【コラム】コロナ日韓比較は無用。それでも「日本もやれる!」たったひとつのこと。

話のメインはこのチョン本部長。韓国中央防疫対策本部YouTubeよりキャプチャ

韓国の話でがっつりと紹介したいものがあるのだが、まずは日本のことをちょっと。

シンプルに考えてみると、こうなるはずなのだ。このGWにかけての新型コロナにまつわる日本社会の構図。

政府・地方自治体が対策を立てた――――国民は日常生活の制限に耐える(患者や最前線で働く方々など慮りつつ)

何せ、目的は「我慢・辛抱」なのだ。精神力の問題だ。そしてお金の問題は本当に苦しいものだがこれは精神力では解決できない。これが精神的に本当に苦しい。

とはいえ、世の中そうシンプルにはいかない。

なんせまず、2月と3月に「科学より政治が勝りすぎ」と感じられる話が多すぎた。3月24日の東京五輪延期決定後、3月25日に「東京都が感染爆発の重大局面」という情報が出てきたり……。

その後、緊急事態が宣告された。サッカーだったら、「オフサイドのルールを決めた人に立腹、試合に集中できない」というところ。しかしゲームは刻一刻と進んでいく。ウィルスは感情を待ってくれない。

平日夕方の表参道/筆者撮影
平日夕方の表参道/筆者撮影

そうなると、新たな分裂が生まれる。

我慢すると決め込んだ人――――そうではない人

前者は「我慢すると決心したのに、なぜ文句を言って、その決意を揺らがせることをするのですか」と考える。

後者のほうが刺々しい。「なんで黙っているんですか」「だってルールを決める人がおかしいじゃないか」とストレスが溜まる。なにか同調してくれる人がいないかとネットを見て、より鋭利な感情になり、そして疲れる。筆者自身は完全に後者だが、とはいえ「我慢するしかない」という状況を悟り、せこせこと完全ロックダウン(外出完全禁止)に備えて準備をしている。あるかないかは知らないが。そうなったときのために。

家でホコリを被っていたプレステ4を取り出し、面白そうなソフトをネットで調べたりして。うーん、40代独身に何が効いたかというと、小池百合子さんの「ステイホームウィーク」という言葉だった。英語。日本語でのネット上の左右対立に疲れていたところ、英語が脳みそにスッと入ってきた。

伝える努力、について考える

とはいえ、何事にも必ず議論・批判は必要だ。本来は今こそそうあるべきなのだ。

「あくまでルールを決めるのは政府や自治体。だからできる限りでやれることをやる」という考え方がある。堀江貴文さんの昨今の主張はそうだと感じる。「規制のライン」なら、政府や自治体が定めているはず。なんで自らそれを増長することを行うのかと。「できるかぎりの経済は回しながら、日常生活に制限を加える」というのが日本政府・自治体の取った策のはずだ。

また、外国の情報を持ってきて「日本はおかしい」と批判する向きもある。筆者みたいな輩によるものだ。韓国との比較はもはやされ尽くした。特に検査数の差について。要は「なんであちらのように迅速に動けないんですか」という話だ。韓国もこの4月末から連休に入るが、国内旅行の予約が多く入っているのだという。つまり日本より速く動いた結果、現状ではよい状態にあるということだ。

しかし、日韓では社会の構造がそもそも違う点は無視できない。韓国は「プライバシーよりも管理を」という傾向。それが戦争と繋がっているのだ。以下の記事に詳しい。

だからここから記す韓国の「チョン・ウンギョン」という女性の話は、「せめて一つだけでも、やってみませんか」という話だ。筆者自身、ウィルスの専門家ではないから、疫学的な話はしない。こういうことだ。

「伝える努力」

安倍さん、そこは手放してはどうでしょう。そういう建設的な話。文系でも出来る話であり、文系だからこそ考える話だ。

韓国のコロナ担当次官の認知度がハンバなく高い

「コロナ・キャラ」が韓国にはいて、日本にはいない。

何かというと「今回のコロナ危機のなか出てきた、新しいキャラクターの専門家」。「この人が言うんだったら、まあ受け入れてみようか」と思わせる存在だ。

チョン・ウンギョン疾病管理本部長。漢字で「鄭銀敬」と書く。韓国の新型コロナ対策の関連省庁のトップだ。ソウル大学では学部時代に医学を専攻。その後修士課程では保健学、博士課程では予防医学へと進んだ。卒業後、政府の保健福祉部に進み、2017年から現職にある。

4月29日のブリーフィングの様子

彼女について、4月5日の米ウォールストリート・ジャーナルが「韓国の英雄」として記事を書いた。1月20日から連日定例会見に登壇する。そこでの言動を褒め称えてのものだ。

”彼女の一貫した率直さ、知識・情報に基づく分析、冷静さを忘れない沈着さは韓国国民にとっての強力な鎮静剤だ。恐怖が極限に達した時に「ウイルスが韓国を蝕むことはできないだろう」と発言。この言葉を韓国国民は本能的に信頼した。他の役職にある者ではなく、チョン本部長自身がそう信じていることを知ったためだ。国民もそれを真実だと信じた”

