払い戻し」を約束したのだという。

26日には日本のその他の地域の格安パッケージも売り切れとなり、同社に残っているのは「54万ウォン~79万ウォン台の商品」のみ。それも何かの広告を打ったわけでもなく、SNS(カカオトーク)の44万人の会員にメッセージを送っただけでの"結果"だ。

いっぽうで、韓国のこの会社の今回の商品は「(コロナの影響で)3年ぶりのパッケージだけに"セコさ"がないのが魅力」(毎日経済)。こう紹介されている。

「現地ガイドへのチップは料金に含む、宿泊費削減のための"シングルルームに2人"はなし(宿はなんばのビジネスホテル)、2泊3日のうち免税店ミニツアー1度、2日目は1日まるまる自由時間」

全額返金覚悟、内容は妥協せず。気合がスゴい。

いっぽう同紙が「単独報道」と"仰々しく"見出しを打つのは、「NO JAPAN運動、どうなった?」というツッコミを入れたかったからか。しかし本文では冒頭にサラッと「ソーシャルディスタンスの規制解除と、リベンジ景気が、日本との貿易紛争(2019年のホワイト国除外問題)以降火が着いた不買運動心理さえも消してしまったということだ」と触れた程度。タイトルに強い要素を入れたほうが読まれる。NO JAPAN運動、シニカルな"釣り"に使われることもあるのだ。

それどころか、この国内最大の経済紙は「韓国での日本旅行は今後ブームが加速しうる」との展望も示している。

「両国政府間で金浦ー羽田路線の再開はまだ交渉中にもかかわらず、この成果は驚きという雰囲気」

「他社も韓日政府の航空路線正常化措置を前に、パッケージ商品を最終チェックしている」

「毎日経済」のほか、他の経済系メディアも26日からきょうにかけて「韓国での日本旅行熱」を報じている。

「今夏、日本旅行の需要爆発の兆候…"NO JAPAN、コロナからの回復心理"」(アジア経済)

「NO JAPANナシ…今夏、日本旅行の需要爆発の兆候」(ソウル経済)

2019年8月の「NO JAPAN」運動以前には、LCC時代が本格スタートした影響もあり、日本にとっての韓国は「訪日外国人の国別ランキング」で中国に次いで2位、韓国にとっての日本は「訪れた外国の国別ランキング」で3位(韓国統計庁データ)だった。

当時は「SENKA パーフェクトホイップ」「蒟蒻ゼリー」などのお土産の定番があった。

筆者自身、2018年にK-POPグループの東京での撮影に立ち会ったことがある。一緒に車で都内を回った衣装・メイクスタッフの女性たちはとんこつラーメンの「一蘭」にとにかく行きたがった。また秋葉原でヘアメイク担当者に「近くにドン・キホーテありますか?」と聞かれた。「ありますよ。なんで?」と尋ねたところ、こんな返事が返ってきた。「ヘアカラーリング剤を買おうと思って。明日、メンバーの髪の色を変えたいんです」。驚いた。「ドンキにそれを売ってるって、知ってるんだ」と。

コロナからの回復と、政治方面での"回復"。ふたつの追い風で空前のブームが来るか。新時代の幕開け直前。2022年5月末のこの時、そんな瞬間を過ごしているのかもしれない。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/

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