【ACLレビュー】根性論、上等。韓国勢を撃破した26日の浦和レッズから出てきた「聞きたかった言葉」

試合後の浦和レッズ大槻監督(本稿写真すべて筆者撮影)

日本2、韓国0、中国2。

結果はこうなった。26日に行われた、アジアチャンピオンズリーグラウンド16 から、ベスト8に勝ち残った東アジアの国別チーム数だ。

韓国勢は直前まで「2」を残す可能性があったが、結局は全滅となった。国内1強の全北現代モータースは、アウェーで上海上港と1-1と引き分けながら、ホームでも勝ちきれず1-1。PKで散った。

そして何より、浦和レッズと蔚山現代の試合では、大逆転劇が起きた。蔚山がアウェーで2-1と先勝しながら、26日の第2レグでは浦和が3-0の勝利。

このゲームを現地で取材した。

倒れるな。倒れるくらいなら相手を倒せ

試合後に勝利を喜ぶ浦和サポーターと選手
試合後に勝利を喜ぶ浦和サポーターと選手

試合後、日韓対決に臨むJリーグチームからいちばん聞きたかった話が聞けた。

試合後、浦和レッズの大槻毅監督が会見で口にした内容だ。

「今日の試合は、我々のほうがピッチにしっかりと立っていて、彼らのほうが倒れる回数が多かったと思います

倒れる、とはフィジカルコンタクトや球際で決して相手に屈しないことを意味する。話は続いた。

いろいろな戦略、作戦、戦術がありますが、試合前、そこ(ピッチに倒れる)の回数でゲームが決まるのではないかと、選手たちに伝えました。そこで上回れなければ勝てない。今日の選手たちのパフォーマンスには、非常に誇りを感じています」

共同取材エリアでは、宇賀神友弥が大月監督の指示の内容をこう明かした。

「倒れるな。倒れるくらいなら相手を倒せ」

それはもちろんファウルをするということではなく、球際に激しく行けということだった。

また、ハーフタイムにはこんな指示があったという。

「1点こちらが先に決めて、相手はホームのサポーターの前で絶対に負けられない気持ちを見せてくる。こちらも絶対に気持ちで負けるな

主審がフィジカルコンタクトに対しあまり笛を吹かない傾向も情報としてあったという。

2ゴールの興梠慎三。ACL日本人最多ゴール記録を23と更新した
2ゴールの興梠慎三。ACL日本人最多ゴール記録を23と更新した

筆者は日韓対決という観点に絞りきり、この対戦を見てきた。だから浦和の細かい戦術変更については知らない。尊敬する別の書き手の原稿を読んでいただきたい。

むしろ、フォーメーションなどの数字の話をすると本稿趣旨が薄まる。大槻監督とて、「戦術面ではあまり変えていない」と口にし、強くぶつかる話を強調したのだ。

根性論、上等。

強く戦って、韓国勢に勝った点に大きな意義があった。

昨日の浦和が「歴史的」だった理由

歴史的勝利だった。そう言い切れる。

冒頭に書いた「勝ち残りチーム=日2:韓0:中2」の比率が、「日1:韓2:中1」となる可能性もあった。大会での日本勢挽回の歴史の流れを絶たずに済んだのだ。

同時に2017年以降、ACL日韓対決で立場を固めてきた「力強いニッポン」のイメージを守った。そういう歴史的意義があったのだ。

17年に優勝した浦和レッズもまた「韓国のほうががより倒れていた」という話をしていた。18年の鹿島は準決勝で水原三星ブルーウィングスと激闘。相手を「以前とは違い、前線にボールを当ててくるサッカーをしていたので、プレスのかけようがなかった」と悔しがらせた。

それまでは、昨日アップした【ACLプレビュー】日韓比較から見る、26日の浦和レッズに「取り戻してほしいもの」にも書いたとおり、2009年以降のACLは韓国の「力技」に封じられるという苦々しい歴史があったのだ。韓国勢は09年から13年まで5年連続でファイナリストとなり、日本はゼロという時代もあった。

2015年、当代の最強チームガンバ大阪(2014年Jリーグ3冠)が、韓国のスモールクラブ城南にアウェーで0-1で敗れる(グループリーグ)という事態があった。相手は経営母体企業が手を引いたばかりの状態で、国内カップ戦の準決勝、決勝にPK勝ちを収めてなんとか出場権を得たクラブだった。今年大会に出場した大邸FC、慶南FCと同等か、それより小さなクラブだ。2017年、18年に2部リーグを経験した。

ガンバ大阪が圧倒的ポゼッションを誇ったゲーム後、相手のキム・ハクボム監督(当時)は涼しげにこう言い切った。

「ゴール前を、締めておけばいいんだよ」

これもまた「力技」に屈した事例だった。

2019年の浦和はここまで韓国勢に3連敗中だった。しかも蔚山現代とのラウンド16第1レグに1-2で敗れた初戦では、相手のキム・ドフン監督がこんな話をしていたのだ。

「浦和に先制を許したことが、結果的にはこちらに良く作用した。攻撃に出ないといけなくなったので」

力で封じられると考えた。たとえそのプランが崩れても、パワーを前面に出し攻めればなんとかなった、という話だった。

まだまだある「歴史的な理由」

浦和の大逆転劇は現地メディアでも大きく報じられた。インパクトのある見出しも踊った。

”Kリーグのプライド・蔚山、衝撃的な敗退”

「ニューシス」

”衝撃的敗退の蔚山、極端にゴール前に鍵をかけたことが毒に”

サッカー専門誌『ベストイレブン』

”浦和と浦和ファンにホームを占領された蔚山”

「イルガンスポーツ」

試合後の相手キム・ドフン監督の表情は曇りがちだった
試合後の相手キム・ドフン監督の表情は曇りがちだった

なにせ、前出の通り今年の韓国勢(全北と蔚山)は浦和に3勝を挙げていた。しかしベスト8に勝ち上がったのはわずか1勝の浦和のみ。その点でも重みがある。針の穴に糸を通すような勝ち方だ。

さらにこの日の蔚山文珠ワールドカップスタジアムは、芝生の張り替え工事に入る最後のゲームだった。蔚山はこの後、市内の別のスタジアムで国内リーグを戦う。2002年W杯前のオープン以降、20年近く1度も張り替えられていなかったのだ。決して良くない状態の芝生、そして豪雨。そういう悪コンディションで「力強い」とされてきた韓国に、力勝ちした点は本当に称えるべきだ。

「力強いニッポン」というのは、韓国からしてみれば確実な驚異だ。技術を捨てず、力強く戦う。かつての「ゴリゴリ戦う韓国」の象徴、90年台中盤から後半に韓国代表DFとして三浦知良をマンマークし続けたDF崔英一(現大韓サッカー協会会長)が言っていたことを思い出す。日韓の3部リーグクラブの試合を視察しながら、ボソッと言った言葉だ。

「お互いに体力を消耗した状態になったら、技術がある方が有利なんだよ」

根性論、上等。

これにて今季のACL日韓比較は終了だ。韓国勢が全て負けたので。

参考:戦術論がまったくなし、というのもどうかと思い、試合後に相手キム・ドフン監督に筆者から韓国語で聞いた内容を。

―第1レグと浦和が変わった点は?

初戦ではサイドからの攻撃が中心だったが、今日の試合ではウイング(シャドーストライカー)、MFが深く自陣に入り込んできた。選手たちには、ハーフタイムに相手のウイング(シャドーストライカー)のポジションをしっかり把握し、相手にスペースを与えないように指示した。蔚山の選手たちは戦術通り遂行してくれたが、相手のスペースを作り出す動きが上回った。