異文化理解に眼を向ける<続・通訳を使うテクニック 11>

前回は「ブリッジコーディネーター」について取り上げました。ブリッジコーディネーターとは、通訳としの能力に加えて、異文化理解のスキルがあり、折衝能力と幅広いネットワークを持ち、通訳としてだけではなく、事前の情報収集や下調べ、現地でのアポ取り、担当者が帰国した後のフォローまで任せられるコーディネーターです。

現地で臨時のスタッフを一定期間採用したと考えてください。たとえば、現地で業務を委託する場合、目安としてはおよそ15万円/月~20万円/月(日本円)が相場と考えたらよいでしょう。日本で採用する新入社員1か月分のお給料程度です。業務の難易度、緊急性、業務に必要な拘束時間の長短などの条件にもよりますが、ひとつの目安です。

ブリッジコーディネーターの最大のスキルは「異文化理解」です。日本人の考え方、仕事の進め方、日本の企業文化、ビジネスを進める上での注意点などが理解できること。また、双方の企業文化を理解し、どのように相手と折衝したらいいかを考え、実践する重要な役割を担います。時には徹底的に自己主張し、時には調整役になり、時にはシビアな交渉ごとにあたります。

「契約を守ってくれない」、「時間にルーズなところがある」、「情報の共有ができていない」、「担当者が転職した後、業務の引き継ぎができていない」など、中国側のビジネスの進め方に違和感を持つ方がたいへん多いことも事実です。一般的に日本人が中国人に対して持つイメージはマイナス部分がクローズアップされることが多いようです。

もちろん、中国側の「契約を守らない」「時間にルーズ」とった部分を擁護するつもりはありません。中国人に改善を望みたい点も多々あります。しかし、商習慣の違い、価値観の違いや仕事の進め方の違いなどから生じる単純なミスコミュニケーションやコミュニケーションギャップも少なくありません。

しかし、彼らの価値観や仕事観念、行動特性などを事前に知っておくと比較的容易に予防ができるトラブルもたくさんあります。ブリッジコーディネーターが日本の企業文化を理解しておくことが必要であると同時に、日本側も中国人の価値観や仕事観、中国人の企業文化も理解しておく必要があるのです。

では、どうやって異文化理解に触れたらいいか、自分たちとは違った価値観を持つ人たちを理解することはなかなか難しいことです。異文化セミナーでまず最初に皆さんにお話しすることは、「あたりまえを疑ってみる」ということです。

自分たちが「あたりまえ」だと思っていることが、海外では実は「そうではない」ということがたくさんあります。まず、この「あたりまえ」を疑ってみるという姿勢をもつこと、つまり「気づきの眼」を持つことが第一ではないでしょうか。

「時計を贈ってはいけない」、「日を改めて食事をご馳走になった御礼はしない」、「同僚の残業を手伝わない」、「情報の共有をしない」など、このコラムでもいろいろなテーマを取り上げてきました。(興味がある方はコラムバックナンバーを参照)一見すると、マイナスイメージに見えることでもひとつひとつにその理由があり、理解を深めていくにつれ、異文化理解の奥行きの深さに気づかされます。

私は海外出張のとき、よく「あたりまえの違い探し」をやりました。疑問に思ったことや不思議に感じたことがあったら、その場でメモに書き留めて、現地の友人や同僚に確認してみるのです。つまらないことでもひとつひとつ積み上げていくとそれぞれの関連性が見えてきたり、意外な事実を友人が教えてくれたり、けっこう楽しみながらいろいろなことを知ることができました。

また、異文化理解に触れるために何か一冊、本を読んでみるのもよいでしょう。一冊の本には著者の経験や様々なエピソードが凝縮されています。手軽に異文化理解に触れる第一歩になるのではないかと思います。ぜひ、お勧めしたい方法のひとつです。