通訳がメモと記憶で訳すことができる時間は30秒が目安 <通訳を使うテクニック 1>

今回からこのコラムでは「通訳を使いこなすテクニック」をシリーズで取り上げていきます。

◇通訳がメモと記憶で訳すことができる時間は30秒が目安

◇「同時通訳」と「逐次通訳」とではどちらが難しい?

◇いい通訳を見つける方法、プロの通訳かどうかを見る判断基準

◇話し手が注意すべきポイント

以上のようなテーマを取り上げていきます。

海外視察で企業訪問や工場見学の場面を想定してください。仕事がら日本のお客様をご案内して台湾や中国で企業訪問をすることが多いのですが、そんなときにつくづく感じるのは日本側が通訳者を十分に使いこなせていないということです。ずばり言うと通訳の使い方が下手です。通訳者の能力を十分に引き出せるかどうかという以前に、通訳を使う基本の基本をわかっていない方もいます。話し手が注意すべきポイントは、第一に話の長さ(通訳との間合い)、第二に話のポイント(結論を明確に)、第三に話し手の余裕(聞き手の反応確認)の3つです。

時間を気にせず1分も2分も話を続ける人がいます。話をどのタイミングで切って通訳に訳をお願いするか、これは話し手側にも慣れ(コツ)が必要です。この通訳との間合いを気にせず話が続く人がいたり、逆に話が細切れ過ぎて通訳者が話し手が伝えたいポイントが理解できなかったりすることがあります。

また、結論をはっきり伝えず、長々と背景説明から入り、結局のところ何が言いたいのかわからないまま話が長々と続く人がいます。しかもひとつひとつの説明も曖昧で、伝えたいポイントをはっきり口にせずに相手が悟ってくれることを期待するような話し方をする人がいます。

さらに、話し手は余裕を持った話し方を心がけたいところです。話しているときに通訳が話した内容が理解できているかを見る余裕。通訳が訳しているときに聞き手がどんな表情で通訳を話を聞いているかを見る余裕。聞き手が通訳の話を聞いた後でどんな反応をするかを予測しながらミーティングを勧めていく余裕。こうした余裕です。

話すことに精一杯で、聞き手の反応を確認する余裕もなく、通訳が訳している間は次に自分が何を話すべきかを考えていて、聞き手の反応を見る余裕がまったくない人がいます。中には話し手が自分自身で自分の世界に入り込んでいて、伝えたいことを伝えるだけで相手の反応をまったく気にしていないというケースもあります。

また、けっこう多いのは曖昧な表現をする日本人です。言いたいことをはっきり言わない。一を伝えたら十を悟ってもらおうとする。結論を最後に持ってくる。このような話し方をする人です。

ご本人は外堀から徐々に埋めていこうと考えているのかも知れませんが、こんな話し方をする人は「通訳泣かせ」です。もし、私が通訳をお手伝いする現場にいたら、「相手に伝えたいポイントはなんですか?」「結論を先に言ってください」と口を挟んでしまうところです。

通訳がメモと記憶で訳すことができる時間は30秒が目安

メモと記憶で訳すこと訳すことができる適正な時間はおよそ30秒です。話の組み立て方や話すときの声やフレーズの区切り方など、話し手側が気を配れば通訳はよりいっそう高いレベルの技能を発揮できるはずです。

企業訪問の自己紹介の場面で、日本語がわからない相手であれば、間に必ず「通訳」が入ります。自己紹介の時間では自分が話す時間だけではなく、通訳が訳す時間も考慮しなければなりません。また、ミーティングや商談のとき、1分も2分も長々と話す人がいますが、フレーズの長さは30秒程度を目安にするべきです。中には通訳の存在をまったく気にせず、長い演説を始める人もいます。通訳がメモと記憶で訳すこと訳すことができる適正な時間はおよそ30秒と考えておきましょう。

例えば、時計を見ながら1分間何か話をしてみてください。「1分間」という時間が意外に長い時間であることがわかるはずです。通訳を使って話をするとき、フレーズの長さは30秒程度と心得ておくべきです。要点ごとにフレーズを短く区切って、短いフレーズで伝えたいことを簡潔に話すことがポイントです。

それから、中国語と日本語は文法構造が異なります。日本語に比べて中国語はひとつの事柄を表現するときに短い語彙ですませることができます。短い音節で日本語より時間をかけずにコンパクトに表現できることも特徴です。だいたい日本語で1分ほど話をすると、中国語の訳は

話し手側が気を配れば、通訳はより高いレベルでの対応が可能

日本語を中国語に訳する場合、中国語で話す長さは日本語のおよそ4分の3ぐらいの時間と考えるといいでしょう。逆に中国語で1分話の話を日本語に訳する場合、日本語は1.3倍ぐらいの時間がかかることになります。

話し手のスピーチが1分でも2分でも、長々と続いても話し手が話した内容を忠実にかつ的確に訳してくれる通訳もいます。優秀な通訳です。言葉の一言一句を丁寧に訳し、ジョークまでも見事に訳してくれる通訳もいます。本当のプロの通訳です。

しかし、通訳がプロの通訳であっても、話し手が無造作に日本語を話せば、通訳には少なからず「負荷」がかかることになります。まして事前に通訳者のレベルをチェックすることはなかなか難しいことです。通訳者にかかる負担は話し手はなかなか想像できません。通訳者に必要以上の負荷をかけないためにも話し手側の気配りが必要です。

通訳の技能とは、メモを取る、記憶する、頭の中で訳すべきポイントを整理する、言葉に出すべきポイントをまとめ直す、相手側の言葉に置き換えて話す、つまり通訳者はこの5つの動作を瞬時に行っているのです。話のテーマと流れ、話し手のリズムとフレーズ、この点を考えた場合、やはり30秒ぐらいでフレーズを区切って言いたいをまとめるのが適切です。

次回は「同時通訳」と「逐次通訳」とではどちらが難しいか、というテーマを取り上げます。