【慰安婦判決】韓国での9日朝の報道。保守系「日本大使館関連の押収あるか?」革新系は「新たな勝利」叫ぶ

2015年「日韓合意」後の抗議デモにて。韓国ソウル市。筆者撮影

8日の「慰安婦判決」「日本政府に賠償命令」の報を受け、韓国メディアは何を報じているのか。

翌9日の朝、再び話題のインパクトが大きいことを知った。主要7紙のうち、じつに5紙が1面トップで扱ったのだ。

■保守系

「朝鮮日報」 ○

「中央日報」 ―

「東亜日報」 ○

■革新系

「ハンギョレ新聞」 ○

「京郷新聞」 ○

■中道系

「韓国日報」 ―

■経済紙

「毎日経済」 ○

じつのところ、最近の韓国でこれほどに日本関連の話題が大きく扱われるのは珍しい。昨年8月に日本で「日韓関係勝負の月」とも言われた時期以降、日本のほうが両国関連の話題に強い反応を見せる傾向にあった。

いっぽう、韓国側の意見がよく見えるのが、朝刊の社説だ。毎朝、各紙が2~3本掲載するなか、こちらでも主要紙の多くが今回の判決を扱った。

■保守系

「東亜日報」 “日・慰安婦賠償責任”判決…韓日両国外交で解決法を探せ

朝鮮日報と中央日報は掲載なし。

■革新系

「ハンギョレ新聞」 日本政府に‘慰安婦’賠償責任を問う歴史的判決

「京郷新聞」 “人権が主権の上にある”という“慰安婦”勝訴判決の響き

■中道系

「韓国日報」 慰安婦 初めての賠償判決…日本は真摯な謝罪から逃げるな

■経済誌「毎日経済」は掲載なし。

保守系紙は「現実路線」。「韓国側の対処」や「今後の財産押収の展望」を論じる

保守系で唯一社説を掲載したのが「東亜日報」だ。

「”日・慰安婦賠償責任”判決…韓日両国外交で解決法を探せ」というタイトルで、まずは日本の姿勢を指摘した。

「1993年の河野談話で慰安婦動員の強制性を認め、2015年の日韓慰安婦合意では『責任を痛感する』と話した。しかし法的な責任は認めていない」

この文脈は1965年の日韓基本条約からのものとも受け取れる。日本側は植民地支配を「当時の国際法上は違法ではない」という立場から条約を結んだ。韓国側はこれに強く反発してきたが、両国の国交樹立の交渉は当時すでに15年以上に及んでおり、双方の主張をぼかしつつサインに及ぶ「玉虫色」の決着となった。

いっぽう、「東亜日報」は韓国側の姿勢も指摘している点では、後に紹介する革新系媒体とは一線を画する。文在寅政権もしっかりやるべきだと。韓国の現状では「現実的思考」ともいえる。

韓国政府も裁判所の判決にのみ寄りかかるのではなく、能動的な解決法を見つけなくてはならない。文在寅政権は韓日慰安婦合意を認めながらも慰安婦問題解決のための代案を提示しなかった。強制徴用問題も政府レベルでは具体的な解決方法を見つけられずにいる。韓国と日本は安保と経済などの面で協力が不可避な隣国だ。同盟関係の復元を天命とするアメリカのバイデン大統領当選者が就任すれば、対中、対北政策などをもって韓米日3カ国の協調体制をより強化する可能性が高い。過去史の問題を乗り越え、未来志向的な韓日間系の構築に向け力を集中させなければならない」

他の保守系大手紙、「朝鮮日報」と「中央日報」は社説を掲載しなかったものの、「朝鮮日報」は大胆な展望を記事として掲載した。

「日本政府の財産を没収できるか…“大使館は不可侵、押収・売却できず”」

旧日本大使館@ソウル。現在この建物は取り壊され、大使館は近隣のビル内に位置する(写真は2014年当時)
旧日本大使館@ソウル。現在この建物は取り壊され、大使館は近隣のビル内に位置する(写真は2014年当時)写真:Lee Jae-Won/アフロ

今後、日本側が賠償金支払いに応じない場合を想定し、早くも「大使館関連のものを押収・売却できるのか」という点を論じた。

「まずは駐韓日本大使館の建物や敷地、大使館関連の車両に対する強制執行は不可能だ。ウィーン条約22条第3号に『公館地域と同地域内にある備品などの財産と公館の輸送手段は捜査・懲罰・押収または強制執行から免除される』と規定されている」

いっぽうで、大韓弁護士協会の日帝被害者人権特別委員会のチェ・ボンテ委員長(弁護士)のコメントを紹介している。

「イタリアの場合、ドイツ政府に対する賠償執行過程で(イタリア国内にある)ドイツ文化院内の財産を持ち出し、不動産競売にかけたことがある。今回の事例でも日本政府の債権押収などが考えられるが、実際の強制執行に入った場合、韓日関係は最悪の段階へと突入するだろう」

革新系紙は「裁判に出席せず」「国家免除を主張する」日本への判決にポイント

革新系の「ハンギョレ新聞」「京郷新聞」はそれぞれ「日本政府に‘慰安婦’賠償責任を問う歴史的判決」「“人権が主権の上にある”という“慰安婦”勝訴判決の響き」という見出しの社説を掲載した。

慰安婦支援運動全般は左派・革新系の市民団体が主体となっており、両メディアはいわば「身内」といえる。いずれも判決に肯定的な意見を述べているが、なかでも両媒体が大きく採り上げているのが「国家免除(主権免除)」という点だ。

「裁判の争点は韓国の裁判所が日本政府の行為に対し裁判権を持つのか、という点だった。日本政府は一国家の主権的行為は他国の司法判断の対象とはなりえないという『国家免除』の理論を打ち出している」

「京郷新聞」のほうは、上記の通りよりはっきりと見出しに「“人権が主権の上にある”という“慰安婦”勝訴判決の響き」とした。この判決が韓国で初めて下されたに対し、快哉を叫んでいるのだ。いわば「新しい勝利」であると。

「日本政府は判決を受け入れない立場を明らかにし、判決直後に駐日韓国大使を呼んで抗議を行った。予想したとおりだった。これからも日本は国家免除の原則を打ち立て、国際社会に訴える可能性が大きい」

中立系の「韓国日報」は「慰安婦 初めての賠償判決…日本は真摯な謝罪から逃げるな」と、「日本は謝るべき」という韓国でこれまで多く見られてきた主張を繰り広げた。

日々、韓国のニュースを眺めていて目立つのは徴用工問題も慰安婦問題も「裁判に応じない日本」が切り取られている点だ。「姿を現さない日本にも審判が下された」。今回の判定での革新系媒体の指摘ポイントはそこにあった。