【韓国の新型コロナ】解除と懲罰。ウソは「2年以下の懲役」も。集団感染再発後の対策は厳格に。日本は? 

14日夕方、会見に臨む安倍晋三首相。(写真:ロイター/アフロ)

連日、午前午後に行われる韓国政府による新型コロナ関連会見を閲覧し、記事をまとめている。14日は一日で両国の会見を聞くこととなった。18時からの日本の安倍晋三首相の「39県での緊急時値解除」の会見を閲覧し、「行動規制緩和」について思うところがあった。

韓国も4月下旬から段階的に行動規制を緩和しているが、これが今のところ悪い方向に出ている。6日にソウル梨泰院での集団感染が発覚したのだ。以降、政府の疫病関連の責任者(チョン・ウンギョン疾病管理本部長)が以前とは違う表現を使って警鐘を鳴らしている。

”静かな感染こそ要注意”

「このウィルスは症状がない状態でも伝播が可能です。そして大部分は軽症患者、症状がない状態もしくは現れる前の状態で最大値の感染を引き起こします。いわゆる“静かな感染”です。そして相対的に若い層が伝播を広める役割を果たしてしまうという点にもう一つの重たい事実がある」

それは、韓国の話だろう? とツッコまれそうだ。確かに日本とは社会体制と考え方が大きく違う。日本から見ると韓国は「プライバシーはさておき政府による情報管理が優先」という点はある。社会生活の様式も違う。しかしだ――。戦う対象たるウィルスは同じものなのだ。このコロナ危機の下、今の日本の実態を知るためには外国と比較は欠かせない。そのなかで韓国との比較を。

日本も韓国もここ10日の間で同様に「行動規制緩和」という局面を迎えている。状況が変われば、対策も変化せねばならない。当局が使う言葉も変わる。14日に日本の39県の緊急事態解除が発表されたことに際し、意見を。

14日の安倍晋三首相の会見では出てくるべき話が出てこなかった。変化を加えた結果、新たに大きな集団感染が起きた場合、どうするのかという現実的な話だ。

緩和後に集団感染発生の韓国。その対応の基本方針とは

昨日の原稿で、韓国の以下の点を紹介した。

「行動制限緩和」は「たとえ感染が起きても追跡可能な制度」「追跡の後にとにかく全員にPCR検査要請」とセットになっている。

【韓国の新型コロナ】ソウル梨泰院の集団感染者は119人に。「想定外」食い止める戦いは「スピード勝負」

とにかく集団感染を食い止めるためには、「スピードで感染者の実態を調査すること」が大切だと。今回の事態は、2月の宗教団体・新天地の集団感染時より、「調査スピード・感染者規模」の点ではポジティブな評価もある。いっぽうで14日の会見ではメディアから「宗教団体は信者名簿など実態を把握しやすかったはず。今回はそうではない点で難しさがあるのではないか」という質問が飛んだ。

悪い事態が起きたときの対処が、もともと準備されているということだ。というより、「少々のしっぺ返しもありうる」という前提で行動規制を解除している。上記の理由から、事態が「想定外」へと向かう瀬戸際にもあるのだが。

韓国の行動規制段階図。政府サイトより筆者が翻訳、作成。
韓国の行動規制段階図。政府サイトより筆者が翻訳、作成。

行動規制緩和後の韓国、会見でのここ数日の頻出ワードは「処罰」

これに加え、ここ数日の韓国政府の会見では「処罰」という言葉も目立つ。6日にこの集団感染が発覚後、行政側から今回の新型コロナ対策ではじめて「命令」が出されたからだ。これまでも韓国は日本と同様に政府・自治体からの「勧告」により国民への行動規制を求めていた。

12日の韓国政府疾病管理本部の会見では「大田日報」からこんな質問が飛んだ。

――今朝の政府の別の会見でも処罰の話がありました。いくつか系統が考えられます。1つは「ソーシャルディスタンス」などの決まりごとに関するもの。そして「感染予防法」に基づくもの。さらに集団感染の当事者の虚偽の証言にも可能だと考えられます。どうお考えでしょうか。

「ここ数日、自治体から行政命令としてナイトクラブなどの施設での厳しい営業ルールが課されています。「ソーシャルディスタンスの特に注意深い確保」「訪問客リストの作成」などです。命令発令後の違反事項については、感染症予防法に応じて罰金などが可能でしょう。処罰を下さなくてはならない場合も、全体的な疫学調査を行い、店舗のオペレーションや設備を確認した後、司法側と協議しながら適切に措置を取る予定です。ただし処罰の前に「ルールを守る」という姿勢から遵守されることのほうが望ましいです」(クォン・ジュヌク副本部長)

