【キリンカップ】ブルガリア戦観戦に加味したい 韓国の「大敗」

大敗を選んだ? 韓国代表のシュティーリケ監督(写真は15年1月アジアカップ時)(写真:ロイター/アフロ)

本日3日、日本代表がキリンカップでブルガリア代表と対戦する。

この6月は”ヨーロッパ”を感じる時間になりそうだ。

日本代表はブルガリアのほか、デンマーク、ボスニア・ヘルツェコビナを迎えキリンカップを戦う。その3カ国が出場権を逃したヨーロッパ選手権が6月10日に開幕。”本場”との差はどんなものか。間接的に伺うことになる。

この時期がどういうものなのか。

よい比較対象となるゲームが行われた。

6月1日@オーストリア・ザルツブルグ。

スペイン6-1韓国

隣国の韓国は、6月の国際Aマッチデーに「欧州に出向く」という選択をし、本大会直前の強豪相手に砕け散ったのだった。

国内ではなく、遠征を選んだ韓国がどんな戦いを見せたのか。

スペインとのマッチメイキング

韓国がスペインと国際Aマッチを戦うのは、2012年5月30日以来(当時はスイスのベルンで対戦)だ。

”よくぞマッチメイクを実現させたな”という印象がある。

韓国は当時の対戦で1-4と惨敗。チェ・ガンヒ監督率いるチームは、守備的ラインからロングボールを蹴るスタイルで、欧州選手権(ポーランド・ウクライナ共催)に臨むチームに挑んだが、まったく歯が立たなかった。当時韓国メディアでは「もう強豪国がアジアのチームとの対戦を望まなくなる」という危機論が飛び出したほどだった。

いっぽう、近年の国際Aマッチデーでの強豪国とのマッチメイクを日本と比較するならば、韓国は”やや小粒との対戦”が多い。

2013年11月、日本はオランダ、ベルギーと欧州の地で連戦したが、この時韓国はスイス(@ソウル)、ロシア(@ドバイ)と対戦。2014年11月、日本がブラジル対戦した日(@シンガポール)には韓国ヨルダンとアウェーゲーム。2015年10月には、日本はワールドカップ2次予選の合間にアジアの強豪イランとのアウェーゲームを実現させたが、韓国はホームでジャマイカと戦った。

そういったなかでのスペインとの対戦。韓国はこれに続き、5日にはチェコ(ユーロ出場国)とアウェーで対戦する。

韓国とスペインといえば、02年ワールドカップでの“悪縁”が思い浮かぶが、2010年10月に両国のサッカー協会は「相互協力のための各書」にサインしている。選手や指導者育成、審判の技術交流、協会の行政に関する協力関係にある。ちなみに韓国はそのほか、「セルビア、ブラジルともよい関係にある。アジアではウズベキスタンとはマッチメイクがしやすい関係にある」(韓国のスポーツ新聞記者)という。

とはいえ、今回の対戦実現には監督の“顔”があったことは想像に難くない。 A代表監督、ウリエ・シュティーリケ。ドイツ人指揮官は現役時代に1978年から8年間レアル・マドリーのMFとして活躍。このうち4度最優秀外国人プレーヤーに選出されたキャリアを持つ。5月23日の欧州遠征メンバー発表の会見ではスペインを強く意識した言葉を口にした。

「2012年5月30日に行われた試合の映像を観た。1-4で敗れたが、2-8で終わってもおかしくはない試合だった。現在の選手にも編集して見せたい。また、スペインの最近の試合も見せたいと思う。選手たちには”自分たちはやれるんだ”という点を強調したい。誰を相手にしても我々が持つサッカーの哲学を忘れてはならない。自信をもってスペインに挑むつもりだ。韓国サッカーを観ていて感じることは、時折自信と勇気をもって試合に臨む姿勢が欠けるということ。勝つために準備をする。勝つという考えを持たなければ、遠征に行く意味がない。しっかり準備をして試合に臨みたい」

ちなみに韓国は今回の国際Aマッチデー期間(Kリーグ休止期間)、国内ではU-23代表の大会(ナイジェリア、ホンジュラス、デンマークを招待)を開催する。日本は先日、ヨーロッパに出向きトゥーロン国際大会を戦った。フル代表、U-23でホーム・遠征の使い分けがちょうど逆になったかたちだ。

本気モードだった韓国

上の言葉にあるように、スペインに臨むシュティーリケ監督は”ガチ”だった。

自ら率いる韓国代表は、2015年1月31日のアジアカップ決勝以来、「16戦無敗(没収試合になったワールドカップ2次予選クェート戦含む)」「10試合連続無失点(同)」を続けていた。一方でこれが就任後初めてのヨーロッパの国との対戦でもあった。

当然、現状でのベストメンバーを構成した。ソン・フンミン(トッテナム/イングランド)、キ・ソンヨン(スウォンジー)ら主軸に加え、FWにはアヤックス(オランダ)を解雇された後、ポルトガルで武者修行を続け、ポルトとの契約を勝ち取った大型ストライカー、ソク・ヒョンジュンを呼んだ。いっぽう、負傷のク・ジャチョルにかわり、今季中国1部に昇格した延辺のユン・ビッカラムを招集。イ・チョンヨン(クリスタルパレス)、パク・チュホ(ドルトムント/ドイツ)、キム・ジンス(ホッフェンハイム)は「出場機会が少ない」として招集外にした。

