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「人」が見えた福島第一原発視察 視察した大学生の声

吉川彰浩一般社団法人AFW 代表理事
免震重要棟内で説明を受ける大学生の皆さん

前回、「福島第一原発」 原発事故後「初」となった大学生との視察で見えた課題と希望」と題して、お連れした立場からの記事をお届けしました。

福島第一原発事故後の社会を担っていく世代はどのように感じたか、11月19日に、実際に視察され大学生の方の感想をご紹介します。

視察したルート

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今回視察では、働く方々と同じように入退域管理施設と呼ばれる建物で防護装備を整え、入退域管理施設→多核種除去設備→汚染水タンク群エリア→1~4号機原子炉建屋周り→5,6号機原子炉建屋周り→港湾廻り→免震重要棟→入退域管理施設の順に、バス車内より視察しました。外観にはなりますが、構内のほぼ全域を視た形になります。

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視察した大学生の感想

視察する前にどのようなイメージを持っているかを伺いました。全員に共通していたのは分からないにつきます。その分からないは廃炉の進捗状況だけでなく、そこに関わるも含まれていたことが感想から伺うことができます。

見学を通して感じたこと、それは “現場で廃炉作業に従事されている職員”抜きには福島原発のことを考えれなくなったことだ。私たちが見学している際にも余震があり一時緊張が走ったのだが、目には見えない放射線の怖さも含めて生々しい事故の惨禍がそこにはまだ残っている。そのような現場において、危険を顧みずに廃炉作業に取り組まれている作業員の姿を垣間見て、大きく心が揺さぶられた。「どうしてこれまで私はこの視点がなかったのだろうか。」廃炉作業の問題は、エネルギー供給を原発に頼るのか否かとはまた別の話だ。イデオロギー対立云々の前に、まず何よりも廃炉作業最前線で作業されている方々一人一人に心から敬意を払わなければならないと痛感した。(学習院大学 法学部政治学科 4年 檜垣賢一)

時間が止まったままの世界を抜け、F1の敷地内へ進みました。その雰囲気と言えば、緊張感そのものでした。安全保障的にも非常に重要な場所であるが故でしょうか。厳重なセキュリティを越え、敷地内移動用のバスに乗り、視察が始まりました。緊張感に包まれる中、僕はどきどきしていました。「あの日、あのとき」、日本を、世界を震撼させたF1を目の前にして身震いしたのを覚えています。また、道中、至る所で作業なさっている作業員の方を拝見致しました。拝見する度、なんとも言えない気持ち、只々、「いつも、ありがとうございます。」と言いたい、そんな感謝の気持ちを禁じ得ませんでした。良いか悪いかの議論以前に「感謝」の気持ちを忘れないよう在りたい、なぜなら、作業員の方々の積み重ねていく日々が、この郷土の、また、この土地に想いを寄せる人々の「これから」なのですから。(早稲田大学社会科学部1年 猪俣翔平)

今回の視察において「福島の廃炉は、今後30年・40年と取り組んでいかなくてはならない課題である」と、様々な方がおっしゃっていた。これから先の長い廃炉への道を担うことになるのは、恐らく私たち今の大学生の世代だ、とも聞いた。私たちはこれから、溶解したデブリの取りだしや汚染水の除去など様々な問題に立ち向かわなくてはならない。そのために新たな技術を開発し、取り入れ、活用しなくてはならない。間違いなく、難しく大変なことだろう。これだけ聞くと悲観したくなるだろう。しかし、私はこれをある種の「チャンス」と捉えていければ良いと思った。日本の科学技術の発展を目指し、世界で一番「上手に」原子力と付き合っていける国を目指せば良いのではないだろうか。原発の問題を、批判的に・悲観的に見るばかりではなく、廃炉に真剣に携わっている方々を尊敬し、そして皆で新たなことへ挑戦するのだと言う気概を、持てたらいいと感じた。私が視察で得たのは、行く前の予想とは違い「希望」のような、暖かく熱い気持ちであった。(慶應義塾大学総合政策学部2年 大橋南菜)

私は2014年春から現在まで、福島県浜通りの自治体にて教育支援活動に取り組んでいます。震災及び原発災害により被害を受けた地域に対し、電力を供給してもらっていた東京の住民として、少しでも何か復興に寄与できれば良いと思い始めた活動です。

このような活動がマスコミの方に報じられると、決まって「そんな危険な場所に行くのはやめろ」というような意見がコメントに寄せられます。避難指示が解除された地域では、既に震災前の日常が戻っていることはまだ認知が足りていないのかも知れません。過去の震災と比べると、その背景には福島第一原発への恐怖や無理解があることは明白です。

今回の視察の実施は、大学生でも安全に構内を視察できることが示されたことに大きな意義があると思います。学生の目から見た福一は作業員の方が非常に熱心に、前向きに廃炉に取り組み、活力に満ちた現場でした。福島第一原発の実情の理解の促進が福島の復興に繋がると考えます。(慶應義塾大学総合政策学部2年 森雄一朗)

が関わっていく課題」として寄せられた感想からは、私達も、そのの一人であることが伝わってきます。

一般社団法人AFW 代表理事

1980年生まれ。元東京電力社員、福島第一、第二原子力発電所に勤務。「次世代に託すことが出来るふるさとを創造する」をモットーに、一般社団法人AFWを設立。福島第一原発と隣合う暮らしの中で、福島第一原発の廃炉現場と地域(社会)とを繋ぐ取組を行っている。福島県内外の中学・高校・大学向けに廃炉現場理解講義や廃炉から社会課題を考える講義を展開。福島県双葉郡浪江町町民の視点を含め、原発事故被災地域のガイド・講話なども務める。双葉郡楢葉町で友人が運営する古民家を協働運営しながら、交流人口・関係人口拡大にも取り組む。福島県を楽しむイベント等も企画。春・夏は田んぼづくりに勤しんでいる。

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