「一番から九番までしっかり振れるのが持ち味。歴代でもなかなかないチームです」

 と青柳博文監督。昨秋関東王者の健大高崎が快勝した。2回に2点を先制すると、8回には敵失にも乗じて一挙4点。投げては高松将斗が下関国際打線を8回まで1安打に抑えて2失点完投だ。

 健大高崎といえば、「機動破壊」を思い浮かべる。たとえば2011年夏の群馬大会では、高崎商戦での9盗塁など、6試合で28盗塁と大会記録を塗り替え、春夏通じて初めての甲子園にコマを進めた。12年、やはり初出場のセンバツでベスト4と大躍進したのは、天理との初戦で7盗塁を記録するなど、その走力、というか走塁に対する考え方が抜きん出ていたからだ。

 02年に就任した青柳監督はそもそも当初、「打ち勝つ野球」を目ざしていた。10年には、かなりの手応え。夏の群馬大会は、準々決勝までの4試合で32得点と、自信が確信に変わりかけた。だが……前橋工との準決勝。延長11回、0対1で敗れてしまう。わずか4安打。一発勝負のトーナメントを勝ち抜くにはなにかを変えなければ、と取り組んだのが、足をからめてたとえノーヒットでも点を取れる野球だった。それが、「機動破壊」だ。

機動力だけでは限界がある

 盗塁するだけでは、単なる「機動」。それに加えて、相手をいやがらせる策があっての「破壊」だ。単純にいえば、何度もけん制を投げさせて投手のクセを盗む。あるいはたとえば……盗塁しようとする一塁走者は、二塁へ最短距離になるよう直線的にリードを取る。対して、走る気がないときのリードは、ふつう外野側にふくらむ。相手ディフェンスはその情報で、走ってこないと判断しがちだ。健大高崎は、そこにつけ込む。盗塁しようとするときでもあえて外野側にふくらんでリードし、「走る気はないな」と相手の油断を誘うのだ。

 だが、前回(中止になった昨年を除く)出場した17年のセンバツ。

「秀岳館さんに、2対9と大敗してしまって……打撃がまるで大人と子ども。あれだけ点差が開くと、機動力だけでは通用しません」

 と青柳監督、そもそも目ざしていた打ち勝つチームをふたたび、志向した。それが今チームには、高校通算35本塁打の四番・小澤周平、秋の公式戦の打率.639と32チーム中首位打者の櫻井歩夢らの人材がいる。チームの3年生33人で、入学以来の全員の本塁打数を通算すると230本以上。昨秋の公式戦10試合では、32チーム中5位の30盗塁と機動破壊も健在ながら、関東大会準決勝の5本塁打など、チーム15本塁打は断トツである。つまり今年の健大高崎は、機動破壊だけではなく長打破壊なのだ。

 そういうチームらしく、下関国際戦も6得点のうち4点が長打によるものだった。8安打中半分の4本が二塁打。しかも3本は伊藤翔哉、綱川真之佑、高松と七、八、九番の下位打線が放っているところが「一番から九番までしっかり振れる」チームのすごみか。長打破壊、おそるべし。そうそう、忘れていた。2回、伊藤の二塁打で先制したのは、2ボール1ストライクから一走・森川倫太郎とのヒットエンドランがまんまと的中してのもの。長打に加え、機動破壊も健在なのである。