さらにシュティーリケの”ガチぶり”は遠征メンバーは通常の23人ではなく、20人にした点からも伺える。「遠征のたびに長い時間飛行機に乗ってもらうのに、毎回4人~5人のメンバーに出場機会を与えられない。ならば最初から人数を絞った」。”練習で選手を観ておきたい”といった余地もなし。試合前には「自分たちはスペインのスパーリングパートナーではない」とも言い切った。それくらいに強い意気込みをもって臨んだゲームだった。

20年ぶりの大敗

ところが、実際のゲームではシュティーリケ監督自ら「スペインの選手は映像とは違った」と口にするほどの力の差を見せつけられた。

スペイン6-1韓国

【得点者】 

■スペイン:ダビド・シルバ(30分)、セスク・ファブレガス(32分)、ノリート(38分)、モラタ(後半5分)、ノリート(後半9分)、モラタ(後半44分)

■韓国:チュ・セジョン(38分)

【先発メンバー】

■スペイン

GK:イケル・カシージャス(ポルト)DF:エクトル・ベジェリン(アーセナル)、ジェラール・ピケ(バルセロナ)、マルク・バルトラ(バルセロナ)、セサル・アスピリクエタ(チェルシー)。MF:ブルーノ・ソリアーノ(ビジャレアル)、セスク・ファブレガス(チェルシー)、アンドレス・イニエスタ(バルセロナ)FW:ダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)、マヌエル・ノリート(セルタ)、アルバロ・モラタ(ユヴェントス)

■韓国

GK:キム・ジンヒョン(C大阪)DF:ユン・ソギョン(チャールトン/イングランド)、キム・ギヒ(上海申花)、ホン・ジョンホ(アウグスブルク/ドイツ)、チャン・ヒョンス(広州富力) MF:キ・ソンヨン、ハン・グギョン(カタールSC)、ソン・フンミン、ナム・テヒ(レクィヤ/カタール)、チ・ドンウォン(アウグスブルグ)FWファン・ウィジョ(ソンナム)

序盤こそ、互角な打ち合いを見せた。韓国は3分に中盤のパスミスから、スペインに決定機をつくられるものの、8分にはユン・ソギョンが左サイドから中央のファン・ウィジョに低い弾道のクロスが入り、シュートまで持ち込んだ。数分後にはソン・フンミンが再びシュートチャンスを得た。

しかし”勝負”になったのはここまで。30分にダビド・シルバにFKを決められると、32分にはDFのヘディングでのバックパスをGKキム・ジンヒョンがファンブル。こぼれ球をセスク・ファブレガスに決められると「勝負あり」。38分に再びノリートに決められた。後半、スペインは4人のメンバーを入れ替えたが、それでも点差は開くばかりで、後半38分に途中出場のチュ・セジョン(ソウル。先日のACL浦和戦にも出場)が1ゴールを挽回したものの1-6の大敗を喫した。韓国が国際Aマッチで6失点を喫するのは、1996年アジアカップイラン戦(2-6)以来、20年ぶりという大敗だった。

ヨーロッパの強国とのマッチメイキングを望んだ

結局、シュティーリケが前日の記者会見で「守備ラインを上げて果敢にゲームに臨む」と言った点が大量失点の原因のひとつになった。

試合後、「東亜日報」や「毎日経済」はこぞってスペイン紙の見出しを引用してゲームを報じた。

「サッカー教習は15分で十分だった」

前半15分以降は韓国は相手になっていなかった、という意味だ。

その他の国内メディアもゲームの結果をバッサリと切り捨てた。

「アジアを出れば張子の虎」(中央日報)

「ポゼッション? 高い守備ライン? シュティーリケ・コリア、“すっぴん”を晒す」(朝鮮日報)

試合直後のシュティーリケ監督は「反省が必要」とやや弱気なところを見せた。しかし翌日、韓国メディアに対してこんな考えを展開している。

「監督として個人的な成績だけを上げようとするのならFIFAランキング100位圏の国や、韓国と近いレベルのチームと試合をすればいい。しかし今回、私はヨーロッパの強国とのマッチメイキングを望んだ。韓国の客観的な水準がどこか知りたかったからだ。スペインはFIFAランキング6位だが、もっと高い位置にいてもおかしくはない。多くの点が欠けているということを知った。厳しい言い方をすれば、追いつくのは難しいと言っていいほどだ」

日本も韓国も、過去のワールドカップ準備期間で“ショッキングな敗戦”を経験してきた。

■日本 2001年3月24日 フランス5-0日本 (@サンドニ) フィリップ・トルシエ監督時代

■韓国 2001年5月30日 韓国0-5フランス (@大邱)   フース・ヒディンク監督時代

2001年8月15日 チェコ5-0韓国 (@ブルノ、チェコ)  同

“大敗”というのはサッカーファン以外の国内の一般層には見栄えが悪いものだ。「何やってんだ? サッカーは?」と。しかし両国ともにこういった経験をした02年ワールドカップで歴代最高の成績を挙げている(もちろん、ホーム開催という要素は絶対的に大きいが)。

3日のブルガリア戦は、ハリルホジッチ就任後初めてのヨーロッパ勢との対戦だ。相手がどんな状態で、どんな“リアル”を感じ取るか。韓国の状況と比較してみるに、そこは絶対に見逃してはならない点だと感じる。