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センバツ出場校決定。21世紀枠の過去最高は4強。16年以来の勝利へ頑張れ

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 第93回選抜高校野球大会の出場32校が29日、決まった。一般選考28校、21世紀枠は第85回記念大会(2013年)に並ぶ最多タイの4校。八戸西(青森)、三島南(静岡)、東播磨(兵庫)、具志川(沖縄)いずれも、春夏通じて初めての甲子園となった。おめでとうございます……と書いてきて気になるのが、センバツ前の出場予想サイトなどでの雑音だ。たとえば、「21世紀枠で県ベスト8クラスが出るより、力のあるチームの対戦が見たい」とか「21世紀枠より、真剣に野球に取り組むチームを出してほしい」とか。それ、勘違い、ですよ。

 そもそも「21世紀枠」とは、2001年の21世紀開始にちなんで新設された出場枠。大会を主催する毎日新聞によると、

「勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を以下の基準に沿って選ぶ。少数部員、施設面のハンディ、自然災害など困難な環境の克服・学業と部活動の両立・近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない・創意工夫した練習で成果を上げている・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている」

 と、選考基準が一般選考とは違うことを明確に示している。

センバツの独自性である

 そもそもセンバツの出場選考において、前年の秋季大会の結果はあくまで参考資料にすぎない。ただ、それはあくまでも建前。事実上、ほとんどセンバツの予選といえるほど、秋季大会の成績には重きが置かれる。ただし、あまりにも秋の結果ありきでは夏の選手権と変わらなくなるため、センバツの独自性を打ち出したい……というのが21世紀枠創設の意図なのだ。

 21世紀枠はまず、各都道府県の高野連が1校を推薦する。参加校数が128校を上回る都道府県では秋季大会ベスト32(12年まではベスト16)、それ以外の県ではベスト16(12年まではベスト8)以上の成績が推薦の条件だ。その推薦校からさらに全国9地区で代表を絞り、選抜選考委員会ではその9校から、東日本と西日本1校ずつ、さらに地域を問わずもう1校(今回は2校)を選出する(07年までは、トータルで2校)。

 近年の高校球界では、特定のチームが出場を独占する都道府県も多い。そこで、出場校の固定化を避ける意味もあり、「出場から、より遠ざかっている学校」が優先して選出されることもある。となると当然、公立高校が選出されることが目立ち、私立では、13年に選ばれた土佐(高知)が初めてだった。

 さて、どうですか? もっと強い学校を出せ、という気持ちもわかるが、それは21世紀枠の趣旨とは微妙に違うのです。そもそもセンバツは、厳密には招待試合。主催者が招待してくれなかったことに対して、当該チームならともかく、外部の者が茶々を入れる筋合いはないのですね。

 ちなみに19年のセンバツ終了時点で、21世紀枠の初戦の成績は13勝38敗(21世紀枠同士の対戦2試合を含む)で、通算では19勝51敗だ。この19勝というのは、センバツの通算勝利数ランキングにあてはめると、47都道府県中36位タイに相当する。それ以下にランクする県は、弱いからセンバツに出なくていい、とは誰もいわないはずだ。

 21世紀枠出場校の、過去の最高成績は01年宜野座(沖縄)、09年利府(宮城)のベスト4。組み合わせ抽選会は、例年より前倒しで2月23日に行われる。あとは3月19日、無事に大会が開幕することを願いましょう。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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