韓国政府からは次官級の権限を与えられている。所属の「疾病管理本部(Korea Centers for Disease Control&Prevention)」は政府の保健福祉部(省)の傘下組織だ。2003年のSARSを契機に、既存の国立衛生研究所(Korea National Institute of Health)が昇格し、設立された。モデルはアメリカの米国疾病管理予防センター(CDC)だ。

日本でも「8割おじさん」がブレイクしつつある。いっぽうでテレビでの解説者として白鴎大学の岡田晴恵教授が「スター」となったという記事を見たが、これが公的機関にいるというイメージだ。

チョン・ウンギョンさんが最初に”ブレイク”したのは2月頃だっただろうか。苦労のためか、白髪が短期間で増えたことが話題になった。丹念にかつ冷静に記者会見での質問に答え、そこに専門知識を滞りなく織り交ぜる。沈着さのなかで見せる、感情を込めた言葉にも共感の声が挙がっている。

4月28日、韓国は「新型コロナ発生から100日」としてニュースが組まれた。聯合ニュースは彼女についての話題を大きく取り上げた。

「危機の時に光を発する韓国国民の連帯意識に感謝します」

「いつでも爆発的な流行が起こる可能性もあります。防疫は引き続き進めましょう」

「マスクを手にしたとき、(危機に最前線で働く)医療陣の顔をはっきりと思い浮かべてください」

「冬に再度流行することもありえます。初心を忘れずに」

ツイッターには「ありがとう疾病管理本部」「がんばれ疾病管理本部」というハッシュタグが出来るまでになった。また保守系の媒体の多くは「本当の英雄は大統領ではなく、彼女」と報じる。

3ヶ月前にKBSニュースに出演した際の様子。

科学>政治が試された「対中国完全入国禁止せず」は「疾病本部の意見」

また、彼女自身の挫折の経験も「凄み」につながっている。2015年のMERS(中東呼吸器症候群)発生時には、中央MERS管理対策本部の現場点検班の班長を務めたが、「対応が未熟」として減俸の懲罰を受けた。

「このときも、”前線で頑張った”という評価もあったのですが、結果に対しての責任は免れえなかった。初期対応に失敗し、36人の死亡、186人の感染者、そして1万6693人に隔離を要請する事態を生んだのです。また2018年には国会の保健福祉関連の討論会に呼ばれ、保守系議員から『若者の間でエイズが拡散している』という質問を受け、答えに困った際には『今すぐこの場から去って下さい』と厳しい叱責も受けています」(韓国一般氏社会部担当記者)

科学>政治。この観点から見ると、韓国における最大の問題点は「対中国全からの入国禁止処置を行うかどうか」だった。大統領官邸の公式サイトには75万を越える禁止実行要請が入ったが、4月27日現在、結局これは行われていない。2月26日の定例会見で中央日報の記者から関連質問が出た。疾病本部としてはどういう立場なのかと。チョン本部長はこう返事を行っている。

「全面的な入国禁止、という点では政府内で意見の違いがありうる。当然、武漢や湖北省周辺の感染状況、中国全体の感染状況は常にモニタリングしている。疾病本部としては『全面禁止』としても中国からの入国者の約半分は(帰国する)韓国人となる点を考えている。そうなると、これを止めるというのは限界があり、また別の問題が生じうる。この点を政府に提言し、議論を行った上での意思決定となっている」

韓国政府は「対中国では強く出られない」。そういった見方は払拭できないが、少なくとも彼女は「全面禁止への反対は疾病管理本部からの意見」という点は明らかにしてみせた。

喋られて困る事情でも? 

彼女は政府の次官であり、確かに日本ではそういう権限を与えられた専門家は存在しない。

しかし「伝える努力」に関しては、せめてここからでも、制度に関係なくできることではないか。

日本だって、3.11の際には"エダノ"がいた。彼は災害の専門家ではなかったが、政府の官房長官として”ネロ(寝ろ)”というキャラが立っていたではないか。しかし、残念ながら今回は誰がこの問題の現場のリーダーなのかもよくわからない。

それともやっぱり「ベラベラ喋られると困る」という事情があるか。

とはいえ「別件」でもお忙しい、国家のリーダーの会見を待たずに済むという話でもある。「別件」はちゃんとお答えくださいね。国会内で。応援しているからこそ、ちょっと作業分担のご意見を。「忙しそうにしているリーダーに仕事をうまく手放してほしい」というのもまたシンプルな発想。とてもいい感じの忙しさには見えないので。

せめて細かい情報をもって「頑張ろうと言ってくれる役」が政府に欲しいという話でもあります。今のままじゃ、我慢しようというモチベーションを、そちらが下げています。正直なところ。「マスクの件」など、ポロポロと色んな件が出てくることもあって。

思うところがあるので、出来る限り毎日、チョン・ウンギョンさんが何を語っているのか記します。

【韓国の新型コロナ】4月27日の政府発表「感染者10,738人」「増加は10人」。

【韓国の新型コロナ】4月28日の政府発表「新規患者は14人」。韓国も連休前だが「細心の注意を」

【韓国の新型コロナ】4月29日の政府会見「感染者6人増」。「こどもの日」に先立ち”特集”も。