曖昧な表現、二重否定や多重否定を使わない<通訳を使うテクニック 11>

通訳を使う際の注意点について、「話し手が注意すべきポイント」を取り上げています。今回のポイントは「二重否定や多重否定の表現に要注意」という内容です。

日本語はストレートな言い方より、曖昧な表現や遠回しな言い方で相手にこちらの意図を伝えようとする傾向があります。はっきりとした自己主張で意思表示をするより、相手に対して一定の共感の気持ちを示し、接点を探りながらコミュニケーションを図るのです。

たとえば、「おっしゃりたいことはよくわかるのですが・・・」といった表現。また「私もそう思います。しかし・・・」といった表現です。これは相手の立場に立ち、理解する姿勢を見せることで、次の展開へ話を進めるきっかけを作ろうとする気持ちが伺えます。

「共感の姿勢」を示すことで相手から別の考えやまたは譲歩を引き出したいという期待する気持ちも感じられます。相手の考えに一定の理解を示しながらも実は主張すべきことがあり、本心から相手の考えを十分に理解したわけではないのではないでしょうか。

こうした微妙なニュアンスまで通訳に訳させることは難しいかもしれません。中国人とのコミュニケーションの基本は「言うべきことははっきり言う」です。むしろ、「私は別の意見があります。それは、○○○です。しかし、あなたの考えの△△△の部分は理解できます」とこのように言い換えたほうがベターではないでしょうか。

まずは自分の考えを相手にしっかり伝える、次に相手に対する一定理解を示し、双方の妥協点を探る姿勢を見せる、こういう話し方を心がけたいところです。通訳もそのほうが訳しやすいはずです。

「おっしゃりたいことはわからないわけでもないのですが・・・」

「わからないわけでもない・・・」、「できないとわけではない・・・」、どちらも二重否定の表現です。これは通訳泣かせの表現です。たとえば、「できないわけではないのですが・・・、はっきりできると言えないわけではないが・・・」、これは果たして「できる」のでしょうか、それとも「できない」のでしょうか、実に曖昧な表現です。

単に「できる」か「できない」かという能力の問題だけではなく、「気が進まない」とか、「交換条件がある」とか、他にも「やる」か「やらない」かを決定する要因がありそうです。通訳にその言葉の背景やニュアンスまで理解させて、こちらの意図することを相手に伝えることはなかなか難しいでしょう。

誤訳や異訳を避けるためにも二重否定や曖昧表現は使わず、話し手はもっとストレートに告げるべきです。通訳が迷ってしまうような表現、通訳に判断を委ねるような表現は極力避けるべきです。

もし、「やらない」のであれば、「この件は現状ではまだできません。気になっている点があるからです。それは・・・(Aです、Bです、Cですと理由を告げる)」

もし、「やる」意思があるのであれば、「この件はできます。しかし、A、B、Cという条件が整わないとできません」と言い換えてみます。主張すべき内容をはっきり伝えるわけです。

曖昧な表現は避ける、二重否定や多重否定の表現を使わない、「イエス」は「イエス」と言う、「ノー」は「ノー」と明確に伝える、これがコミュニケーションの基本です。