現地メディアには具体的にはこういった処罰が紹介されている。

・ソウル市ほか全国10都市が「遊興施設集合禁止命令」。実質上の「営業禁止」。違反した上で感染者が出た場合には、損害賠償が可能。

・当局による疫学調査時(感染者行動追跡調査)の際、不正、故意の事実欠落、隠蔽があれば2年以下の懲役または2000万ウォン(約200万円)以下の罰金に処せられる。

特に公職につく者へ対する姿勢は厳しい。全羅北道の保健所スタッフは5月6日に梨泰院を訪れたが、これを申告せず、12日に陽性が判明。また自主隔離も行わなったため感染を拡大させたがあるとして「国家公務員法上の誠実義務違反」に問われる可能性が報じられた。その他、集団感染の当事者となってしまった軍人には軍内での懲罰が決定。これは規則に反して夜間外出していたためのものだった。

ソウルの最高裁判所はスタッフに対し「仮に今回の連休で梨泰院に行ったことを自己申告すれば、所内での処罰は課さない」という通告を出した。

厳格な姿勢で、「スピード勝負」に協力をというスタンスだ。

日本にも「処罰」がないわけではない。筆者は今年2月に集団感染を起こした大邱に取材に訪れたため、3月上旬の日本帰国時に空港で聞き取り調査を受けた。この際、虚偽の供述には「50万円以下の罰金」が記されていた。

集団感染発生時の大邱市の交通の要所・東大邱駅前。緊急事態宣言はなくとも人出は”皆無”に近かった
集団感染発生時の大邱市の交通の要所・東大邱駅前。緊急事態宣言はなくとも人出は”皆無”に近かった

現実的に集団感染が起きた場合、どうする?

もちろん、筆者とてこんな韓国のような”縛り”は出来ることなら避けたい。そもそも韓国版マイナンバーカードや監視カメラを使った「追跡」については社会的制度や考えが違うから、拒否感も強いだろう。

しかしこの新型コロナは「緩めれば広がる」「静かに広がる」という点を韓国の悪い事例が示している。

日本とて、行動規制の緩和により感染拡大のリスクが増えないわけはない。今回の梨泰院集団感染のようなガイドラインを守らないケースでの感染拡大も起こりうるだろうし、注意を払っていても不可抗力での拡大も起こりうる。

もちろん予防がまずは大切。そこが第一。しかし今は、現実的な話も必要ではないのか。

「現実的に集団感染が起きた場合にどうするのか。その話が重要では?」

「緩めるのなら、別のところを締める」

「”攻め”に変化を加えるのなら、”守り”の準備も」

しかし14日夕方の安倍首相は「感染をゼロにすることはできない」「段階的に緩和してほしい」「感染が起きても山を小さくしたい」とは言ったが、「起きた場合にはどうする」という新しいアイデアがなかった。「PCR検査数を増やす」という点がかすかにこれを満たしているが、以前から幾度も聞いてきたものだ。基本的には「これまでの行動を続けてほしい」という話だった。やはり観念的。

現実的に39県での緊急事態宣言解除後、「集団感染が起きた場合、どうするのか」という話が今回の会見の核心となるべきだったのではないか。それこそリスクヘッジ。ここのところは批判が必要だ。直後に行われた専門家会議の会見で出てくるべきだったか? いやいやこれは、政治が決断する部分だろう。安倍首相が”別件”で騒がしいという話は別にした、他国の事例からの話だ。

あるいは地方自治体のほうがやりやすいのか。大阪の大阪府の吉村洋文知事の「大阪モデル」には「プライバシーを出来る限り守るなかでの感染者追跡システム」は「緩和+新しい規制」が当てはまる。この点は大いに注目すべき。日々あちらの会見を聞き続けている立場から感じるところだ。

(※筆者注:15日午前8時にタイトルを差し替えました)

<参考記事>

韓国の子どもたちが「コロナの一番えらい人」に聞いたこと。「コロナは どれくらい ちいさいですか?」

【韓国の新型コロナ】5月1日の政府発表「新規感染者8人」。連休中に”緩めつつ、引き締めつつ”

【コラム】コロナ日韓比較は無用。それでも「日本もやれる!」たったひとつのこと。

【韓国の新型コロナ】4月27日の政府発表「感染者10,738人」「増加は10人」。

【韓国の新型コロナ】4月28日の政府発表「新規患者は14人」。韓国も連休前だが「細心の注意を」

【韓国の新型コロナ】4月29日の政府会見「感染者6人増」。「こどもの日」に先立ち”特集”も。