「同時通訳」と「逐次通訳」、どちらのほうが難しい? <通訳を使うテクニック 2>

「同時通訳」と「逐次通訳」とはどちらが難しいしょうか?「逐次通訳」とはフレーズごとに話を区切り、それを通訳が訳していくパターンです。話し手と通訳とが交互に話していきます。たいていの皆さんは「同時通訳のほうが絶対に難しいはず」と考えます。しかし、実は通訳者には「逐次通訳」のほうがより高い技能を求められるのです。

「同時通訳」とは文字通り話し手が話すのにあわせて、言葉を追いかけながら被せるように訳していく方法です。テレビの生放送や実況中継などでご覧になったことがある方もいらっしゃるでしょう。「同時通訳」は言葉が聞こえてきたら、瞬間的にその言葉ひとつひとつを相手方の言語に置き換えていきます。

実はこの作業はスキル習得のためのトレーニング方法で訓練を受ければ比較的容易にそのスキルを習得することができます。(「シャドーイング」という同時通訳者を養成するためのトレーニング方法があります)もちろんどちらの場合もある一定レベルの語学力があるという前提です。「同時通訳」とは訳した言葉を記憶しておく必要がありません。訳し終えた言葉はどんどん頭の中から消去してもかまわないわけです。さらに、聞こえてきた言葉を聞こえてきた順にどんどん訳していきますから、訳す言葉がきれいな正しい文法にならなくてもかまわないのです。

例えば、「大統領が発表しました。議会公聴会で・・・、追加的経済措置を・・・、共和党議員の要求に配慮して・・・、大統領は公聴会で発表しました」というように、同時通訳が訳するこうした日本語を耳にしたことがあるかと思います。同時通訳では「大統領が共和党議員の要求に配慮して追加的経済措置を議会公聴会で発表しました」というようにきれいな日本語の文章にならなくてもいいわけです。

一方、「逐次通訳」は違います。聞こえてきた言葉をまず耳で聞き取って、頭で理解し(記憶と整理)言葉を置き換えて、相手の言語に訳し、わかりやすい表現で相手に伝えるといういくつもの機能を同時に行っていかなければなりません。もちろん、訳した言葉は文法的にも受け手の聞きやすさという点でも「同時通訳」より高い完成度が要求されます。

これが「同時通訳」より「逐次通訳」が難しいという理由です。もちろん「同時通訳」は誰でもできるわけではありません。まずは語彙力があるという前提です必要です。もちろんある一定の聴解力や会話力も必要です。ここで申し上げたいのは、言葉の置き換えはトレーニングさえすれば比較的容易に修得できるということです。

話し手は通訳の表情を見る余裕、聞き手の表情を見る余裕を

通訳がメモと記憶で訳すことができる時間はやはり30秒が目安です。ベテラン通訳の技量に頼るのではなく、話し手側が「通訳が訳しやすいような表現」に気を配るべきです。「通訳が訳しやすいような表現」とは、つまり、「聞き手にも伝わりやすい表現」です。

話し手は「余裕」を持った話し方を心がけたいところです。ひとつ目は、話しているときに通訳が話した内容が理解できているかを見る余裕です。自分が言ったことを通訳がきちんと理解できいるか、通訳の表情をしっかり確認する余裕です。通訳にさえ伝わっていなければ、自分が言いたいことが聞き手側に伝えることができるわけがありません。

2つ目は、通訳が訳しているときに聞き手がどんな表情で通訳を話を聞いているかを見る余裕です。通訳が訳しているときの聞き手の表情です。通訳が訳しているときに、次に話すことを一所懸命考えている話し手がいます。しかし、できれば話す内容は整理をしておいて(通訳にも概要を伝えておいて)、通訳が訳しているときには聞き手の表情をじっくり観察したいところです。

聞き手が通訳の話を聞いた後でどんな反応をするかを予測しながらミーティングを勧めていく余裕。こうした余裕です。たいていは話すことに精一杯で、聞き手の反応を確認する余裕もなく、通訳が訳している間は次に自分が何を話すべきかを考えていて聞き手の反応を見る余裕がまったくない人がいます。中には話し手が自分の世界に入り込んでいて、伝えたいことを伝えるだけで相手の反応をまったく気にしていないという人もいます。

こうした「余裕」がビジネス折衝や交渉を有利に進めるために、全体の話の流れを組み立てる余裕に繋がります。「余裕」がないところに相手に訴えかける「言葉の力」は生まれません。時には徹底的に論理的に・・・、時には言葉にじっくりと感情を込めて・・・、言葉を発したいところです。