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正月休みに韓流ドラマを! 超ビギナーにおすすめしたい作品大紹介

愛の不時着ポスター。韓国メディアに配布されたもの

まだまだ新型コロナへの警戒が必要なこの正月休み。

そんな時間にぜひ、韓流ドラマを。

少し時間があるこの時、せっかくなら新しいものを採り入れる時間にするのはどうでしょう。

特にアラフォーからアラフィフの男性、かつ超ビギナー(これから観てみたいとちょっと家が得ている方)を対象にお伝えしたいです。2020年に始まった「第4次韓流ブーム」には「男性も観始める」という要素もありますし。

そして何より、筆者こそがこのプレゼンテーションの適任者、との自負があります。

韓国語を解する筆者は、これまでも韓流ドラマについても原稿を書いてきました。情報もめちゃくちゃ収集してきた。それはどちらかというと「女性の読者のニーズ」を察知するために、アンテナを張り巡らすための作業であり続けています。「どの作品が面白いか」について、女性側の意見をかなり聞いてきたのです。

でも2021年12月31日のこの場では、「一休み」でいいでしょう。お互い、仕事納めもしたでしょうし。これまで女性から聞いてきた情報をもって、ちょっと楽に同世代の男性に語りかけたい。

加えて、自分自身はドラマを観るのがめちゃくちゃ”下手”という点もこのプレゼンを名乗り出る理由です。なにせ1話を観るのに平気で3日もかけてしまう。ドラマの中の女優にキュン死して、交感神経の動きが活発になり、見れなくなってしまうのです。これ、誰からも理解されません。文章でばかり情報を入手してきたなか、映像や音楽を織り交ぜた情報が大量に入ってくることへの耐性が低いのでしょう。

下手なぶん、マニアックなことは言いません。シンプルに「何を観たらいいのか」。さあ始めましょう。

ドラマを見る時、考えるべき2つの要素

世の男性が正月に韓流ドラマを観るには何を考えるべきか。そこには2つの考えるべき要素があると思います。

「最低16時間はかかる(1話=約1時間がだいたい全16話ほどある)」

「せっかく観るんなら世の女性と話題を合わせられたほうがいい」

16時間、というのはまあ韓流ドラマというコンテンツの弱点であり、よい点でもあります。正月三が日では、ご家族と過ごす時間もあるでしょう。その16時間に「俺も見た」という話題を作る付加価値をつける(まあ正月の最重要テーマは”休む”ですが!)ためにはこの点にたどり着くでしょう。

「1つだけ見る」

そうなるとはっきり言って2022年の正月にもこれがおススメです。

「愛の不時着」

おいおいおいおい、ベタ過ぎ。しかも2021年じゃなく、2020年の作品を勧めるなよって。

「不時着」は語り継がれていく名作に

しかし、1作だけ観るならやっぱりこれをススメます。「2020年代の名作」として語り継がれることになる作品だからです。個人的にも様々な作品を観ていますが、舞台が国境を超えるというスケールの大きさは多作にない個性を感じさせます。

当分の間「私、韓流ドラマ好きです」という女性としっかり話を合わせていける。ああ、俺も観ましたよ、と。このシーンが良かったですね、という風に。

「まだギリギリ旬」でもあります。2021年秋、新宿マルイでドラマの写真などの展示会を開催していましたから。ちなみに韓国人からすると「一つの作品の余韻にずっと浸る」というのは実に日本的な風景とのこと。韓国では終わったらさっさと次に行くというのです。

さらには今後、別の作品を観ていくにあたっての基準にもなります。「不時着と比べてどうだったか」。この点、詳しくは後ほど。

「不時着」の難点 

ただし、この作品にもまた「欠点」はあります。

「話に没頭できるまで、ちょっと時間がかかる」

全16話のうち、感情移入できるようになるまで少し時間がかかる。序盤にもたつくところがある。筆者の周囲では、5話くらいで「観るのをやめようかと悩んでいる」という人もいました。

ソウル在住の財閥の凄腕令嬢が、自分へのご褒美にパラグライダーに乗る。その際に突風が吹いて、北朝鮮との軍事境界線を越えてしまう。そこがなんでなのかよく分からない。その際の南北境界線の設定もきっと、日本の視聴者にはちょっと分かりにくい面もあるのでしょう。

この症状には、韓国でのこの作品評が”効く”のでは。

「ハチャメチャな設定を、韓国の超有名女優と俳優ら豪華キャストが演じきったんですよ」(「スポーツ京郷」イ・ユジン記者)

主人公のふたり、セリ(ソン・ヘジン)とジョンヒョク(ヒョンビン)は韓国で超大物だという点をちょっと頭に入れていただければ。セリ役のソン・ヘジンについては「10代から30代までトップを走り続ける女優」(前出イ・ユジン記者)だという。

まあ、どんな作品にでも正直なところ「ちょっとダレる」という回があるものです。筆者自身も「不時着」では第4話でそうなった。

背景のひとつに、韓国と日本のドラマの配給方法の違いがあります。韓国では多くの作品が週末に2夜連続で放映される(金土ドラマ、あるいは土日ドラマという言い方をします)。2話連続で見て、5日間隔が空いて、また2話を見る。作り手側もその流れを意思して作る。

