福島第一原発 地下水汲み上げ設備「サブドレンポンプ」稼働報道前に抑えておきたいこと 

増え続ける汚染水タンク 2日に1基のペースで作られている。

8月25日、福島第一原発汚染水対策の一つ、サブドレンポンプ稼働に向けて「福島県漁連”容認”」の報道がありました。

「汚染水を浄化し海へ放出」と報じられたことで、多くの方は「汚染水がまた海に放出される」と感じられたことと思います。そして漁業関係者への方々への不信というものに繋がったのではないでしょうか。ですが、これには大きな誤解が含まれていると感じます。

9月3日にサブドレンポンプの稼働(汲み上げ)が始まる前に、このサブドレンポンプ稼働の背景をお伝えすることで、少しでも誤解を解くことへと繋がり、漁業関係者の方々の「容認」という「覚悟」へのご理解へと繋がればと思います。

サブドレンポンプを理解するには、まず「なぜ汚染水が増えるのか」を知ることが必要です。

汚染水が増える仕組み

現在、福島第一原発の冷却システムは循環冷却という方法が確立しています。原子炉上部から注水した冷却水は、デブリ(溶けた燃料)を冷やし、デブリによって破損した原子炉圧力容器から原子炉建屋地下へ流れます。(ここで既に地下に滞留している汚染水と混じり高濃度放射性廃液となります)そして地下で繋がるタービン建屋に冷却水が汚染水となったものが流れます。タービン建屋側に流れた汚染水は汲み上げ後、浄化され、また原子炉上部より注水する流れになっています。

この循環冷却においては汚染水が増えることはありません。ではなぜ汚染水が増えるか。これは原子炉、タービン建屋地下から流入する「地下水」が原因となっているためです。

汚染水は日に約300トンのペースで増え続けている

一日に1~4号機に流入する地下水は約300トンに上ります。これを放置すれば原子炉建屋及びタービン建屋地下から溢れ、高濃度の汚染水が海へ流れることになってしまいます。それを防ぐため、海抜45mを超える高台に「汚染水貯蔵タンク」を設置し、浄化した汚染水を貯めているのが現状です。地上に保管し続けるため、現在1200トン容量のタンクを2日に1基作り続けています。

サブドレンポンプを稼働するのは、敷地内のタンク設置面積に限りがある以上、汚染水を増やさない事が急がれる案件だからです。それは「これ以上、海を汚染させない」ということに直結しています。将来の為、早急に解決しなければならない課題が背景にあります。

どうすれば増え続ける汚染水を減らすことが出来るのか?

原子炉建屋内地下に流入する地下水を減らすことが出来れば、増え続ける汚染水の大きな軽減が見込まれます。それが今回稼働される、建屋外近傍に設置した「サブドレンポンプによる地下水の汲み上げ」です。

サブドレンポンプの稼働で抑えておきたいポイント

  • 建屋内汚染水が地下水側へ流出しないように管理されている

建屋内地下水の水圧が地下水の水圧より低くなるように水位で管理されています。これは建屋内への流入はあっても、建屋外へ流出を抑えるためです。

  • 汚染源となっている原子炉建屋内に流入する前に汲み上げる

先述した通り、サブドレンポンプは建屋内へ流入をする前に地下水を汲み上げます。「汚染水」に触れる前に汲み上げる設備です。これにより見込まれる軽減効果は、300トン/1日→150トン/1日です。

  • 浄化処理を行う

原子炉建屋外とはいえ近傍の地下水です。これを地下水だからそのまま放出すると言う事は行いません。浄化処理を行い、WHO(世界保健機関)の飲料水基準より厳しい管理値で運用されます。下記の目標値に達しなければ構内で保管されます。

WHO(世界保健機関)の飲料水基準

セシウム134: 10ベクレル/リットル未満

セシウム137: 10ベクレル/リットル未満

全ベータ : -

トリチウム : 10,000ベクレル/リットル未満

サブドレン放出管理値<運用目標>

セシウム134: 1ベクレル/リットル未満

セシウム137: 1ベクレル/リットル未満

全ベータ : 3(1)ベクレル/リットル未満※ 

トリチウム : 1,500ベクレル/リットル未満

※10日に一度程度で1ベクレル未満である事を確認

  • 東京電力だけの判断で行わない

先述した基準を満たしている事を第三者機関より確認を受けます。

サブドレンポンプ稼働の実態は、将来への海への過大汚染を防ぐため、地下水の建屋流入により日々増える高濃度汚染水を、汚染源(建屋内)に触れる前に汲み上げ、高濃度汚染水を約150トンに減らす試みです。

漁業関係者の方々の容認は苦汁の判断と伝えられました。それは廃炉への取組を知らない、分からない私達が苦汁に追い込んでしまっている現状もあるのではないでしょうか。将来に渡り海を守り、そして生業とする方々だからこそ、社会の批判が自分達へ向くことのリスクも承知の上で覚悟をされた、「苦汁」の判断であると言えます。

漁業関係者の方々の覚悟への思いに応えるためにも、端的に報じられる内容だけで判断しないこと、廃炉の仕組み、取組について理解をすることが重要ではないでしょうか