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今日は「父さん育児」(10月19日)の日~帰りの電車で「父親」を考える~

吉田大樹労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表
(写真:アフロ)

男性の働き方が社会にもたらしているもの

ただの語呂合わせに過ぎないが、今日は10月19日「父さん育児」の日だ。

「イクメン」という言葉が流行語になってから早5年以上が経過したが、言葉としての定着感はあるものの、働き方の見直しはなかなか進んでいないというのが実情だろう。

まだまだ数としては少ないが、子育てに積極的に取り組んでいる父親たち。しかし、そうした父親は一面的には、「恵まれた父親」という見方がされがちだ。もちろん、そうした面もあるとは思うが、職場の中で上司や同僚の理解を得ながらようやく育児休業を取得した父親、子どもと接する時間を作れずに悩み転職した父親、共働きの中で妻と対話を繰り返しながら自分たちの家族のカタチを見出した父親、、、などなど、父親がさまざまな工夫をしながら乗り越えていっているその姿をもっと社会が認知をしていくべきであろう。

今日は厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会」が主催する「イクメン推進シンポジウム」も開催され、子育て中の父親がその思いを語る「イクメンスピーチ甲子園」の決勝も行われた。もっと多くの父親が子どもや子育てについて語ることで社会的な理解が進むことをねらったものだ。

しかし、「女性の活躍」に続き、「一億総活躍」。。。

趣旨としては理解できなくもないが、結局に総花的な政策になってしまい、一体何がしたいんだか。。。という状況にならないことを切に祈りたい。根本的な問題は「男性の働き方」なのだから、もし仮に「活躍」に力を入れたいのであれば、そちらの担当相を設けるべきであろう。

「男性の働き方」が変わらなければ、下記のような問題は今後も続くことになるだろう。

  • 長時間労働⇒生活習慣病、過労死
  • 「働け働け」と追い込むあまりうつ病などの精神疾患を引き起こさせる⇒メンタルヘルス不全、パワハラ
  • 女性を特別視(蔑視)することで人権を侵す⇒セクハラ
  • 正社員から転落した人には低賃金の非正規雇用が待ち受け、結婚などできる状態ではない⇒少子化
  • 女性にも長時間労働を強要するあまり女性は仕事か家庭かの選択を迫られることになる⇒少子化
  • 男性が育児に非協力的であったり、女性が働くことに理解がないという状況は夫婦の愛情の低下を招く⇒少子化
  • 愛情の低下は離婚を招くことになるが、女性はパートだったり働いていなかったりで、経済的に安定した生活ができるだけの十分な収入が得られない⇒貧困

もちろん、これは画一的な筋書きに過ぎないが、的を射ているのではないだろうか。またこれ以外にも、ひきこもりや不登校、ニート、介護虐待なども長時間労働がもたらす副産物と言ってよい。父子のコミュニケーションやスキンシップの不足がこれらの誘因になり得る。

なかなか進まない働き方の改革

先週厚生労働省が発表した最新の年次有給休暇取得率は、47.3%。前年よりも1.5ポイント低下し、これで15年連続で50%を下回ることになった(平成27年就労条件総合調査結果)。

2007年に政労使の合意で制定し、2010年に改定した「ワーク・ライフ・バランス行動指針」では、2020年に70%にしようという目標を掲げているが、目標がクリアできそうな気配は一向に感じられない。

また男性の育児休業取得率も年休と同様、2020年13%という目標に対して、2.30%に過ぎない。これについては、筆者が書いた過去の記事を見てほしい。

「男性の育休はたったの2.30%!?スタートから刷り込まれる「子育ては母親」の価値観」

今後、労働基準法改正などが予定されているが働き方改革に抜本的なメスが入れられなければ、父親が子育てできない状態を引き続きもたらすことになるであろう。なかには、そこから自分の道を見出し、社内を改革したり、または転職したり、さらには地方に移住したり、という一歩が踏み出せる父親もいるであろうが、なかなかその一歩が踏み出せずに結局妻に任せて諦めてしまうというのが大部分の姿ではないだろうか。

一歩が踏み出せない要因として、「イクメンは目指すべきもの」という誤解が蔓延しているのも事実だ。どうしても日本人は1つの方を探そうとするが、「イクメン」という到達すべき山などない。できる人・できない人という二極化を招くことになる。多様な父親の姿を社会が受け入れることこそ重要なのだ。

しかし、子どもの成長は決して待ってはくれない。だからこそ、いま父親として自らが踏み出せる一歩が必要なのだ。自分なりの「父親」のカタチを求める結果、いまの自分に何が必要で、何ができるのか。

筆者も3児の子どもを持つひとり親として、「いま子どもたちにできること」は何かを常に考えてきた。いや考えてきたというよりも、考えながら常に行動してきたと言ってもいい。正直怒涛のような日々でひとり親になったときの記憶がおぼろげながらしか残っていないが、しかし、そうした日々の生活の中で子どもたちに向き合いながら育ててきたからこそ、いまの子どもたちの姿をみることで、自分のやり遂げてきたことの大切さに気づくことができる。それは、自分の人生にとっても大きな喜びとなっている。

「父さん育児」の日だからこそ、改めて「父親」について考えてもらいたい。

そう、帰りの電車の中で。

労働・子育てジャーナリスト/グリーンパパプロジェクト代表

1977年7月東京生まれ。2003年3月日本大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。労働専門誌の記者を経て、12年7月から2年間ファザーリング・ジャパン代表。これまで内閣府「子ども・子育て会議」委員、厚労省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員を歴任。現在、内閣官房「「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会」委員、厚生労働省「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」委員、東京都「子供・子育て会議」委員などを務める。3児のシングルファーザーで、小・中・高のPTA会長を経験し、現在は鴻巣市PTA連合会会長。著書「パパの働き方が社会を変える!」(労働調査会)。

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