いっぽう日本では「Netfilxで一気見」が多い。つまりは、日本の配給方法だと「似たような話の繰り返し」でも韓国では「ストーリー性を思い出してもらうために必要なシーン」ということなのです。多くの場合は。

イカゲームの賛否両論

では2021年韓流ドラマ最大のヒット作「イカゲーム」はどうでしょう。

この作品の「特殊性」が、2022年の年末にもまた「愛の不時着」をオススメする理由の一つになっています。

主人公が「47歳の落ちぶれた男」。感情移入しやすい面はある。

しかしそれにしてもグロい。そして重い。韓国でのジャンル分けも「デスゲーム」となっているから、まずは好みが分かれる。殺人どころか、遺体をえぐるシーンまであり、ちょっと目を背けてしまいそうなレベルにある。正月早々、華やかなムードはちょっと削がれます。

「愛の不時着」などと同じく、Netfilxでの鑑賞が可能だが、そもそもの韓国での作品のありようが違うのです。

他の有名韓流ドラマは「テレビで放映されたものをネトフリで再配信」なのですが、この作品は「Netfilxオリジナル」。特殊性とは「サブスク配信のオリジナル作品が韓国より先に世界で流行した」ということ。まずはとにかく、韓国の情緒にしっかりと合わせたものでもないということ。死や貧困。分かりやすいテーマが描かれている。

そういった背景もあり、そもそもの狙いが「大衆人気」というより「一定の層に爆発的に人気が出ればいい」という作り。他の韓流ドラマは「まず韓国でヒットする」ことを考えていますから、同じショーケースに陳列できないほどの違いがある。

日本でも今年、「渋谷ハロウィンのでのイカゲームコスプレ多し」の話をよく聞いたから、ちょっと若い人向けのコンテンツというところか。ちょっと内容がグロい上に、なかなか「大人の社交の場でのネタ」という感じにもならない。

また今年12月中旬、地上波の番組で松本人志さんが若手芸人から「松本さん月収半端ないでしょう」と突っ込まれ「まあイカゲームに2回勝つくらいかな」と答えてドッと湧いていたのを見ると「ブームとしては本当にすごい」ものには違いがありません。

結論的にいうと「グロくてもよければ、不時着より先にご覧になるのもよいのでは」というところです。

その他の2021年オススメ作品

では、仮に時間が多くあるとすれば「超ビギナー」はこの2作以外には何を観たらいいのか。

2021年発表作は、2020年に比べ「少々小粒」といった感は否めません。

筆者自身、2021年に執筆依頼を受けたほどに話題になったのはこの2作。

「ヴィンチェンツォ」

「海街チャチャチャ」

いずれも「スタジオドラゴン」という韓国の制作会社の作品です。「愛の不時着」を制作した会社でもある。いわゆる「テッパン」。

スカッとしたい方は「ヴィンチェンツォ」を。イタリア系韓国人のマフィアが、ソウルを舞台に繰り広げる勧善懲悪ストーリー。この作品、何が良いかというと「シンプルで見やすい」。恋愛ストーリーなどの寄り道が少なく、ギャグシーンのバランスもよく、スイスイと悪を倒すストーリーが進む。これまたドラマでも重要な要素だと感じさせるものです。

ホッコリしたい方は「海街チャチャチャ」を。ソウルの女性歯科医が田舎の港町で開業し、地元の不思議な存在感のイケメンに惹かれていくストーリー。ラブロマンス。この作品は第1回の最後のシーンが秀逸。ああ、こういう作り方があるんだと思わずヒザを打ったものです。

韓国社会のキーワードを読み解く 

また「ここからも続けて韓流ドラマを見る」点に興味がある方も「海街チャチャチャ」はオススメです。

なぜなら、2010年代以降の韓国社会でのヒットのキーワードがここに隠れているから。

「ヒーリング」

癒やし。ソウル都市圏を脱出して、地方都市で新しい生活を繰り広げる。美しい海の風景。映像でそこを映し出し、そこでストーリーが繰り広げられる。あるいは韓国語で「(日常)逸脱」とも言います。

2019年末~2020年のヒット作にもこういった要素が含まれます。

「椿の花咲く頃」

「サイコだけど大丈夫」

ソウルから東に行ったり、南下したり。主人公が海沿いの街に行く。本当にこれらが韓国でニーズがあるのだな、と感じさせます。なかなか実現できないからこそドラマでやってほしいのか。

ひとつだけマニアックなことを言うと「愛の不時着」はそういった流れのなかで「ちょっと主人公を北に行かせてみようか」という話になったのではないか。そんなことも思うのですが。仮説に過ぎません。はい、結局はマニアックなこと言ってしまいました。

結論です。

「2022年正月に超ビギナーにオススメしたい韓流ドラマ」。

圧倒的1位

1. 愛の不時着(それでもやっぱり)

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ほっこりしたい方

2.海街チャチャチャ

3.サイコだけど大丈夫

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シリアス~最後にスカッとしたい方

2. イカゲーム

3. ヴィンチェンツォ

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「韓流ドラマ見た」の話題に合わせたい方

2.梨泰院クラス(不時着と同じくらいに「観た」という人多し)

3.イカゲーム

筆者による参考記事:一年前はこんなことを言っていました。「巣ごもり正月の「韓流ドラマ鑑賞」 重要なのは「観る順番」!  知っておくべきたった一つのこと」

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/

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