通訳に伝えるフレーズは短く区切る<通訳を使うテクニック 9>

いくらよい通訳に巡り合えても、通訳を使う側が上手に使いこなすことができなければ、ビジネス折衝や交渉はうまくいきません。前回に続いて「話し手が注意すべきポイント」を取り上げます。

今回は「フレーズは短く区切って伝える」という点です。通訳が記憶とメモで適切な訳ができるのはおよそ30秒と言われています。これは話し手が話す時間です。つまり、話し手はおよそ30秒を目安に話を区切り、話を進めます。通訳が話を理解しているかどうかに気を配りながら、適当なフレーズで話を区切り、なるべく通訳に負荷がかからないような話し方をするように心がけるべきです。

企業訪問で自己紹介の場面や重要な案件でのミーティング時に、話し手が1分も2分も間に通訳を入れずに長々と話す人がいます。中には通訳の存在をまったく気にせず、話に夢中になり、演説を始めてしまう人などもいます。通訳が記憶とメモで適切な訳ができる適切な長さはおよそ30秒です。話し手もこの30秒という時間の感覚を意識しながら話したいところです。

「同時通訳」と「逐次通訳」

以前、このコラムでも取り上げましたが、通訳には「同時通訳」と「逐次通訳」とがあります。ビジネス折衝や交渉ごとは通常、「逐次通訳」で進められます。「逐次通訳」とは話し手が言葉を区切り、通訳は区切られたところまでを訳していく方法です。話し手は話した言葉を通訳が訳し終わるまで待たなければならないので時間がかかります。

これが最大のデメリットです。話し手が話す時間に加えて、通訳が訳す時間も考えなければなりませんから、ほぼ2倍の時間がかかります。一往復のコミュニケーションにはまたその2倍の時間がかかるということです。(中国語は音節は日本語より短いので厳密には2倍より短いですが・・・)

逐次通訳のメリットは通訳が訳している間、話し手は相手の表情を観察することができることです。この時間を利用して自分の考えを整理し、次の展開を準備することもできるわけです。

「同時通訳」は実はビジネスには不向きです。一般的にはセミナーや講演などで行われることが多いわけですが、時間の節約にはなる反面、通訳者の表現は文法に忠実な言い回しではなく、聞き手にとって聞きづらい表現になることもあります。

つまり、耳に入った単語を反射的に置き換えるので、通訳者に対して文章(表現)としての高い完成度は要求されません。主語を後から補足したり、動詞や重要ポイントを繰り返したりすることは一般的です。同時通訳者に求められるスキルは瞬時に言葉を置き換えるスキルです。

一方、逐次通訳者には聞き取ること、理解すること、言葉を記憶しながら置き変えて、整理し、相手が聞き取りやすい言葉で表現すること、この一連のプロセスが要求されます。実は、同時通訳者より逐次通訳者のほうがより高いスキルが要求されるのです。(同時通訳者に求められる「言葉を瞬時に置き換えるスキル」は一定期間のトレーニングを受けると習得が可能)

通訳に伝える言葉は短く区切る

話し手はフレーズをできるだけ短く区切って話すことが大切です。目安はおよそ30秒と考えましょう。通訳にかかる負荷を考えて、できるだけ短いフレーズに区切って話をします。逆に、あまり短すぎるとフレーズが断片的になり、話し手が伝えたい全体の意味がつかみづらくなります。長さの加減は必要です。

企業訪問のとき、訪問先の企業で話し手が2分も3分も長々と話すことがよくあるのですが、話し手が通訳を使うことに慣れていない場合ほど、こういうケースが多いようです。通訳は話を遮って通訳に入るタイミングを計りかねているはずです。

あまり長すぎると通訳は話の内容を把握し切れなくなったり、重要なポイントが訳し切れなかったり、単語を聞き逃したりすることもあります。どんなに優秀な通訳でも話が長引けば、負荷は大きくなります。通訳の表情を見ながら、話の長さを調整したいところです。

また、話し手は通訳が取るメモを意識してみるとよいでしょう。メモを取る手の動きを見ながら話します。通訳がメモが取りにくいような話し方では、話し手が言おうとしていることが相手に伝わるはずがありません。メモが取りやすい話し方を心がけることも、通訳をうまく使うコツのひとつです。